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【心の理論の研究について】定型発達を例に考える

投稿日:2023年4月11日 更新日:

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。

心の理論の獲得は、定型発達児と比べて、自閉症などの発達障害のある子どもたちは獲得が遅れると言われています。

 

それでは、定型発達から見た心の理論の研究ではどのようなことが明らかになっているのでしょうか?

 

そこで、今回は、心の理論の研究について、定型発達を例に考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.」です。

 

 

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心の理論の研究について:定型発達を例に考える

著書の中では、以下、3つのことがメタ分析からわかったとしています(以下、著書引用)。

 


第一に、年齢の要因に関しては、さまざまな工夫をして課題の難易度を下げても、その効果は相対的に小さく、「心の理論」の獲得についてのデータは、(中略)幼児期に一貫して見られる「真性の概念変化」であることが示された。

一つ目は、年齢の要因に関する研究です。

心の理論を調べる課題では、〝誤信念課題″というものが使用されています。

誤信念課題とは、サリーとアンの課題、スマーティ課題などが有名であり、〝他者の心を理解する能力を調べる課題″になっています。

誤信念課題(一次の)をクリアできる年齢が、一般的には4歳頃だと言われています。

つまり、この頃から、子どもは、他者の行動の背景には、目に見えない心という存在をはっきりと認識でき、その行動意図などを推論することが可能ということになります。

そして、メタ分析の研究知見から分かったことは、課題の難易度を下げても、課題をクリアする効果は相対的に低いことから、心の理論の獲得は幼児期に見られる発達であることが分かっています。

 


第2に、誤った信念の理解は、欧米の価値観に基づく特定の文化に固有の発達ではないことが示された。

二つ目は、文化差に関する研究です。

誤信念課題を使った心の理論の獲得は、欧米など特定の文化に見られるものではなく、若干の早い遅いに違いはあれ、多くの文化圏に共通して見られる発達であることがわかっています。

そのため、現在は、文化圏の違いで見られる、心の理論の獲得過程の少しの差の要因を調べる研究なども行われています。

 


第3の結果は、誤った信念課題の実施手続きがもたらす差は、予想よりもずっと小さいということである。

三つ目は、誤信念課題といった実施手続きによる影響に関する研究です。

繰り返しになりますが、〝誤信念課題″とは、〝他者の心を理解する能力を調べる課題″のことを言います。

誤信念課題にも、様々なものがあり、課題の違いが(実施手続きの違いが)結果に影響するのかどうかを調べた研究では、実施手続きの差は結果に大きくは影響していないということが分かっています。

 


以上、定型発達を対象とした三つのメタ分析からわかったことは、年齢要因、文化の違い、実施手続きの違いの影響は少ないということです。

つまり、定型発達では、4歳を過ぎた頃から心の理論を獲得し、それは多くの文化圏で多少の獲得時期の違いはあれ同様の発達が見られ、また、様々な実施手続きの違い(誤信念課題の違い)による影響の差は少ないということです。

 

 


以上、【心の理論の研究について】定型発達を例に考えるについて見てきました。

定型発達児の心の理論の獲得過程を理解していくことは、自閉症児などが心の理論にどのような躓きを見せるのかを理解すること、そして、どのような配慮が必要となるのかの手助けに繋がると感じます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も〝心の理論″への理解を深めていきながら、療育現場で関わる子どもたちへの理解に繋げていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「自閉症の心の理論について考える

 

子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.

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-定型発達, 心の理論

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