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【発達障害児・者支援で大切なこと】学力よりも生活スキルを身につける重要性について

投稿日:2022年4月21日 更新日:

 

療育の目的は、社会の中で生きていく力を育むために、発達特性のあるお子さん、知的障害があり全体的に発達がゆっくりであるお子さんなどに対して、配慮や支援を行うことでもあります。

 

関連記事:「療育の目的を考えることの大切さ

 

療育現場では基本的な生活習慣や生活スキルの向上も大切な支援のポイントになります。一方で、学校の勉強など学力も大切です。

 

それでは、社会の中で生きていくためには、社会に適応していくためには、学力は必要なのでしょうか?

 

そこで、今回は、社会に適応するためには、学力よりも生活スキルが重要であることを、著者の体験からくる気づきも踏まえてお伝えします。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は、「本田秀夫(2021)子どもの発達障害:子育てで大切なこと、やってはいけないこと.SB新書.」です。

 

 

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【発達障害児・者支援で大切なこと】学力よりも生活スキルを身につける重要性

以下に著書を引用します。

学力の高さと社会適応のよさは一致しないこともあります。学力と社会で生きていく力は、分けて考えましょう。子どもが社会適応で苦労しないようにするためには、生活スキルを磨いていくことが重要です。また、学力と同じように、知的能力の高さも、社会適応のよさに必ずしも直結するものではありません。その2つもわけて考えていくようにしましょう。

 

著書の中で取り上げている「生活スキル」には以下のようなものがあります。

身だしなみ、食事、家事の手伝い、片づけ、忘れ物(持ち物の管理)、約束(予定の管理)、おこづかい(お金の管理)、寝不足(健康の管理)、マナーなど様々あります。

 

著書の中では、こうした「生活スキル」への場面別の対応方法などが記載されています。

著書の中では、社会でうまくやっていくためには、生活スキルを磨くことの重要性を協調しています。

そして、学力や知的能力の高さは、必ずしも、社会適応に直結しないと述べています。

日本社会の中では、学歴志向がいまだに強い傾向があります。そのため、療育現場に長年携わっている著者の周囲にも学歴を非常に重んじる方がおります。

学歴に重きを置くということは、当然、学力に対して非常に価値をおくということになります。

もちろん、学力は大切ですが、発達障害のある方の中には、学力に重きをおいたために身のまわりのことが一人できない人もいます。

例えば、成人の方であれば、金銭管理、整理整頓、予定の管理など日々の生活に関わる内容です。

もちろん、こうした身のまわりのことの得意・不得意などの個人差はあって当然かと思いますが、問題となるのは、学力を重んじ勉強に力を入れすぎた結果、本来はできる能力があった生活スキルが身に付いていないことだと思います。

こうしたケースの方が、社会の中でうまくやっていくことが難しいように思います。

 

 


それでは、次に、著者が学力よりも生活スキルが大切だと実感した体験談をお伝えします。

 

著者の体験からの気づき

著者の周囲には成人の発達障害の方も多くおります。

こうした人たちの話を聞いて驚くのは、学歴や学力が高いにも関わらず、生活スキルが低いために、社会の中でうまくいかないケースです。

こうしたケースで多いと感じるのは、学歴や学力を上げることに重きをおきすぎたために、身の周りのことを周囲の誰かがやってしまうことで、生活スキルがなかなか向上しないことです。

そして、学力を上げることが社会で生きていくために非常に重要だと一極集中してしまうことです。

私が関わったことがある方では、片付けが非常に苦手で、周囲が手伝わないとゴミ屋敷になってしまいかねない方や、約束が守れず(本人は悪気はないが)必ず約束の時間を大幅に遅れてやってくる方、ルールやマナーがよくわからず衝動的な発言や行動や自分流のやり方をしてしまう方など様々な方がおります。

こうした方の中には、学歴や学力なら非常に高い方もおります。

しかし、社会の中で人とうまくやっていく力を見たときに生活スキルの不足から生じる、うまくいかなさを抱えている印象があります。

学力が高いがゆえに、周囲からはできる人と見られる傾向もあり、実際に社会の中でのうまくいかなさとのギャップに苦しむことにもなりかねません。

こうした成人の方を見て実感するのは、生活スキルの重要性です。

もちろん、自ら主体的に何かを学ぼうとする姿勢やその過程で身に付いた学力にはとても価値があると思います。

療育で大切なのは、生活スキルを身に着けることができるようにサポートしていくこと、そして、周囲や社会の評価にもとづく学力ではなく、自ら学びたいことを発見し主体的に学ぶことで身についた学力だと思います。

 

今後も、日々の実践を通して、療育の大切さを実感できるような取り組みを心掛けていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

本田秀夫(2021)子どもの発達障害:子育てで大切なこと、やってはいけないこと.SB新書.

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