【自閉症児の感覚の問題と支援】特徴・原因・アセスメントから実践まで療育現場から解説

まとめ記事

自閉症児の「感覚の問題」は、日常生活の困り感として現れやすく、対応に悩む場面も少なくありません。

一方で、その背景には子どもなりの感じ方や情報処理の特性があり、単なる行動として捉えるだけでは適切な支援にはつながりません。

著者は療育現場などを通して多くの自閉症児・者と関わる機会がありますが、中でも、感覚の問題は非常に大きなテーマだと痛感しています。

本記事では、自閉症児の感覚の問題の特徴や原因を整理し、アセスメントの視点を踏まえながら、療育現場での具体的な支援の工夫を体系的に解説します。

 

※本記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有し、発達障害に関連する大量の書籍を読んできた筆者が執筆しています。

 

自閉症児の感覚の問題の理解と支援の全体マップ

本記事では、自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の感覚の問題の理解と支援に関して、以下の6つの章に分けて解説していきます。

1.感覚の問題の特徴

2.感覚の問題の原因

3.感覚の問題へのアセスメントのポイント

4.感覚の問題への支援のポイント

5.まとめ

6.参考書籍紹介

 

 

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感覚の問題の特徴

この章では、感覚の問題の特徴として、「診断の位置づけ」と「感覚の問題の4つのタイプ」について見ていきます。

 

診断の位置づけ

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の診断基準の一つとして、「限定された反復的な行動様式」があります。詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「【限定された反復的な行動様式とは何か?】自閉症の特徴について考える」。

限定された反復的な行動様式」とは、「常同反復性」「儀式的行動・思考」「興味の限定」「感覚の異常」の4つから構成されています。

つまり、「感覚の問題」は、自閉症の診断基準の「限定された反復的な行動様式」内の「感覚の異常」に位置付けられていると言えます。

今回はタイトルにある通り「感覚の異常(感覚の問題)」に焦点を当てて見ていきます。

なお、他の「常同反復性」「儀式的行動・思考」「興味の限定」といったいわゆる「こだわり」について詳しく知りたい人にはこちらの記事がお勧めです:関連記事:「」。

 

感覚の問題の4つのタイプ

感覚の問題(感覚調整障害)の種類には、「低登録」、「感覚探求」、「感覚過敏」、「感覚回避」の4つのがあります。

低登録(感覚鈍麻)」とは、刺激に対する反応の弱さのことを指し、例えば、名前を呼んでも振り向かない、痛みへの訴えがないなどが見られます。

感覚探求」とは、感覚刺激に対する反応が弱く感覚刺激を追い求める対処行動をとることを指し、例えば、コマのように体をクルクル回り続ける、泥遊びを止めないなどが見られます。

感覚過敏」とは、感覚刺激に対する反応の強さを指し、例えば、掃除機の音が苦手(聴覚過敏)、照明の明かりが苦手(視覚過敏)、服のタグが不快(触覚過敏)、特定の匂やか味が苦手(嗅覚過敏・味覚過敏)などが見られます。

感覚回避」とは、感覚刺激に対する反応が強く感覚刺激から遠ざかる対処行動をとることを指し、例えば、不快な音を避けるためにその音がする場所を避けるといった行動などが見られます。

以上の内容の参照記事はこちらで紹介しています:関連記事:「発達障害の感覚調整障害について【4つのタイプから考える】」。

 

自閉症児・者には、以上の4つのタイプが、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚など様々な感覚に見られます。また、1人の人に複数の感覚の問題が見られる場合もあります。

さらに、感覚の過敏さと鈍麻が同時に見られること(「同居現象」)もあります。詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「【感覚過敏と感覚鈍麻は併存することはあるのか?】療育経験を通して考える」。

また、感覚の問題は大人になるにつれて減少することが多い一方で、完全に消失するわけではなくその特徴は残ると考えられています。詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「自閉症の感覚調整障害について【年齢による変化はあるのか?】」。

 

 

感覚の問題の原因

ここでは、感覚の問題の中でも「感覚過敏」を例に取り、その問題の原因について見ていきます。

感覚過敏の問題の原因として、「感覚情報の過剰な入力」と「防衛反応の発動」の2つがあると考えられています。

 

感覚情報の過剰な入力」とは、文字通り、必要以上の感覚情報を取り込みすぎてしまう状態を指します。

一般的に、定型発達児・者は必要な感覚情報の取り組みを自然と行うことができます。一方で、自閉症児・者は、感覚情報の取り組みのリミッター(フィルター)がうまく機能せず、過剰な感覚情報を入力してしまうことがよく起こります。

著者が見ている療育現場でも、感覚情報を取り込み過ぎてしまうことで、パニック・癇癪に繋がることがあるため、どのような感覚刺激を苦手としているのかを理解し、事前の環境調整を取ることを心掛けています。

リミッターがうまく機能しないことは自閉症に見られる「こだわり行動」とも関連していると考えられています。詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「【自閉症の感覚の問題】なぜいつも通りにこだわるのか?」。

 

防衛反応の発動」とは、‟戦闘or逃走モード”といった‟戦うかor逃げるか”というモードが現れることを指します。つまり、感覚過敏があると防衛反応が生じやすいことが特徴としてあります。

防衛反応は人間が持つ本能的な部分であるため、苦手な刺激が入ることで、その刺激を打ち消そうと戦おうとしたり、あるいは、その刺激から遠ざかろうとする防衛反応が生じるということです。

著者の療育現場でも、防衛反応が発動することで、他害やパニック・癇癪などといった問題行動を見せる子どもたちがいます。そのため、防衛反応を未然に防ぐ対応が非常に重要だと感じています。

以上の内容の参照記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【感覚過敏の原因とは?】2つの要因(過剰な感覚入力と防衛反応)から解説」。

 

 

感覚の問題へのアセスメントのポイント

感覚のアセスメントのポイントとして以下の5つがあります。参照記事はこちらになります:関連記事:「【発達障害児の感覚の問題のアセスメント】5つの視点で理解する評価のポイント」。

それでは、5つについて簡単に見ていきます。

 

支援者自身の感覚特性を知る

自閉症児・者は定型発達児・者と比べて、感覚に特有さが見られます。

一方で、全ての人の感覚には違いがあります。例えば、好きな音、好きな味、好きな臭いなど、人によって好みがあります。逆に、苦手とする感覚も人によって違いがあります。

感覚の特性(好き嫌い・安心・不安など)は、自閉症児・者に限らず、全ての人が持っている「違い」だという点を抑えることが必要です。

そのためにも、支援者自身の感覚特性への自己理解を深めていくことが、より良い支援に繋がるきっかけになると言えます。

 

問題がある感覚は

問題となる感覚(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、前庭感覚、固有覚、内臓感覚など)を知ること(評価すること)が支援において大切になります。

問題となる感覚にも個人差が多くあるため、複数の感覚への評価が必要になります。

様々な感覚がありますが、原始感覚に該当する、触覚、前庭感覚、固有覚と、識別感覚に該当する、視覚、聴覚、嗅覚、味覚といった感覚への理解を深めることが必要です。

中でも、著者は原始感覚(原始系)に相当する感覚は、「感覚統合」から多くのヒントを得てきました。詳しくは、こちらで紹介しています:関連記事:「」。

 

過剰反応か過小反応か感覚探求か

問題となる感覚が過剰反応(感覚過敏)なのか過小反応(感覚鈍麻)なのか、あるいは、過剰反応と過少反応の感覚が混在している感覚はあるのかといった評価が必要です。

さらに、必要以上に感覚情報を取り込もうとする感覚探求への評価も必要です。

著者が見てきた子どもの特徴で多かったものとして、「聴覚過敏」を筆頭に、「触覚過敏」、「味覚過敏」→偏食とも関連する、痛みに鈍感な「感覚鈍麻」、時々見られる「視覚過敏」、自分が好む感覚刺激に没頭する「感覚探求」→自己刺激行動に繋がる、などはよく見られるものでした。

 

感覚の問題と関連する「4A」

感覚の問題と関連する4Aとは、覚醒(Arousal)、注意(Attention)、情動(Affect)、行動(Action)のことを指します。

感覚の問題があると、他の4Aと関連づくことがあり、例えば、聴覚過敏を持っている子どもが苦手な音を聞くことで、「情動(Affect)」が不安定になり、その結果、逃避する「行動(Action)」に繋がる場合があります。

このように、感覚の問題は、他の要因(4A)とも関連する視点を抑えることも重要です。

 

環境を評価する

感覚の問題は、環境の違いによっても現れ方に違いあるため、環境を評価するといった視点も必要です。

例えば、特定の人の声、集団の賑やかな音、工事音などの騒音、部屋の明かりなどの照明、苦手な臭い、苦手な食材などがある環境では、感覚の問題が顕在化する可能性があります。

そのため、環境へのアセスメントもまた重要な評価の視点だと言えます。

 

 

感覚の問題への支援のポイント

ここでは大きく「感覚過敏への支援のポイント」「感覚鈍麻への支援のポイント」「感覚探求への支援のポイント」に分けて見ていきます。

 

感覚過敏への支援のポイント

感覚過敏への支援のポイント」で重要な視点は、「環境へのアプローチ」と「個人へのアプローチ」があります。

 

環境へのアプローチ

環境へのアプローチ」としては、〝感覚過敏″に対して、周囲の環境を変えることで困り事を改善していく方法です。

例えば、苦手な音刺激への負荷を軽減する環境調整として、苦手な音と距離が取れるようにする(距離を離す、部屋を分けるなど)、イヤーマフの使用などがあります。

苦手な感覚刺激を減らすという意味で「引き算の支援」とも言われています。

著者は、次に見る「個人へのアプローチ」を取る前に、まずは「環境へのアプローチ」を優先していくことを大切にしています。

その理由として、個人へのアプローチにはある程度の時間がかかること、感覚過敏の問題はアレルギー症状と同様に自力で直ぐに改善・克服が難しいからです。

 

個人へのアプローチ

個人へのアプローチ」としては、〝感覚過敏″に対して、スモールステップで徐々に改善を目指すという方法です。

例えば、苦手な感覚刺激への対処法を一緒に考えていくことで、自身の感覚刺激をコントロールする方法を学習するといったことが重要です。大切な支援の視点として、子どもが許容できる感覚刺激の量・質を調整することにあります。

その上でのポイントは、原始感覚よりも識別感覚が優位な状態を作っていくことだと言えます。

原始系(原始感覚)と識別系(識別感覚)についてはこちらで紹介しています:関連記事:「感覚統合で大切な原始系と識別系について【触覚の発達について考える】」。

識別系(識別感覚)を優位にしていく上で、例えば、好きな映像を見る、好きな音楽を聞くなど視覚・聴覚といった識別系に働きかけることで、原始系(感覚過敏の発動のもととなる感覚)の働きを抑えることが有効です。

好きな感覚刺激を増やすという意味で「足し算の支援」とも言われています。

また、自己選択も識別系を優位にする上で大切なポイントです。

例えば、苦手な感触も直接手に触れないように道具を活用すればできるという自己選択、苦手な音を聞いて不快になってもクールダウンエリアで休憩するという自己選択など、自ら苦手な感覚に対してどのような対処法があるかを自己選択していく経験は識別系を優位にしていくことに繋がってきます。

その他、事前に苦手な感覚に関する情報を伝えていく方法としての「認知的支援」もまた、自己選択に大きく繋がっていくと考えます。

識別系が優位になっていくことで、これまで苦手としていた感覚刺激に対して少しずつ慣れていく側面もあるように感じます。例として次の記事で紹介しています:関連記事:「【感覚過敏は治るのか?】感覚を“育てる”支援―段階的に広げていくプロセスを解説―」。

以上の「感覚過敏への支援のポイント」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【感覚過敏への支援】個人アプローチと環境調整の2つの視点から解説

関連記事:「【感覚の低反応と感覚過敏への基本的な支援の視点】療育経験を通して考える

関連記事:「【発達障害児の感覚過敏への支援】引き算・足し算・認知の3つのアプローチで考える

 

感覚鈍麻への支援のポイント

感覚鈍麻への支援のポイント」で重要な視点は、「覚醒を整える」「持続性注意に配慮」「トップダウンの支援」があります。

 

覚醒を整える」とは、感覚鈍麻といった過小反応のある子どもに対して、ある程度、覚醒を高めていくことを指します。

覚醒を高めるためには、子どもが好む感覚(好きな感覚:前庭感覚や固有感覚、触覚など)を取り入れることが有効です。例えば、トランポリンやブランコ、マッサージなどがあります。

ここで注意したい点として、感覚刺激を取り込みすぎて覚醒度を高めてしまいすぎないように気をつける必要があります。

このように、過小反応のある子どもにおいて、まずは好む感覚を通して覚醒度を上げることが大切です。

 

持続性注意に配慮」とは、覚醒度が高まった次に必要となる注意の維持への配慮を指します。

そのためのポイントとして、与える情報量をその子に応じて少なくしたり、個別に注意を維持するための働きかけが大切になります。

必要以上の情報を与えずに、その子どもにとって分かりやすい情報を提示することが有効だと言えます。

 

トップダウンの支援」としては、子どもたちの興味・関心から覚醒度を高める支援方法を指します。

これは、子どもが好む感覚だけでなく、子どもが何に興味関心があるのかを把握していき、その対象を通して活動を組み立てていくこともまた覚醒度を高め維持する上で有効だと言えます。

以上の「感覚鈍麻への支援のポイント」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【発達障害児の感覚鈍麻(過小反応)への支援】覚醒・注意・トップダウンの3つのアプローチで解説

 

感覚探求への支援のポイント

ここでは、「感覚探求の支援のポイント」として、「感覚探求」、「感覚渇望」の2つに分けて見ていきます。

 

感覚探求」とは、例えば、手をひらひらさせる、自分の体をコマのようにクルクル回すなど、自らの身体を通じて、不足した感覚を取り込む行為です。

「感覚探求」への支援のポイントとしては、目的的な活動(習い事、趣味活動、お手伝い等)を取り入れることや、不安などの情動反応を引き起こしている要因への対処が重要になります。

不安な情動への対処法としては、著者は子どもが好む触覚・固有覚・前庭感覚を中心に遊びを広げる工夫をとってきています。例えば、感触遊び、アスレティック系の遊びなどの展開が有効だと感じます。

 

感覚渇望」とは、感覚探求の行動そのものが報酬となることで、感覚探求の行動を繰り返すことを言います。

「感覚渇望」への支援のポイントとしては、自分の体に注意を向けている状態から、外界の対象物などを通じて世界を広げていけるような働きかけをしていくことです。

著者はかつて重度の障害児保育をしていた経験がありますが、この時に関わった子どもの中には「感覚渇望」の様子が少なからず見られていました。

支援では、子どもの興味関心のある活動を通して、少しずつ他の対象に注意を促していく方法、教材教具等の工夫などが大切だと感じます。

以上の「感覚探求への支援のポイント」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【発達障害児の感覚探求への支援】感覚探求と感覚渇望の2つの視点から解説

 

 

まとめ

発達障害児・者の中でも、特に自閉症児・者は様々な感覚の問題を抱えることが多いです。

感覚の問題には、低登録(感覚鈍麻)、感覚過敏、感覚探求、感覚回避といった4つのタイプがあり、1人の人に複数の感覚の問題が見られたり、感覚過敏と感覚鈍麻が同時に見られることもあります。

感覚過敏の問題の原因として、「感覚情報の過剰な入力」と「防衛反応の発動」の2つがあると考えられています。

感覚の問題への支援を進めていく上で、まずは様々な視点からアセスメントをしていく必要があります。

その上で、感覚過敏への支援のポイントとして、環境へのアプローチや識別系を優位にしていく個別のアプローチなどがあります。また、感覚鈍麻や感覚探求への支援のポイントについても、併せておさえていく必要があります。

 

 

参考書籍紹介

今回の記事内容をさらに深める上でお勧めする書籍紹介記事を以下に載せます。

感覚の問題を含め発達障害領域を網羅的に学びたいと考えている人には次の書籍紹介記事がお勧めです:関連記事:「臨床発達心理士が厳選:発達障害を理解するための体系的読書ガイド【完全版】」。

感覚の問題・異常に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】感覚統合に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

自閉症の理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:「【臨床発達心理士が厳選】自閉症に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

自閉症を含め発達障害への支援に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】発達障害の支援に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

 


今回取り上げた「自閉症児の感覚の問題の理解と支援」を含めた自閉症に関するまとめ記事を以下で紹介しています。

関連記事:「自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の理解と支援:療育実践を踏まえて解説【完全版】

 

 

 

 

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