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【何かに没頭する行動とは?】ADHDの過集中についてASDとの違いも交えて考える

投稿日:2020年5月2日 更新日:

療育現場で関わる子どもたちの中には、何かに没頭しているため声をかけても反応しない、あるいは反応が薄い、そのため、切り替えが難しいといった状況をよく目にすることがあります。

何かに没頭する行動とは、言い換えると〝過集中”とも言えます。

‟過集中”は、ADHD(注意欠如多動性障害)によく見られると考えられています。

 

それでは、ADHDとはそもそもどのような特徴があるのでしょうか?

そして、ADHDの過集中にはどのような特徴があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、何かに没頭する行動とは何かについて、臨床発達心理士である著者の経験談も取り入れながら、ADHDの特徴及び過集中について、ASDとの違いも交えて理解を深めていきたいと思います。

 

 

ADHDについては中島美鈴著「中島美鈴(2018)もしかして、私、大人のADHD?:認知行動療法で「生きづらさ」を解決する.光文社新書.」を参照していこうと思います。

 

 

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ADHD(注意欠如多動性障害)について

ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)には、不注意、多動性、衝動性といった3つの特性があります。

こられの3つの特性は、人のよって目立ち方が異なります。

 

不注意:集中力の持続の困難さや、同時に複数のことを処理するのが難しいことを特徴としています。不注意は、片付けができない、忘れ物が多い、約束を忘れるといった生活への影響が見られます。

 

多動性:多動性は、授業中にじっと座っていることができないなど行動として顕著にみられるものから、人の話を集中して聞くことが難しく、頭の中で様々な思いや考えを巡らせることも特徴とされています。他にも、貧乏ゆすりや予定を詰め込みすぎるなどの行動特徴もあると言われています。

 

衝動性:衝動性は何かをやりたい!といった欲求が沸き起こると、その気持ちをコントロールできずに直ぐに行動に移してしまいます。中には、アルコール依存などとも関連があると言われています。後先を考えないことで、大きな決断も衝動的に行う、衝動買いや借金を抱えてしまうこともあります。一方、過集中といって興味のあることに没頭して周囲が見えなくなるといった行動も衝動性の特徴です。

 

 

ADHDの過集中について:著者の経験談

著者の療育現場や身近なADHD傾向のある人たちにも、過集中といった行動特徴のある人が多くいるといった印象があります。

例えば、療育現場において、遊び始めるとなかなか遊びを切り上げたり、終わりにすることができない子どもの中には、過集中が背景要因になっているケースが多いと感じています。

一方で、高い集中力を発揮し物事に取り組むといったポジティブな側面もあるため、見方次第では強みと言えるのかもしれません。

著者は、できるだけ子どもたちに注意しない状態を作るために、事前に時間の確認やスケジュールの確認、そして時々「あと○○分で終わりだよ」などと、時間への意識や終わりを明確にするように早めの対応を心掛けています。

また、子どもたち自身で今日はどこまでやって終わりにするのかなど時間を見ながら自分で決められるようにも意識して声掛けしています。

このような小さな取り組みを継続していく中で、子どもたちが時間や活動の終わりを意識することが少しずつできるようになっていったという印象があります。

そして、取り組みの効果がでるにもまた個人差があるかと思いますが、長期的な対応の継続が必要だと思います。

 

 

ADHDの過集中について:ASDとの違いを通して考える

‟過集中”は自閉症スペクトラム障害(ASD)の人たちにもよく見られます。

 

それでは、次に、「本田秀夫(2018)発達障害:生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.」を引用しながら、ASDの過集中について、そして、ADHDの過集中と何が違うのかを簡単に見ていきます。

 

ASDの特性がある人の中には、興味・関心への集中度合いが高く、それに執着することがあります。ASDとADHDの同じ行動特徴として、興味・関心に関しては過集中が見られます。ですが、ADHDの人たちの場合には、先ほど紹介した注意の持続が難しいため、好きなことをしていても気が散り注意がそれることがあります。ASDの人たちは一度好きなことに没頭するとなかなか注意がそれることがありません。しかし、ASDの人たちは、自分が嫌いなことや知らないことを要求されると集中力が続かず(もちろんADHDも同じです)、落ち着きがなくなり、一見ADHDの多動性や衝動性と似たような行動に見えるかもしれませんが、ASDの場合は特定の環境下だけで起こります。

 

著書の内容から、ADHDとASDには、どちらも興味関心に対する‟過集中”が見られますが、ADHDの場合の方が気が散りやすく注意の持続が難しいと考えられています。

一方、ASDは、自分の興味関心の世界に没頭すると抜け出すことが難しいといった特徴がある半面、嫌いなこと・知らないことに対しては注意の持続が難しいなど、没頭する範囲がADHDと比べてより限定的であると言えます。

 

 

ADHDとASDの過集中について:著者の経験談

著者の療育現場にも、自閉症(ASD)の特性のある子どもは、一度好きなことにハマりだすと大人が声をかけてもなかなか反応しない一方で、ADHDの特性のある子どもは、注意にムラが見られるといった違いがあると感じています。

ASDの子どもたちへの対応として、スケジュールの確認や刺激をできるだけ減らして声をかける、また、視覚的な材料を用いて声をかけるなどの対応を心掛けています。

人は自分が好きなこと、興味のあることには時間を忘れて没頭するといった特徴があると思います。そのため、ADHDやASDの人たちだけが過集中があるわけではないと思います。

しかし、ADHDやASDなどの発達障害のある人は、その発達特性ゆえに、なかなか周囲の声や状況理解よりも、自分のやりたいことや気になったことに注意が向く傾向があると思います。

発達特性を知ることは、個々の違いを認識することに繋がります。

そして、違いを認識することは、子ども一人ひとりに応じた理解と支援に繋がっていくのだと思います。

 

 


以上、【何かに没頭する行動とは?】ADHDの過集中についてASDとの違いも交えて考えるについて見てきました。

特定の行動には、その行動に至る背景があります。

行動の背景を理解していくことで、より良い発達理解・発達支援に繋げていくことができます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちの行動を理解する目を養っていきながら、より良い療育を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

本田秀夫(2018)発達障害:生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.
中島美鈴(2018)もしかして、私、大人のADHD?:認知行動療法で「生きづらさ」を解決する.光文社新書.

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