療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと思います。
さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なるかと思います。
そこで今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を長期の視点から以下に事例を簡単に紹介したいと思います。
今回の事例を取り上げるにあたり、参考になると思われる記事を次に記載(「愛着に問題のある子どもの行動特徴について現場から考える」、「発達障害の二次障害について:ADHDを例に考える」「愛着について:発達支援の現場からその重要性を考える」)しますので、興味のある方はぜひ参照していただければと思います。
療育の成果について-肯定的な言葉かけの重要さ-
A君の事例→肯定的な態度・声掛けにより情緒が安定してきた例
小学校5年生のA君は、とにかく否定語に弱いお子さんです。
「○○はだめ!」、「○○はいけません!」、「○○しません!」などの否定語に強く反応するお子さんです。
しかし、A君の行動は、大人を挑発するもの、他児とすぐにトラブルを起こす言動などが多いため、否定語を使わざる負えないことが多くありました。
A君の負の言動・行動→大人が注意する(つまり否定語を使う)→A君が余計イライラしていくという負のスパイラルにハマるという流れです。
もちろん、危険行為(他害など)は体を張って止めることが大切です。
我々スタッフは、こうしたA君に対していくつかの戦略をもって対応しています。
①トラブルが起きない環境を作る
まずは、環境設定です。これは、これまでのA君との関わりから事前に予測されるトラブルをできるだけ回避するように環境を調整することです。
もちろん、トラブルから得られる学びもあるかと思いますし、予測できないトラブルもありますが、事前に予測し対応しておくことは非常に重要です。
例えば、トラブルになりそうな他児との環境を可能か限り分けること、活動のルールなどは事前に伝えておくなどの対応をしています。
また、A君が好きな遊びや話題などポジティブな情報を伝え、注意をそらすということも効果的だと思います。まさに、働きかける大人が環境になるわけです。
②否定語→提案などを多く使用する
「○○しません!」→「○○しよう!」といったように提案をしていくことが重要になります。
もちろん、反抗的な状態の場合にはすぐに聞き入れることが難しいと思いますが、少しずつ関係ができてくると聞き入れてくれることが多くなるといったことも言えるかと思います。
③正の行動に対するフィードバック
これはとても重要です。行動と結果を結びつけるために直ぐに褒めるということが重要です。また、発達年齢にもよりますが、思春期前には少し大げさに褒めて良いかと思います。
また、正の行動ではなくても、A君なりによく考えたところ・気づきや疑問などもよく褒めたり、一緒に考えていくようにようにしています。
例えば、「○○の言うことは○○の理由から信用できない・納得できない」→「そんな深く考えていたんだね!」、「その視点は気づかなかった」、「それじゃあ、どうした方がいいかな?」といった感じです。
④上記の①から③を他のスタッフと連携しながら行う
こうした子どもたちへ関わるスタッフは精神的に疲弊することがよくあります。
そのため、関わり手の大人のケアもとても重要だと思います。
1人のスタッフに対応が集中しないように、また、集中したとしても周囲がねぎらうなどの行動を起こすことで少しずつチームとしての支援は進むかと思います。
こうした対応を長年受けたA君はもちろん気持ちの波は多くありますが、少しずつ大人に対して信頼を見せるようになりました。
情緒の安定には安全基地となる大人との関係性がとても重要です。
関係性の構築は年齢的にできるだけ早い方が良いと言われています。もちろん、何歳になっても遅いということはないかと思いますが、後になればなるほど時間がかかります。
私自身、子どもたち負の行動に否定語を反射的に使ってしまうこともありますが、A君との関わりなどから、できるだけ肯定的な態度や声掛けが長期的にみるととても大切であると学びました。
まだまだ未熟ですが、今後もより良い支援ができるように日々の実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。