著者は長年、療育現場を通じて発達に躓きのあるお子さんたちと関わる機会を多く持ってきています。
また、子どもだけではなく成人の方(発達障害やその疑いにある方)とも関わる機会が多くあります。
その中で、「発達」という言葉の持つ意味の大切さを実感することが増えてきています。
様々な書籍を読んでいても、「発達」の視点が持つ大切さを述べている本が特に発達障害の領域で増えてきている印象があります。
それでは、発達の視点を持つことの意味や大切さにはどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、著者の療育経験も踏まえて、発達的視点の大切さについてお伝えします。
今回参照する資料は、「本田秀夫(2013)子どもから大人への発達精神医学:自閉症スペクトラム・ADHD・知的障害の基礎と実践.金剛出版.」です。
発達的視点の大切さについて
以下に著書を引用します。
成人期以降の精神障害の臨床では、その障害の成り立ちに発達障害がどのような役割を果たしているのかを考慮する必要がある。言い換えると、「元々どんな人だったのか」を考えるにあたり「生活史」、「パーソナリティ」に加えて「発達」の視点を盛り込むことである。
著書の内容から、成人期以降の精神障害の症例に対しても、発達の視点はとても重要だということです。
つまり、精神障害といっても、もともと持っている発達障害の問題の有無で理解や対応が変わってくるということです。
現在の症状(精神障害など)は、過去の発達歴などを考慮すると状態像など見え方が変わってくるということになります。
発達とは、個人因子と環境因子の相互性を時間軸において理解することだとも言えます。
こうした時間変化に伴う心身の変化を理解していくことが大切であり、これは成人期に限らず、様々なライフステージにもおいても重要だと言えます。
現在、成人期において、発達障害の診断を受ける際には、保護者が同席する必要があります。つまり、診断には過去の情報を知る必要があるからです。
それでは、次に著者の療育経験を踏まえて、発達の視点の大切さについてお伝えします。
著者の経験談
・精神の問題か?発達の問題か?
精神の問題か?発達の問題か?といった、見極めはとても大切です。
著者は10年以上前に、福祉の分野の先輩から、精神障害の理解と発達障害の理解の重要性を知る機会がありました。
詳細は割愛しますが、二つの状態像は一見すると似ている場合があります。
しかし、根源的な発症要因は異なります。
発達障害が先天性の脳の機能障害であるのに対して、精神障害は生後の環境からの影響といった二次的な症状として生じます。
もちろん、一次障害として発達障害があり、二次障害として精神障害に至るケースもあります。
ここで、重要なのは、成人期になると発達歴などを踏まえないとこうした状態像の理解が難しくなるということです。
裏を返すと、現在の様子や状態のみでは理解できないことが多くあるということです。
そして、適切な状態像の理解を怠ると支援もうまくいかない場合がでてきます。
そのため、両者の理解は特に成人期においては「発達」という視点を考慮することがとても必要になると実感しています。
・現在の姿はこれまでの積み重ねでてきている
現在の人の状態像はこれまでの発達の積み重ねでできています。
そのため、過去⇔現在⇔未来を繋ぐといった「発達」の視点がとても大切になります。
著者もこれまで関わってきた子のどもの中で、これまでの発達歴から重要な情報を得ることができたという実感があります。
その子の理解が一歩進んだ(時には飛躍的に)という感じです。
一方で、難しいと感じるのは現在の状態像の理解が難しいケースの中に、これまでの発達歴をなかなか得ることができないということがあります。
なぜ、この子は○○の行動をとるのだろうか?といった理解は、これまでの学習による影響も大きいため、こうしたなぜに応えるためには発達歴といったこれまでの学習経験の情報が必要になります。
著者は保護者などの情報から、過去の出来事などを聞くことで、現在の状態像の理解が進んだということが多くあります。
そのため、現在を知るためには、これまでの「発達」を理解するということがとても大切だと思っています。
以上、発達的視点の大切さについて述べてきました。
発達の持つ意味合いは想像以上に大切だと思います。
私自身まだまだ未熟ですが、現場での実践から、今後もさらなる発達理解や発達支援を目指して、「発達」への理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「発達的視点の重要性について」
関連記事:「療育で大切な視点-発達的視点について-」
参考となる書籍の紹介は以下です。
関連記事:「発達心理学に関するおすすめ本【中級編】」
本田秀夫(2013)子どもから大人への発達精神医学:自閉症スペクトラム・ADHD・知的障害の基礎と実践.金剛出版.