「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。
心の理論は一般的には、4~5歳頃に獲得すると言われています。
それでは、「心の理論」は、単に“相手の気持ちを理解する力”として説明されることが多いですが、子どもはなぜその力を発達させていくのでしょうか?
本記事では、幼児が「大好きな人と心を通わせたい」という思い、そして「誰かの役に立ちたい」という動機に注目し、心の理論を獲得する意味を発達的な視点から整理していきます。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.」です。
【心の理論はなぜ必要?】“心を通わせたい・役に立ちたい”から考える発達の意味
著書の中では、心の理論の必要性について、1.心を通わせたい、2.役に立ちたい、といった2つの視点から説明しています。
心を通わせたい
以下、著書を引用しながら見ていきます。
1つは、幼児は大好きな大人や仲間と心を通い合わせるために、相手の心を理解しようとしていることである。
心の理解が、子どもにとって〝ホットな“テーマとなる。だからこそ社会性に課題をかかえる子どもの支援において、人とかかわるためのスキルを教える以前に、まずは安心してつながりをもてる仲間づくりに配慮する必要があるのではないだろうか。
著書の中では、好きな相手と心を通い合わせるために、相手のことを理解したいといった思いから、心の理解が必要であると考えられています。
人は好きな相手と心を通い合わせたい、その人の心の内をもっと知りたいという思いがあります。
著者の療育現場では、発達に躓きのある子どもたちが通所してきています。子どもたちとの長年の関わりから言えることは、楽しい集団・コミュニティができてくることで、子ども同士が様々な喜びを分かち合いたい、そして、そのためにもっと相手のことを知りたいといった姿が増えていくように感じます。
また、人との関わりにあまり喜びを感じていなかった子どもが人と関わることが楽しいといったことを実感できるようになった子もいます。
そのため、著書にあるように、安心できる仲間づくりを形成することはとても大切なことであり、安心と楽しさを共有できる繋がりを作ることが社会的スキルを獲得すること以上に(以前に)大切であると著者も実感しています。
役に立ちたい
著書を引用しながら見ていきます。
2つ目に、他者の役にたちたいということも、心の理解能力を発揮する目標となりえる。
著書の内容から、人は誰かの役にたちたいという思いがあり、こうした思いもまた心の理解において必要だと考えられています。
人は誰かの役にたちたいときにも、相手のことを考えます。
相手がどのようなことで困っているのかは、相手の気持ちや相手が持っている知識を理解していく力が必要になります。
著者の療育現場では、年上の子どもが年下の子どもに自分が知っていること、そして相手が知らないことを教える様子が頻繁に見られます。
こうした関わりを通して、少しずつ相手のことを理解していきながら、自分が役に立っている、必要とされているといった利他性が育まれていくのだと感じます。
人は利己的でありながらも同時に利他的でもあります。
そして、人は社会的能力が発達していく中で、人の役に立ちたいといった向社会的行動が徐々に発達していきます。
昔は周囲から世話をされ、年上に憧れていた子どもがいつの間にか年下を世話し、年下から憧れの的になっていることがあります。
そして、人の役に立とうとする思いと行動が高まると、相手の様々な心の状態への理解が深まっていくのだと感じます。
以上、【心の理論はなぜ必要?】“心を通わせたい・役に立ちたい”から考える発達の意味について見てきました。
相手の心を理解するための意味は、人との繋がりの中で生じる分かち合いたいという気持ち、そして、他者の役に立とうするときに生じる他者への想像性です。
こうした点を踏まえながら、私自身、まだまだ未熟ではありますが、少しずつ子どもたちのことを理解していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
心の理論の育て方に関してはこちらで紹介しています:関連記事:「【心の理論の育て方】療育現場で実感する「物語」の力」
心の理論に関するお勧め書籍は以下で紹介しています。
関連記事:「心の理論に関するおすすめ本【初級~中級編】」
子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.


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