自閉症児の中には急な予定変更でパニックなる、活動の切り替えが難しいなど先の「見通し」を持って行動することを苦手とする場合が多く見られます。
また、先を見通すことが難しい、わかっていないと不安などの理由から、事前に予定の確認などを頻繁に行う場合もあるかと思います。
それでは、自閉症児が「見通し」を持てるようになるには、長い目で見た場合(発達的視点)にどのような変化があるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児の「見通し」について、著者がこれまで関わってきたお子さんとの中で苦労した点や取り組んできた経験についてお話していこうと思います。
著者の経験談
今回取り上げる事例は療育現場で出会った自閉症児A君について、数年の関わりから見通す力の変遷をお伝えしていきます。
A君が療育現場に通い始めたときには、とにかく自分のペースで過ごすことが多く、次の活動に誘ってもなかなか切り替えることができずに自分のやりたいことをそのまま続けることが多いお子さんでした。時には次への活動を呼び掛けることでパニックを起こすこともありました。そんなA君に対して周囲はわがままな子と見ていた方もいたかと思います。私はA君の担任かつ担当であったのでA君の行動の特性などを注意深く観察することを始めました。
ここで療育現場の一日の流れをお話しします。最初に登園するとカバンをロッカーに入れるなどの準備した後、自由遊びになります。次に、朝の会。ここでは紙芝居や一人一人の名前を読んだり、歌をうたったりしながら一日の始まりを意識していきます。次に、設定遊びといって事前に準備した遊びを一つやります。それが終わると給食になります。午後は主に自由遊びの時間となり、最後にお茶タイム、帰りの会という流れになっています。
こういった活動の流れの中でA君との関わりで苦労した点は、A君は大の外遊び好きであり、登園するとすぐに園庭に向かいます。たとえ雨が降っていても行きます。本人は飽きるまで遊びたいという思いがあるので、満足感が満たされるまで外にいます。そのため、予定していた活動への参加が難しいということが多くありました。一人クラスで浮いているような状況です。
しかし、私の中でA君の遊びたい気持ちを大切にしたかったため、そのことを忘れずに対応していこうと考えました。取り組んだ内容としては、非常にシンプルなもので、外遊びの時間を事前に多くとるように考える、外遊びの中でA君の好きな遊びがたくさんできるように環境調整をする、次の活動の朝の会ではA君の好きな紙芝居を読むなどを継続して行いました。
こうった関わりの中でA君は少しずつ次への活動の期待感や外遊びの満足感からか自分から早めにクラスに戻る様子も出てきました。そういった興味関心からの働きかけや、A君が夢中でやっている遊びの環境をしっかりと保障することがこのような変化に繋がったのではないかと考えます。
その後の取り組みとして、朝の会に一日のスケジュールをマグネット形式で張っていくということを繰り返し行いました。視覚的な理解に強いA君はこれを見て徐々にその日の流れを少しずつ理解していくようになりました。
卒園後、A君の保護者とお会いする機会があり、A君のことを尋ねると、小学校では一日の流れは理解できるようになり、一週間の流れもわかるようになってきた。課題は一週間の流れの中でイレギュラーがあると(例えば祝日など)本人の理解はまだ難しいとのことでした。それを聞いて私はA君が自分のペースでしっかりと見通す力をつけているのだと感じ嬉しくなりました。
以上、事例を挙げて自閉症児の見通しについてお話してきました。
大切な点は、自閉症の人たちは先を見通して動くことが難しいのでそういった特性を理解すること、そして、その特性を理解していきながら、一人ひとりにあった関わり方を創意工夫していくことだと思います。
すぐに変化が起こるのは難しいかもしれませんが一人ひとりの成長を忍耐強く見守ることも大切だと思います。
こうした長期を見据えた関わりは発達的な視点とも言いますが、今後も時間をかけて子供たちの成長をサポートしていこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。