発達障害の領域において、「○○の発達特性がある」「○○の特性が強い」「○○特性が見られる」などといったように、「発達特性」といった用語が使用されることがあります。
著者も発達障害児・者の現場を通して、よく「発達特性」といった言葉を使用しますし、また、周囲の人たちからもよくこの言葉を聞きます。
一方で、「発達特性」といった用語自体、厳密に定義されずに、また、使用の仕方も主観的なものであるように感じます。
それでは、「発達特性」とは厳密にどのように定義されており、どのように使用されているのでしょうか?
そこで、今回は、「発達特性」とは何かについて、臨床発達心理士である著者の経験談も踏まえながら、「発達特性」の定義・使用の仕方について解説していきます。
今回参照する資料は、「松浦有佑(2026)発達障害を正しく知る.幻冬舎新書.」です。
発達特性の定義について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「発達特性」という言葉は、明確に定義された専門用語ではなく、発達障害に関する診断基準や法令に記載されている言葉でもありません。(中略)便宜的な俗語だと言えます。
著書の内容から、「発達特性」といった用語は明確には定義されておらず、普段、私たちが何気なく使用している言葉だと言えます。
そのため、使用する側と受け取り側とで、コミュニケーションのズレが生じる可能性があります。
発達特性の使用の仕方について
著書の執筆者である松浦有佑さんは、著書の中で「発達特性」の使用の仕方には次の3つがあると述べています(以下、著書を引用)。
発達における「人との違い」を表す言葉
支援を目的とした包括的な用語
「発達障害」の言い換えとしての使い方
発達における「人との違い」を表す言葉
個性や特徴など、発達における「人との違い」を表す際に使われています。
例えば、不注意傾向が強く忘れ物が多い発達特性があるなどです。
後述しますが、著者は、この使い方を発達障害児・者支援の現場でよく活用しています。状態像の理解を、他者との違いとして使用することで、より良い支援に繋げていけると考えています。
支援を目的とした包括的な用語
この使用法は、特定の個人に対して使用されているものではなく、多様なニーズのある人たちへの支援を目的として使われています。
例えば、発達特性を考慮した環境調整をしていくなど、広い意味で使用されています。
著者は、この使い方は、発達障害に関連する会議などでよく耳にすると感じています。
「発達障害」の言い換えとしての使い方
発達障害の診断が確定していない、あるいは、何らかの理由で障害という言葉を回避したい場合に使われています。
著書の中では、この使用法は意味が曖昧になりやすいことが懸念点としてあると述べています。そのため、使用においては注意が必要になると言えます。
著者の経験談
著者が一般的に「発達特性」といった言葉を使用する際に、以下のような使い方をしています。
自閉スペクトラム症:ASDの場合➢ASDの特性
場の空気を読むことが苦手、相手の意図の理解が苦手、一方的な会話が多い、こだわりがみられるなど
注意欠如多動症:ADHDの場合➢ADHDの特性
落ち着きがない、順番やルールを守るのが苦手、計画を立てて物事に取り組むのが苦手、相手が話している時に話を遮って話を始めることが多いなど
学習障害:LDの場合➢LDの特性
全般的な知的に遅れはないが、読むのが苦手、書くのが苦手、計算が苦手など
発達性協調運動障害:DCDの場合➢DCDの特性
走ることや球技などが苦手、スキップができない、ハサミや箸など道具の使用が難しいなど
以上の「発達特性」の使い方は、著者が発達障害の診断を受けた人、あるいはその疑いが濃い人と関わることが多いため、こうした使い方をしていると考えます。
また、「発達特性」から生じる困り感を軽減していくための支援を目指していることも大きな要因だと感じます。
最近では、診断を受けていない場合には、disorderの頭文字のDを除いて、AS、ADHなどと表現されるようになってきています。
つまり、「発達特性」が合っても、環境が本人に合っている、配慮のある環境でうまくやれていれば、即、「障害」に直結するものではないといった「特性+環境」の視点がとても大切だと言えます。
さらに、上記のそれぞれの「発達特性」は、併存する場合もあるため、一つだけはっきりと見れるケースもあれば、ある特性が強く、他の特性が弱くみられるなど、様々パターンがあります。詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「【発達障害の重複(併存)とは?】ASD・ADHD・知的障害などの違いと支援を総合解説」。
ここで、書いたものは社会の中でネガティブに働くものを中心に書きましたが、「発達特性」は、時にはポジティブに働くこともあります。
例えば、自閉症の場合だと、一つの物事に非常に長く集中する能力があったり、ADHDの場合だと、行動力があり、様々なことに挑戦する人たちも多くいます。詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「発達障害の特性を「選好性」という視点から考える」。
また、適切な理解と支援、そして、配慮を受けることで、特性の問題が軽減したり、改善することもあります。
以上、【発達特性とは何か】定義・使用の仕方について発達障害児・者支援の経験を踏まえて考えるについて見てきました。
現場に限らず著者の周りでも、「○○特性のある人」という言葉は、以前よりも少しずつ耳にすることが増えてきました。
その背景には、診断はついていないが特性からくる困り感がある人、知的に遅れはないが社会の中で困り感がある人たちが増えてきたためだと考えます。また、社会環境や労働環境などの変化もあると思います。
著者の周りには、普通学級にいながらも特性上の困り感が見られる人、一般の会社に勤めていながらも特性上うまくいかない人など、様々なケースを実際に見たり、耳にすることが増えてきました。
こうした人と会うと、「まさかこの人が!」と感じるほどしっかりしていたり、優秀だったりもします(逆にその力を発揮している人もいます)。
だからこそ、気づかれにくい、生きにくい、そして、本人の努力不足の問題だと言われてしまうことがあるのだと思います。
私自身、今後、こうした発達特性への理解を現場の体験なども踏めてより深く理解していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
発達障害に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】発達障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
松浦有佑(2026)発達障害を正しく知る.幻冬舎新書.


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