
発達障害のある人において、発達特性に対する自己理解はとても大切です。
発達特性にも、様々なものがありますし、特性の強弱も人のよって幅があります。
何が得意で何を苦手としているのか、また、それに対する対処方法にはどのようなものがあるのかということを知っているといなのとでは、現在および未来の生活がとても変わってくる場合があります。
それでは、大人の発達障害のある人たちにとって、なぜ自己理解が必要だと言われているのでしょうか?
そこで、今回は著者の療育経験も踏まえて、大人のASDを例に発達障害の自己理解の必要性について考えていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回、参照する資料は「大島郁葉(編)大島郁葉・鈴木香苗(著)(2019)事例でわかる思春期・おとなの自閉スペクトラム症:当事者・家族の自己理解ガイド.金剛出版.」です。
大人の発達障害の自己理解の必要性について
以下、著書を引用します。
自閉スペクトラム症の人は大人になるにしたがって、自分の自閉特性への理解が大事になります。なぜなら、小さい頃と違って、セルフケアをしていかなければならないからです。例えば合理的配慮を求めるためにも、自分自身がもつ自閉特性を理解し、他者に伝えるスキルが必要になります。
著書の内容を踏まえると、大人の発達障害の自己理解(特性理解)は大切であり、中でも、大人になるとセルフケアを自分で行い、自分から周囲に何ができてできないかなどを伝える必要性がでてきます。
子どもの頃は、自分の特性を知ることが難しい状態だと思います。そのため、周囲が本人の特性を理解していきながら配慮していくことが重要です。
大人になるにつれて、周囲との間に違和感が生じ、その違和感の正体が特性からくるものだと自己理解をしていく過程において、セルフケアの力は高まっていくのだと言えます。
もちろん、セルフケアの力は最初から一人でできるわけではなく、親や教師、専門家の力をかりることが大切です。
それでは、次に著者の療育経験からセルフケアの大切さについてお伝えします。
著者の経験談
著者は療育現場で子どもの支援に携わっています。
その中で、成人の当事者の方とも関わる機会が多くあります。
こうした人たちと関わる中で、セルフケアの大切さを実感する場面が多くあります。
セルフケアとは、発達特性を理解すること、つまり、自分のできる・できない・得意・不得意などを客観的に理解し、それを他者に伝えることなどが含まれます。
こうした力がある程度ある人は、自分の方から、「○○の作業は私がやります!」、「○○の作業は苦手なので時間がかかります」、「○○には詳しいの聞いて下さい!」などの発信が多くみられます。
こうした発信があると、仕事や作業など共同で行うものがよりスムーズに進みます。
一方で、こうした力が弱い人は、自分からの発信を苦手としています。また、質問しても、わからないといった返答が多くみられます。
発信を苦手としている人も、自己の特性を理解している場合には、発信を引き出すサポートをしていけばうまくいくことが増えていきます。
難しいのは、そもそも特性をうまく理解できていないため、自分も周囲もどちらも困っているといった状態です。
こういった人には、一緒に何か作業をしていく中で、得意な所や苦手な所が見えてくる場合が多いため、それを振り返る練習が大切かと思います。
セルフケアの力は、自分自身を助けるものだけではなく、周囲を助けるものにもなります。
時々、セルフケアの力がとても高い方に出会うことがあります。
こういった人は、自分の説明がとてもうまく、自分の取扱説明書を作れるレベルの方もいます。
以上、ここまで色々とお伝えしてきましたが、書いている私自身も自己理解とは一体何か?といった疑問が生じることがよくあります。
それは、まったく変わらない自己など存在しないと思っているからです。
そうは言っても、特性を理解することは大切です。
特性は消えることなく、治るというものでもなく、生涯において持続的に残るからです。
そのため、そうした特性がより良いものとして生活や社会の中で発揮できるようにセルフケアをしていくことが必要だと改めて感じます。
今後も、将来を見据えて、今関わっている子どもたちの生活が少しでも豊かなものになるように関わり方を工夫していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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大島郁葉(編)大島郁葉・鈴木香苗(著)(2019)事例でわかる思春期・おとなの自閉スペクトラム症:当事者・家族の自己理解ガイド.金剛出版.