発達障害領域に携わる支援者は、子どもから大人に対して、様々な「支援」をしています。
一方で、発達障害における「支援」とは、一体どのような意味があるのでしょうか?
本記事では、発達障害の支援について理解を深めるために、支援と治療の違い、そして、支援の基本原則と支援の多層性を中心に解説していきます。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は、「藤本昌樹(2026)ウェルビーイングをめざす 新しい発達障害学入門‐理解から支援へ.北樹出版.」です。
【発達障害の支援とは?】基本原則と多層的な支援の考え方をわかりやすく解説
ここから先は、「1.支援と治療の違い」、「2.支援の基本原則」、「3.支援の多層性」について解説していきます。
支援と治療の違い
以下、著書を引用しながら見ていきます。
治療(treatment, cure)とは、病気や障害そのものを除去したり、「正常な」状態に戻したりすることをめざすものである。
支援(support, intervention)とは、本人の特性を前提に、自分らしい生活と社会参加を可能にするよう環境やかかわり方を工夫することである。
発達障害における「障害」とは、本人の特性(AS特性、ADH特性など)といった「個人因子」と、周囲の関わり方や過ごしの場所(人的・物的環境)といった「環境因子」の相互作用に「ミスマッチ」が生じた結果、本人の「困り感が持続」した状態を指します。
つまり、発達障害における「支援」とは、個人因子と環境因子の双方から、本人がより生きやすくする方法を検討することを目指すものです。
発達障害は「治療」して治るというものではなく、仮に、薬物療法などによって症状が和らぐことがあっても、最終的には、本人が生きやすくなるような「支援」の要素が必要になってきます。
支援の基本原則
以下、「支援の4つの基本原則」について、著書を参考に解説していきます。
1.「個別性の原則」→同じ障害や特性などを有していても、一人ひとりは異なるといった視点にもとづき、個別のアセスメントと支援を考えること。
2.「生活全体を見る視点」→困り感や問題行動に焦点化するだけではなく、生活の質の向上を目指すこと。
3.「本人の主体性の尊重」→支援は、支援者側の思いや方針で行うものではなく、あくまでも、支援を受ける当事者の思いや主体性を尊重していく姿勢が必要となる。
4.「強みに基づく支援」→本人の弱みへの支援にフォーカスするだけではなく、本人の好きや得意といった強みを活かす視点が大切となる。
以上の1~4はまさに、支援の根幹を担う部分だと言えます。
実際に、著者が見ている子どもたちは、同じ障害を有していても、障害の程度や重複・併存、年齢などによって状態像は非常に異なると感じています。
また、実際に支援に携わっていると、問題行動に目がいくことが多くあります。一方で、当事者が何を望んでいるのかといった、家庭や学校、そして余暇での過ごし方など、社会参加の在り方も検討していくことが生活の質を高めていくものだと考えます。
最近は、意思決定支援の必要性がより高まっています。つまり、自分の人生は自分で選択して決めていくということを応援することが、本人がより良く生きるために大切だということになります。
本人の強みを見出すことは、他者との比較ではなく、その人なりの、興味関心を掘り下げていくことで見えてくることがあります。そして、強みは、後の進路や仕事、あるいは趣味に繋がっていくことがあります。
支援の多層性
以下、「支援の多層性」について、著書を参考に解説していきます。
支援の多層性とは、「多層支援システム(MTSS:Multi-Tiered System of Support)」といった教育や福祉の分野で活用されている枠組み(支援を三つの層に分けて考える)があります(以下、著書を引用)。
第1層(ユニバーサル支援)は、すべての人に対する基盤的支援であり、教室環境の整備や指示の出し方の工夫などが含まれる。
第2層(ターゲット支援)は、第1層だけでは十分でない一部の人への焦点化された支援(例:小集団でのソーシャルスキルトレーニング:SST)である。
第3層(インテンシブ支援)は、さらに困難が大きい個人への個別専門的支援である。
著書には、支援内容として、「環境調整」「合理的配慮」「構造化(TEACCH)」「応用行動分析(ABA)」「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」「ペアレントトレーニング」「認知行動療法」「関係性を基盤とした支援」「感覚統合療法」「薬物療法」などが記載されいます。
実際に、著者は、支援の基盤となる「環境調整」「合理的配慮」「構造化(TEACCH)」に比重を置きながら、子どもに応じて、「応用行動分析(ABA)」「感覚統合療法」などを部分的に活用することがあります。
支援において、様々なエビデンスが蓄積されてきている中で、支援の効果にも目を向けながら、個別の支援では、様々な支援アプローチをいかにうまく組み合わせていくか(オーダーメイドの支援)が大切だと感じています。
そのためにも、今回見た「支援の多層性」を理解していくことは、自身の支援の在り方を整理すること、そして、支援の発想を広げて展開していくためにも、大切な視点だと考えます。
以上、【発達障害の支援とは?】基本原則と多層的な支援の考え方をわかりやすく解説について見てきました。
支援には基本原則や多層性があるといった観点に基づき、支援を進めていくことで、より質の高い支援に繋がっていくと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もより良い発達理解と発達支援に向けて、自らの支援の取り組み内容を整理・発展させていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
支援関連の内容で、発達支援の「支援」に関する記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【発達支援の「支援」とは何か?】生活障害・発達的視点をキーワードに考える」。
発達障害に関するお勧め書籍紹介は以下の記事で紹介しています。
関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】発達障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」
藤本昌樹(2026)ウェルビーイングをめざす 新しい発達障害学入門‐理解から支援へ.北樹出版.

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