愛着とは特定の養育者との情緒的な絆のことをいいます。
過去の養育者との情動交流(気持ちの交流)がその後の愛着スタイルの基盤になると言われています。
愛着スタイルは、安定型と不安定型に大きく分類されますが、不安型はさらに下位の分類があります。
愛着スタイルについては以下の記事に詳細を載せています。
関連記事:「愛着スタイルとは?4つの愛着スタイルの特徴について考える」
それでは、親の愛着スタイルが子どもに影響することはあるのでしょうか?
もし、あるとするとどのような影響があるのでしょうか?
そこで、今回は、親の愛着スタイルは子どもに影響するのか?といった内容についてお伝えしていきます。
今回参照する資料は「岡田尊司(2011)愛着障害:子ども時代を引きずる人々.光文社新書.」です。
親の愛着スタイルは子どもに影響するのか【親子関係の愛着について考える】
以下、著書を引用します。
数多くの研究によっても、親の愛着スタイルが子どもの愛着パターンに大きく影響することが裏付けられている。つまり、不安定型の愛着スタイルをもつ親に対して、子どもは、不安定型の愛着パターンを示しやすいのである。
著書の内容から、結論を言えば、これまでの多くの研究から親の愛着スタイルは子どもに影響することが明らかになっています。
つまり、親が不安定型の愛着スタイルであれば子どもも不安定な愛着パターンになりやすく、親が安定型の愛着スタイルであれば子どもも安定型の愛着パターンになりやすいということです。
この場合の愛着パターンとは、まだ愛着スタイルといった固定した対人様式(人への関わり方)が形成される前段階という意味で使われています。
実親とそうでない親(養子など)による違いはあるのか
それでは、こうした愛着スタイルは、実親とそうでない親(養子など)によって違いがあるのでしょうか?
以下、著書を引用します。
実の母の愛着スタイルが不安定型であっても、育ての親が安定型ならば、子どもの愛着パターンも安定型となりやすい。逆もまた真なりである。繰り返しになるが、遺伝的要因よりも養育環境の影響が大きいのである。
著書の内容から、安定した愛着スタイルを築くためには、実親とそうでない親(養子など)の違い、つまり、遺伝的な影響よりも、養育者が誰であれ、その特定の人物が安定した愛着スタイルを持っているかどうか、つまり、養育環境が重要だということになります。
愛着とは、先天性ではなく、養育環境といった後天的な要因が強く影響します。
安定した愛着(愛着スタイル)を築くためには、特定の人物(養育者)との情緒的な関わりが大切です。つまり、特定の人物(養育者)が、子どもの様々な発信に気づき、安心感を与えるような関わりがとても重要だということです。
ここで、大切なのは、子どもの思いをくみ取るということです。親が一方的に愛情を注いだというより、子どもが親の関わりに安心感を持ったかどうかが大切なポイントになります。
父親など他の人物の影響はどうあるのか
ここまでは母親(里親など)を中心として見てきましたが、父親や他の人物は子どもの愛着スタイル(愛着パターン)にどう影響するのでしょうか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
母親の愛着スタイルがもっとも影響が大きいものの、父親の愛着スタイルやその子の養育に関わった他の人物の愛着スタイルも影響を及ぼす。
著書の内容では、母親など特定の人物の愛着スタイルが子どもに最も影響するものの、父親など他の人物の愛着スタイルもまた少なからず影響すると記載されています。
引き続き著書を引用します。
父親と母親で愛着スタイルが異なっている場合には、安定型の愛着スタイルをもつ方の親との関係が、不安定型の方の親との間に生じやすい不安定型の愛着パターンを補ってくれることもある。
著書の内容から、例えば、母親が不安定型の愛着スタイルをもっており、逆に、父親が安定型の愛着スタイルを持っている場合には、子どもが母親との間に生じる不安定な愛着パターンを父親が補ってくれることもあるということです。
このように、親の愛着スタイルは、母親など特定の養育者の影響を強く受けますが、その中でも、父親など周囲の人物の愛着スタイルの影響も受けながら、成長・発達していくということになります。
例え、特定の養育者が不安定型の愛着スタイルを持っていても、身近な周囲に安定型の愛着スタイルを持つ人物がいれば、不安定な情緒的交流を補い修正してくれる場合もあるとうことです。
以上、親の愛着スタイルは子どもに影響するのか【親子関係の愛着について考える】について見てきました。
愛着スタイルの形成の基盤は、特定の養育者との情緒的な関わりが基盤にあります。
そのため、特定の養育者の愛着スタイルが子どもに大きく影響することになります。
それは、実親かそうでないかは関係なく、関わりの質が重要だということです。
そして、特定の養育者の身近な周囲の人物の愛着スタイルも少なからず子どもに影響することもわかっています。
私自身、療育現場で日々、子どもたちと関わる仕事をしています。
私も含め自分たち大人が子どもたちに安心感を与えていけるように、子どもたちからの発信を受け止めながら、質の濃い関わりを目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
愛着・愛着障害に関するお勧め関連書籍の紹介
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岡田尊司(2011)愛着障害:子ども時代を引きずる人々.光文社新書.