発達支援(療育)の現場において、よく職員から子供たちと関係性ができている、あるいはまだできていないなどの話題が上がることがあります。特に支援の難しいお子さんにおいては大人との関係性の構築が重要であると思います。
今回は療育などの現場において子供たちと関係性をつくることの大切さについて経験と知識をもとに述べていこうと思います。
経験談の話をする前に、以前大学の講義で関係性に関する興味深い内容があったので最初にその内容について説明していきたいと思います。
ランバードの研究について
【ランバードの研究】
この研究では心理療法の効果量をメタ分析したものです。メタ分析とはこれまでの研究データを集めそれを整理し分析したものになります。この場合、これまで行ってきた数々の心理療法の効果のデータを集め分析したことになります。
ランバードが研究結果は、次のような値を示しました。
治療外要因(治療とは関係ない、状況の変化、個人の成長など)が40%、共通要因(ラポールなど肯定的な関係構築など)が30%、期待要因(この問題がよくなるのではないかという期待)が15%、モデル・技治要因(様々なセラピー)が15%という数値になっています。
この結果を見て、モデル・技治要因が予想に反して低く、治療外要因が高いということに正直驚きがありましたが、中でも今回テーマとしている共通要因(ラポールなど肯定的な関係構築など)が30%という値は他の要因の中でも高い値を示していることがわかります。
以上、ランバードの研究から関係性の重要性の説明になります。
次に自分が療育現場の経験を通して大切だと考える関係性についての視点を述べたいと思います。
著者のコメント
相手とより良い関係性をつくるということの大切さや難しさは皆さんも様々なところで感じているかと思います。
発達に困難を抱える方々をサポートするうえで、相手との距離感や相手の意図をどうくみ取るのか、どう伝えるのかは非常に重要になってきます。
特にこれまでの経験で相手の意図がわかりずらい、行動予測ができないなど理解が困難な事例ほど関係性の構築に時間がかかる傾向にあるかと思います。
それは相手にしてみても大人の対応や意図がわからないなど同じことが言えるのではないかと思います。
また、中には愛着形成に問題がありそもそも人を信頼していないなど、自閉症や注意欠如/多動性障害などの発達特性だけでは理解できない要因も絡んできます。
ここでは簡単にではありますが私が子供たちを支援するにあたり大切だと考えていること3点を述べたいと思います。
1.興味・関心を通した関わり
1つ目として、私は、子供たちの興味や関心は何であるのかから探りそれをベースに関係構築を図ろうとすることが多いです。
子供たちの興味の幅は広く一人ひとり違います。そうした中で、興味や関心を大人と共有するという経験は子供たちから信頼を得るうえで非常に重要ですし、子供たちは過去の楽しかったエピソードを覚えていることが多いことからも興味や関心から関係を作ることは大切だと実感させられます。
2.困った時に寄り添うこと
2つ目として、困ったときに一緒になって考えようとする姿勢があるかということだと思います。
人は自分が困り助けを求めようとしたときに、そのことに気づいてくれる、解決策をしっかり考えてくれる人に信頼を寄せるのだと思います。
3.発達特性や二次障害の理解と対応
3つ目として、発達特性への理解や発達特性に応じた配慮や、先ほど触れた愛着障害など二次障害への理解と対応があるかと思います。
上記の中で、人それぞれ得意不得意なところはあるかと思います。
例えば、興味や関心でいうと体を動かすのが得意な人、物を作るのが得意な人、音楽が得意な人、話が面白い人など色々あるかと思います。
困ったことへの気づきやその対応がうまい人、特性への理解に強い人など現場を見ていても様々な支援者がいます。
必要なベースラインはあるかもしれませんが、それぞれが自分の強みや色を出していくことが私は重要だと考えています。
関係性をつくることはある意味長期戦です。
良かれと思ってとった行動がそうではない結果になることもあります。
うまくいかないことや共感できた喜びなど紆余曲折はあるかと思いますが、その過程を楽しみながら子供たちの変化を観察し、日々の気づきを大切に今後も関係性への理解を深めていこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。