【発達障害児の社会性とは?】発達段階・支援のポイント・実践方法を総合解説

まとめ記事

「社会性」と聞くと、ルールを守ることや集団に合わせることをイメージするかもしれません。しかし実際には、社会性とは“人とつながる力”を土台として少しずつ育っていくものです。

そのため、発達障害児への支援では、表面的な行動だけでなく、社会性がどのような過程で発達していくのかを理解することが大切になります。

著者は療育現場で長年、発達障害児支援をしていますが、その中でも、社会性支援の視点は非常に重要であると感じています。

 

本記事では、発達障害児の社会性とは何かについて整理しながら、社会性の発達段階、支援で大切なポイント、そして療育現場での実践方法について総合的に解説します。

 

※本記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有し、発達障害に関連する大量の書籍を読んできた筆者が執筆しています。

 

社会性支援の全体マップ

本記事では、発達障害児の社会性の理解と支援に関して、以下の6つの章に分けて解説していきます。

1.社会性とは何か?

2.社会性の発達段階について

3.社会性支援のポイント

4.社会性支援の実際

5.まとめ

6.参考書籍紹介

 

 

スポンサーリンク

 

 

社会性とは何か

この章では、「1.社会性とは何か」「2.社会性支援の必要性と可能性」について見ていきます。

 

社会性とは何か

社会性とは「人と何かを共にし、またそのことを楽しむこと=共同行為」だと考えられています。

この定義にあるように、社会性の本質的な意味は、共同行為、つまり、人と何かを共にする力、共有する力であり、またそのことを楽しむ力です。

共同行為には、お互いが共通の目標・目的を持ち、それに向けて、それぞれの役割を理解して協力していく過程が必要になります。

つまり、人は共同行為を通して社会性を身につけていくといった視点が大切なポイントになります。

以上の「社会性とは何か」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【〝社会性″とは何か?】療育で〝社会性″を育てるために大切なこと

 

社会性支援の必要性と可能性

社会性は定型発達児であれば、環境が本人に合っていれば自然と獲得していく所が大いにあります。

一方で、定型発達児、特に自閉症児においては、社会性を自然と獲得する難しさがあります。それは、自閉症が持つ本来的な特性が影響しているからです(心の理論や対人コミュニケーションの弱さなど)。

自閉症児は他者と関わりを持ちたくないわけではなく、関わり方が独特(興味関心の領域の狭さや物に注意が向きやすいなど)な場合が多くあります。

そのため、自閉症児が周囲と関わりを持ちながら、他者との関わり方を身につける必要(‟社会性支援が必要”)があり、また、周囲も自閉症児の独特な関わり方(世界観)への理解を示す必要があります。

社会性の発達には一定の段階があります。社会性はそもそも、大人との関係を基盤として学習していきます。そのため、社会性は、学習可能であり、学習可能ということは、支援の必要性もまたあると考えられています。

以上の「社会性支援の必要性と可能性」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【自閉症児にこそ〝社会性″への支援が必要な理由】療育経験を通して考える

関連記事:「【〝社会性″は学習できる】支援の可能性について考える

 

 

社会性の発達段階について

「社会性の発達段階」には次のようなプロセスがあります(以下、図で解説)。

この図は、子どもの「社会性の発達段階」について、幼児期から幼児期以降までの発達過程を表したものになります。

発達障害児において、自閉症児では「人よりも物に注意が向きやすい」ことや「共同注意」の獲得の遅れ(後の「心の理論」の獲得の遅れにも影響)、実行機能の弱さやこだわり等が影響して「がまんの理解」「順番やルール理解」に困難さが見られることがあります。

また、ADHD児においては、不注意・多動性・衝動性が影響して「がまんの理解」「順番やルール理解」に問題が生じることがあります。

自閉症児の社会性支援において、「行動と情動の共有」「目標と知覚の共有」「意図と注意の共有」をキーワードに理解と支援の手立てを考えることも有効だと考えられています(「自閉症児のための社会性発達支援プログラム」)。

このプログラムは、定型発達児では自然と通過する初期の社会性の発達の獲得において、より丁寧な発達の様相と支援方法を理解することができます。

その他、「太田ステージ」から見た社会性の発達段階もまた発達障害児などに見られるゆっくりな発達・質的に異なる発達を理解するヒントを得ることができます。関連する記事はこちらで紹介しています:関連記事:「太田ステージから見た社会性の発達段階について考える」。

以上の「社会性の発達段階について」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【社会性の発達段階とは?】乳児期からの発達過程をわかりやすく解説

関連記事:「【社会性はどう育つ?】行動・情動・意図の共有からみる発達段階を解説

 

 

社会性支援のポイント

この章では、「1.社会性支援の基盤」「2.共同行為から見た2つの支援内容」「3.共同行為を通した情動調整」「4.これからの社会性支援に向けて大切なこと」を通して、社会性支援のポイントについて見ていきます。

 

社会性支援の基盤

「社会性支援」と言えば、○○のスキルを身につけるといった「ソーシャルスキルトレーニング」があります。一方で、社会性の獲得には、挨拶の仕方や他者との距離感や助けを求める力など様々なスキルの獲得以前に大切なことがあります。

それが「他者と共に在ることの心地よさや楽しさを感じる体験を十分に重ねること」であり、その基盤があってこそ、ソーシャルスキルトレーニングに意味が出てくると言えます。

また、社会性の獲得において、「人と関わることが楽しく、そして、共に何かをすることに意味があり、大切なのだといった理解(初期の社会性)」の基盤があってこそ、「共に生きていくために必要なルールの理解が可能になる(後期の社会性)」といった順番があると考えられています。

つまり、社会性支援のポイントの一つに、スキルの獲得やルールの理解以前に、初期の社会性の経験(社会性の基盤)をしっかりと身につけていく必要があるといった視点の理解が大切だと言えます。

以上の「社会性支援の基盤」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【社会性の発達で大切な2つの力】「人と関わる力」と「社会ルールを理解する力」について解説

関連記事:「【〝社会性″と〝ソーシャルスキルトレーニング(SST)″の関係】療育経験を通して大切な視点について考える

 

共同行為から見た2つの支援内容

「共同行為」には、「1.他者が生活スキル獲得の手段(足場)となる共同行為」と「2.他者が目的となる共同行為」の2種類があると考えられています。

1.他者が生活スキル獲得の手段(足場)となる共同行為」とは、例えば、鉄棒で前回りができるようになりたい子どもが、大人の力を借りて(足場作り)、徐々に大人の手助けを減らしていき(足場を減らす)最終的に一人でできるようになるなどがあります。

子どもは、食事・排泄・着脱など周囲の手を借りながら生活スキルを獲得していきますが、共同行為が持つ一つの意味がここにあります。

2.他者が目的となる共同行為」とは、「人といっしょに何かをする仕方」を学ぶための共同行為を指し、少し具体的に表現すると先で紹介した「お互いが共通の目標・目的を持ち、それに向けて、それぞれの役割を理解して協力していく過程」のことを指します。

例えば、段ボールで一緒に一つの車を作ろうといった共通の目的があった場合、一人が段ボールを切る・もう一人が段ボールに色紙を貼るといった役割分担をしながら協力して作品を完成させるなどがあります。

ここで見る社会性支援のポイントとして、1つ目が支援者が足場を作り、徐々に足場を外しながら一人でできるようにサポートをしていくこと、そして、2つ目として、共通のことを目的とした活動において、支援者が役割分担の提示や役割の中で分からない部分をサポートしていくといった対応が大切だと言えます。

以上の「共同行為から見た2つの支援内容」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【社会性の発達で大切なこと】“共同行為”から考える他者との関わりの育ち

関連記事:「【〝社会性″の発達で大切なこと】〝協同活動″を通して考える

 

共同行為を通した情動調整

「共同行為」には、様々な情動(喜怒哀楽)の共有が必ずともなっています。そして、感情のコントロールといった「情動調整」には、「共同行為」を通して、他者と様々な情動を共有する経験の中で徐々に育まれていくと言えます。

例えば、思うように遊びがうまくいかずイライラしている子どもを大人があやしながら、うまく遊びができるようにサポートしていく過程の中で、ネガティブ感情の抑制の仕方を学んでいきます。一方で、遊びが楽しいことを大人と共有することで、ポジティブ感情の表出の仕方を学んでいくことにも繋がっていきます。

ここで見る社会性支援のポイントとしては、共同行為を通して、支援者が子どもの気持ちの調整(情動調整)の学習を進めていくといった視点の理解が大切だと言えます。

以上の「共同行為を通した情動調整」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【〝社会性″の発達で大切なこと】〝共同行為″の中で見られる〝情動調整″の育ちから考える

 

これからの社会性支援に向けて大切なこと

これからの社会性支援は、「異なる人たちと新たな関係(New World)を構築していく必要がある」と考えられています。

例えば、自閉症児・者は定型発達児・者とは異なり、対人コミュニケーションのスタイルに違いが見られます。

この場合、自閉症児・者が定型発達児・者にコミュニケーションのスタイルを合わせるといったことだけではなく、定型発達児・者も自閉症児・者に合わせていくといった「相互調整:お互いに学び合う関係」の視点が大切になります。

ここで見る社会性支援のポイントとしては、異なる人たちと関係を築いていく際に、どちらか一方に合わせるということではなく、お互いに学び合うといった関係(相互調整)の中で見えてくる、新しい関係(New World)を考えていく必要があると言えます。

以上の「これからの社会性支援に向けて大切なこと」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【これからの社会性支援とは?】異なる他者と関係を築く“相互調整”の視点から考える

 

 

社会性支援の実際

この章では、著者の療育経験をもとに社会性支援の実際について見ていきます。

社会性支援の実際に当たって重要な視点として「1.興味関心を活かした支援」「2.強みを活かした支援」「3.協力活動を活かした支援」「4.異年齢の関わりを活かした支援」「5.第3の居場所を活かした支援」があります。順を追って見ていきます。

 

興味関心を活かした支援

発達障害児の中で、特に自閉症傾向の強い子どもは興味関心の幅が狭いことがよくあります。

自閉症児は人よりも物に興味が向きやすいことがありますが、彼らは人と関わりたい欲求が全くないわけではなく、むしろ、自分の興味関心を他者と分かち合いたいといった思いを強く持っていると感じることがよくあります。

そのため、子どもの興味関心を深く理解していくことが、他者と関わりを持つ上で非常に有効な情報になります。その中で、お互いに近い興味関心を持つ子ども同士を繋げる工夫が重要だと言えます。

実際に、著者は子どもたちが自分の興味関心を基点に他者と繋がり、関係性を深めていったケースを多く見てきています。そして、関係性が深まる中で、社会性の獲得もまた促進されていくのだと思います。

以上の「興味関心を活かした支援」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【発達障害児の社会性支援】子どもの興味関心を活かした関係づくり

 

強みを活かした支援

発達障害児への支援をしていると様々な個性に出会うことがあります。例えば、特定の領域に非常に詳しい○○博士的な存在、リーダー的な存在、周囲を和ませてくれる存在など様々な個性があります。

社会性支援を進めていくにあたり、子どもの個性(強み・得意・性格の良い所など)を把握して、その良さを周囲に伝えながら、他者との関係を構築していく支援もまた大切だと考えます。

著者は、子どもたちが日々を共に過ごしていく中で、お互いの個性を認め合う姿をこれまで多く目にすることがあります。それは、必ずしも良い所だけではなく、苦手な所も含めた違いを理解していくことでもあります。

理解の入り口としては、良い部分から入った方がその後の関係性は発展していくと感じます。そして、違いを理解するからこそ自分の個性についても理解していくことができるのだと思います。

他者の強みを知ることは、「○○の時は○○君と一緒に遊ぼう!聞いて見よう!」といった社会的な動機付けにも繋がっていきます。こうした他者の強みといった個性を伝えていくこともまた社会性支援においては大切なことだと感じます。

以上の「強みを活かした支援」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【発達障害児の社会性支援】他児の強みを活かした関係づくり

 

協力活動を活かした支援

社会性支援の鍵になるものとして、他者と協力して活動するといった経験の積み重ねがあります。

例えば、サッカーや野球などのチームスポーツ、一緒に作品を作り上げるといった制作活動、合唱や合奏といった音楽活動など、他者と協力する機会は社会の中に豊富に存在しています。

一方で、発達障害児は他者と何かを協力していく活動の過程において、様々な課題が見られることがあります。それは、他者の意図理解の難しや自分の衝動を抑えらえずに自分勝手に活動を進めてしまうことが影響していることがあります。

そのため、療育で重要なことは、共通の目的・目標を掲げていく中で、互いの役割を認識させていくこと、そして、最終的に他者と協力したからそこ楽しく活動をやり遂げることができたといった成功体験の積み重ねです。もちろん、発達障害児が持つ特性への支援も並行してサポートしていく必要があります。

著者の経験を踏まえて見ても、協力関係を他者と持つことで、一人よりも他者と一緒に遊ぶことをより好むようになっていったケースはこれまで多くあります。そして、この過程の中で、社会性を獲得していくところが大いにある(役割の理解・他者の意図や気持ちの理解など)と思います。

以上の「協力関係を活かした支援」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【発達障害児の社会性支援】協力活動を通した関係づくり

 

異年齢の関わりを活かした支援

年上への憧れや年下を可愛がる姿もまた発達障害児においても見られる光景です。

もちろん、個人差がありますので、異年齢への興味がほとんどない子どももいますが、著者がこれまで見てきた子どもの中には、年上の強さ・賢さ・面白さ・優しさなどに強い憧れを持つ子どもが多くいたことも事実としてあります。また、年下を可愛がる姿や自分が知っていることを教えてあげる姿もまた見られることがあります。

著者が勤める放課後等デイサービスには年齢の異なる子どもたちが集まるため、年齢を超えた関わり、異年齢の関わりから様々な社会性の力を獲得していった子どもたちは多くいます。

異年齢における学びを進めていくためにも、これまで見てきた「興味関心の活用」「良さの活用」「協力活動の活用」などを積極的に取り入れることが大切だと感じます。

以上の「異年齢の関わりを活かした支援」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【発達障害児の社会性支援】異年齢の関わりが子どもを育てる

 

第3の居場所を活かした支援

発達障害児は自分だけの力で家庭や学校以外の第3の居場所(サードプレイス)を作ることは難しいと考えられています。

これまで見てきた社会性支援の実際に当たって重要な視点を実施していく上でも、まずは社会性を獲得していくために必要な子どもたちが安心して過ごせる居場所(サードプレイス)が大切になります。

著者が勤める放課後等デイサービスは、第3の居場所的な存在であるため、こうした環境において、家庭や学校以外での人との出会いや関わりを持つことができます。

そして、放課後といった余暇活動・遊びなどを通して、様々な社会性の力を獲得する機会を得ることができると実感しています。

以上の「第3の居場所を活かした支援」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【発達障害児の社会性支援】“第三の居場所”が子どもを育てる

 

 

まとめ

社会性とは「人と何かを共にし、またそのことを楽しむこと=共同行為」だと考えられています。

定型発達児であれば自然と獲得していく所が大きい社会性において、発達障害児は特に支援の必要性と可能性が大いにあります。

発達障害児は社会性の獲得過程において様々な躓きを見せることがあるため、一般的な社会性の発達段階を理解していく中で、どの部分に躓きがあるのかを理解していくためのより丁寧な発達段階を分析する目が必要になります。

社会性支援のポイントととして、社会のルールや社会的スキルの獲得以前に、共に何かを共有する経験、そして、共有する楽しさを積み上げることが大切です。その他、足場作りの視点、情動調整の視点、自分とは異なる様々な他者と相互調整していく中で新しい関係性を築いていく視点もまた大切です。

著者の経験から社会的支援で重要な視点として、「興味関心を活かした支援」「強みを活かした支援」「協力活動を活かした支援」「異年齢の関わりを活かした支援」「第3の居場所を活かした支援」があり、どの視点も社会性の獲得において大切だと実感しています。

 

今回見てきた発達障害児の社会性の理解と支援に関連するものとして、自閉症児のコミュニケーション支援があります。詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「【自閉症児の対人コミュニケーション支援】療育現場から考える理解と実践のポイント」。

 

 

参考書籍紹介

今回の記事内容をさらに深める上でお勧めする書籍紹介記事を以下に載せます。

発達障害児の社会性を含め発達障害領域を網羅的に学びたいと考えている人には次の書籍紹介記事がお勧めです:関連記事:「臨床発達心理士が厳選:発達障害を理解するための体系的読書ガイド【完全版】」。

発達障害児の社会性に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:「【臨床発達心理士が厳選】発達障害の〝社会性″に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

社会性も含め子どもの発達に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:「【臨床発達心理士が厳選】発達心理学に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

 

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました