療育現場で子どもたちと関わっていると行動の意味がよくわからないことや、この子の状態をどのように理解すればよいのか難しいことが多くあります。
例えば、
他の子と一緒に集団行動が取れないのはなぜか?
一見聞いているようですぐに忘れてしまうのはなぜか?
すぐにかっとなってしまうのはなぜか?
衝動的に行動してしまうのはなぜか?
他のことに直ぐに注意が向くのはなぜか?
ルールの理解が難しい、あるいはすぐに破ってしまうのはなぜか?
複数の情報の処理が難しいのはなぜか?
大人との関係づくりがうまくいかないのはなぜか?
学習が積み重ならないのはなぜか?
ある特定のことにこだわるのはなぜか?
など、上げればきりがないほど様々な疑問が浮かびます。
こうした子どもたちの状態理解をする上で現場経験と知識が大切になってきます。
今回は子どもたちの発達を理解する上で大切な視点についてお伝えし、私がこの視点を取り入れたことで良かった体験談を併せてお伝えしていこうと思います。
今回参考にする資料として、「木村順(2006)子育てと健康シリーズ㉕:育てにくい子にはわけがある:感覚統合が教えてくれたもの.大月書店.」を参照していきたいと思います。
発達理解で大切な視点
著書の中で子どもたちの状態を理解するためにジグソーパズルを例に取り説明しています。
「パズルの絵全体」を、子どもの「発達像・状態像」と置きかえて考えてみてください。情報が少なすぎるときは、「なぜ、箸が使えないのか」がわかりません。しかし、いくつかの情報が集まってくると「アタリ」をつけることができるようになってきます。
ジグソーパズルでは、ピースがある程度完成してくると全体の絵が見えてきます。これは、子どもの状態理解・発達理解にも当てはまるというのです。
私自身、長年現場で療育をしておりますが、まさに、こうした徐々に情報を集めながら子どもたちの発達を理解するというアプローチをとっています。
単発の情報だけで子どもの状態がわかったという感覚はむしろ少ない印象です。現場は非常に複雑ですので、様々な情報が必要になります。
そして、発達を理解するためには、日々の子どもの様子の観察と、背景となる様々な知識が必要になります。
著者の体験談
それでは、次に私がこうしたジグソーパズル的な情報収集により子どもの状態理解・発達理解が深まった体験談を紹介していきたいと思います。
Aさんの事例
Aさんは自閉症という診断を持っております。
そのため、対人関係やコミュニケーションなどがうまくできない場面があります。また、こだわり行動もあり、自分のやり方や手順にこだわる行動も見られます。
私は、Aさんのこうした自閉的特徴があると感じながらも、それ以外での困り感も複数併せ持っているのでは?という疑問がありました。
例えば、Aさんは、文字がうまく書けない、工作など作業がうまくいかないという特徴もありました。
私は、Aさんの日々の生活とこれまでの生活場面や学習場面の情報を集めることにしました。
そうすると、確かに、工作など他の子に教えて作ってもらっていたことや、板書がうまく取れていなかったという様々な困り感が上がってきました。
こうして情報を集めていくうちに、Aさんは確かに診断名通りに対人関係やコミュニケーションの困難さやこだわり行動などもありながらも、不器用さも併せ持っていたという新たな情報が浮かびあがってきました。
このように情報を集めながら、Aさんというジグソーパズル的な発達理解が進みました。Aさんはこうした不器用さも併せ持っていた事実を知り、自己理解が深まり気持ちが楽になったこと、そして、困り感を改善する方法などを考えるきっかけになったと話しています。
以上が短いですが一つの体験談になります。
1人の人を理解するためには膨大な情報が必要になります。
そして、発達に躓きのあるお子さん(もちろん大人の方も含め)は、日ごろの関わりを通した観察や、困り感の背景となる知識や、障害や発達の知識など多くの情報が必要になります。
こうして情報を集め統合し仮説を立て支援するというループを繰り返すことで人への理解は深まっていくのだと思います。
私自身、こうした思考を通して様々な問いや仮説が思い浮かぶようになりました。
まだまだ未熟ですが、今後もより良い発達理解に向けて日々の子どものたちとの関わりと、関わりを通して問いを持つこと、様々な情報を集め子どもを理解する姿勢を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
木村順(2006)子育てと健康シリーズ㉕:育てにくい子にはわけがある:感覚統合が教えてくれたもの.大月書店.