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【心の理論と感情理解の関係について】療育経験を通して考える

投稿日:2023年4月26日 更新日:

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。

著者は療育現場で発達に躓きのある子どもたちに長年関わってきています。

長い時間をかけて子どもたちは少しずつ心の理論を獲得していきます。

心の理論が発達していく中で、他者の感情への理解も深まっていくと実感させられることがあります。

 

それでは、心の理論と感情理解にはどのような関係があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、心の理論と感情理解の関係について、臨床発達心理士である著者の療育経験も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.」です。

 

 

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心の理論と感情理解の関係について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

子どもが自分の心とは違う他者の心に気づきはじめると、なぐさめ行動の質も大きく変化する。他者を気づかう行動は2歳前後から見られるが、幼児期後期になると、より他者の気持ちに沿ったなぐさめ行動が見られるようになる。

 

著書の内容では、心の理論が発達していく中で、感情的な対人行動にも影響が出てくるとの記載があり、例えば、〝なぐさめ行動″の質も他者の内面により沿った形の行動が見られるようになるなど質の変化が生じると考えられています。

他者の内面に寄り添った行動とは、その状況から考えられる相手の内面を言語化することであり、言語化することで感情の調整方法などもわかるようになっていきます。

 


このように、心の理論が発達していく中で見られる感情理解はポジティブな面がありながらも、マイナスな面もあると言われています。(以下、著書引用)。

しかし、他者の感情を理解する能力は、社会的関係において、必ずしもポジティブに働くとは限らない。他者の感情を気づかいすぎて自分を出せない、他者の評価を気にしすぎて自信が持てないといった対人的な問題や不安につながることもある。

 

著書の内容から、感情理解の発達は、相手の内面に目が向き過ぎ気遣いすぎて自分の思いをうまく出せないなどのマイナス面もあると考えられています。

このように感情の発達には、プラスの面とマイナスの面の双方があり、一人ひとりの感情の状態も非常に異なるため、感情理解に即した保育や教育には様々なバリエーションが必要となります。

例えば、自他の感情への理解が少し疎い子どもの場合には、自他の感情に気づけるような感情語を伝えていくこと、また、自分の気持ちの表出がうまくできない子どもの場合には、気持ちの伝え方などを一緒に考えていくことが大切になります。

 

 

著者の経験談

著者の療育現場には、心の理論を獲得するに伴い感情理解も進んできたと感じるケースがあります。

例えば、これまで、他児が泣いている様子をじっと見ていた、あるいは、大人に〝どうして○○君は泣いているの?″と問う行動が見られていた子どもが、自分から〝大丈夫?″〝○○したからだよね″〝ゆっくり休めば大丈夫だよ″など、相手の内面を推測し声掛けする様子、そして、その不安定な感情をコントロールする方法を伝える様子も見られるようになったケースもあります。

この子どもの場合には、少し前から、心の理論の発達が急に進んできたという印象がありました。

例えば、大人や他児の内面に目を向ける様子、相手の意図や心情を読み取ろうとすることが増えていると感じていました。

そのため、心の理論の発達は、感情理解にも非常にポジティブな変化を見せるものだと考えさせられました。

 

一方で、心の理論の発達による感情理解の育ちがマイナスな影響を与えるケースもあります。

例えば、相手の気持ちに目が向きすぎることで(目が向くようになると)、相手からの返答や評価が気になってしまい、逆に自分のことをうまく出せないケースもあります。

こうした子どもの場合は、もともと控え目である場合もありますが、それ以外にも、他者の意図や心情といった心の理論の発達が進んだことで控え目になったと感じる場合もあります。

そのため、心の理論の発達による感情理解は、状況に応じてはマイナスになることも把握しておくこと、そして、マイナス面への理解と支援方法について考えていくことも大切だと考えさせられました。

 

 


以上、【心の理論と感情理解の関係について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

心の理論の発達により、様々な相手の感情を推測した行動がより複雑化していくようになります。

その中で、感情理解の育ちはネガティブとなる行動にも繋がっていくことも心にとめておく必要があります。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も心の理論の発達について学びを深めていきながら、その中での学びとこれまで経験とを紐づけていきながら、さらに質の高い支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【心の理論の発達について】3つの発達段階から考える

 

子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.

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