感覚運動期とは、感覚と運動から外の世界を理解していく時期であり、子どもは言葉を話す前の段階には、見る、聞く、触る、匂いを嗅ぐ、舐めるなどして外の世界への認識を広げていきます。
障害のある子どもたちは定型発達児と比べると、こうした時期が長く続く子も多く見られます。そのため、感覚運動期への深い理解が子どもたちの理解に繋がってくるかと思います。
私たち大人はこうした時期の記憶がほとんどないと思いますし、大人になるにつれて視覚や聴覚が有意になるため、原初的な感覚を認識する機会が少なくなると思います。
今回は、発語前の感覚運動期の時期を取り上げ、実際の療育現場でどのような関わりが必要であったのかを遊びを中心にお伝えしていこうと思います。
今回参照する資料は「立松英子(2009)発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.」です。
感覚運動期について
感覚運動期の子どもは、目の前にあることが世界の全てです。そのため、手を出す、なめるといった行為を行いながら、全身の感覚を使って外の世界を学ぼうとします。
この時期に大切なことは、「こうしたらこうなる」➢「行為と結果の因果関係の理解」です。例えば、「ボールをもって離したら床に落ちて音がした」というようにボールをもって離すという行為が、床に落ちて音がしたという結果になり、こうした関係を学習する時期になります。
こうして自分の行為とその結果とが結びつくことで(繰り返しの経験から)、自分の外の世界との関係を予測することができるようになります。これを、「表象機能」と呼びます。
この時期には、子どもたちが感覚と運動を使って、行為の結果を学習していくことが後の発達において大切になります。
著者のコメント
私がいた療育現場では、重度の子どもたちも多くいたため、様々な感触遊びや運動遊びを行ったりしていました。ご家庭ではなかなか実行するのが難しいかと思いますので、環境が整備された施設などでの経験がとても重要だと思います。
遊びの中でも、行為と結果が予測できる遊びで色々と工夫したものに「的当てゲーム」があります(詳しくは、発達支援(遊び編):「的当てゲーム」をご覧ください
)。
これは当てる的の工夫や的に当てるボールなどの工夫、使える動作(離す、転がす、投げる、蹴るなど)のアセスメントなどがポイントになってくるもので、非常に奥が深い遊びです。行為と結果がわかりやすいため、ハマると繰り返して遊べると思います。
また、障害のある子どもたちはある程度年齢がいっても、感触遊びなどを好んでやることが多いため、それぞれの発達段階や興味の方向などを見据えて関わり方を考えていくといいかと思います(遊びに関しての具体例は、発達支援(遊び編)を参照して頂ける良いかと思います
)。
大切なことは、年齢で見ることより、その子の発達段階を見ることです。そして、感覚や運動をたくさん使って興味のある遊びをたくさん行うことです。興味の内容はケースバイケースかと思いますが、色々と体験させることで、興味がわいてきたという事例もたくさんあります。
今後もより良い発達理解と発達支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
文献
立松英子(2009)発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.