心の理論に関する研究はこれまで数多く行われてきましたが、それらを統合的に整理したものがメタ分析です。
メタ分析を通して見ることで、個別の研究だけでは見えにくい全体的な傾向や重要なポイントが浮かび上がってきます。
本記事では、心の理論の研究に関するメタ分析をもとに、特に重要と考えられる3つのポイントをわかりやすく解説します。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.」です。
【心の理論の研究】メタ分析から分かった3つの重要なポイントを解説
著書の中では、以下、3つのことがメタ分析からわかったとしています。著書を引用しながら見ていきます。
年齢の要因に関する研究
第1に、年齢の要因に関しては、さまざまな工夫をして課題の難易度を下げても、その効果は相対的に小さく、「心の理論」の獲得についてのデータは、(中略)幼児期に一貫して見られる「真性の概念変化」であることが示された。
1つ目は、年齢の要因に関する研究です。
心の理論を調べる課題では、〝誤信念課題″というものが使用されています。
誤信念課題とは、サリーとアンの課題、スマーティ課題などが有名であり、〝他者の心を理解する能力を調べる課題″になっています。
誤信念課題(一次の)をクリアできる年齢が、一般的には4歳頃だと言われています。
つまり、この頃から、子どもは、他者の行動の背景には、目に見えない心という存在をはっきりと認識でき、その行動意図などを推論することが可能ということになります。
そして、メタ分析の研究知見から分かったことは、課題の難易度を下げても、課題をクリアする効果は相対的に低いことから、心の理論の獲得は幼児期に見られる発達であることが分かっています。
文化差に関する研究
第2に、誤った信念の理解は、欧米の価値観に基づく特定の文化に固有の発達ではないことが示された。
2つ目は、文化差に関する研究です。
誤信念課題を使った心の理論の獲得は、欧米など特定の文化に見られるものではなく、若干の早い遅いに違いはあれ、多くの文化圏に共通して見られる発達であることがわかっています。
そのため、現在は、文化圏の違いで見られる、心の理論の獲得過程の少しの差の要因を調べる研究なども行われています。
誤信念課題といった実施手続きによる影響に関する研究
第3の結果は、誤った信念課題の実施手続きがもたらす差は、予想よりもずっと小さいということである。
3つ目は、誤信念課題といった実施手続きによる影響に関する研究です。
繰り返しになりますが、〝誤信念課題″とは、〝他者の心を理解する能力を調べる課題″のことを言います。
誤信念課題にも、様々なものがあり、課題の違いが(実施手続きの違いが)結果に影響するのかどうかを調べた研究では、実施手続きの差は結果に大きくは影響していないということが分かっています。
まとめ
定型発達を対象として3つのメタ分析からわかったことは、年齢要因、文化の違い、実施手続きの違いの影響は少ないということです。
つまり、定型発達では、4歳を過ぎた頃から心の理論を獲得し、それは多くの文化圏で多少の獲得時期の違いはあれ同様の発達が見られ、また、様々な実施手続きの違い(誤信念課題の違い)による影響の差は少ないということです。
以上、【心の理論の研究】メタ分析から分かった3つの重要なポイントを解説について見てきました。
定型発達児の心の理論の獲得過程を理解していくことは、自閉症児などが心の理論にどのような躓きを見せるのかを理解すること、そして、どのような配慮が必要となるのかの手助けに繋がると感じます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も〝心の理論″への理解を深めていきながら、療育現場で関わる子どもたちへの理解に繋げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
自閉症児の他者の心の読み取りはどこまで可能なのでしょうか?この点に関して詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「【自閉症児の心の読み取り】どこまで可能か?5つの限界と可能性」。
心の理論に関するお勧め書籍は以下の記事で紹介しています。
関連記事:「心の理論に関するおすすめ本【初級~中級編】」
子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.


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