愛着障害には、ICD-10やDSM-5等の精神医学界の診断基準で指摘されている2つのタイプがあります。
2つのタイプとは、〝脱抑制対人交流障害”と〝反応性愛着障害”です。
臨床発達心理士・学校心理士である米澤好史氏は、さらに、もう1つのタイプを加えた3つのタイプがあることを提唱しています。
それでは、愛着障害の3つのタイプとは一体どのような特徴があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、愛着障害の3つのタイプについて、それぞれどういった特徴があるのかについてお伝えしていこうと思います。
今回参照する資料として「米澤好史(2020)事例でわかる!愛着障害 現場で活かせる理論と支援を.ほんの森出版.」を取り上げていきたいと思います。
愛着障害の3つのタイプについて
冒頭で見た医学的診断にある愛着障害は①と②になります。
米澤好史氏はこれに③を加えています。
以下、それぞれの特徴を簡単に見ていきます。
①「脱抑制タイプ」(脱抑制対人交流障害)
誰に対しても無警戒で、フレンドリーで馴れ馴れしく、過剰な身体接触を特徴とします。不適切な行動をした場合は、それを叱ると、叱られてもかまってもらえたと思い、その不適切な行動がさらに増えます。
②「抑制タイプ」(反応性愛着障害)
人間不信で、誰に対しても警戒し、かかわろうとせず、人が近寄っていくると避けようとします。不適切な行動をした場合、それを叱ると、以後、人間関係が長期にわたって一度遮断されることがあります。
③「ASDと愛着障害併存タイプ」
このタイプは実際の診断にはありませんし、現在の精神医学界の診断基準では、ASDと愛着障害の併存診断は認められていません。
米澤好史氏は、著書の中で、この③のタイプが明らかに存在すると考えていおり、以下の2つのタイプに分類しています。
③‐1:「フラッシュバック的」「執拗な」「パニック的」攻撃パターン
このパターンでは、あることがきっかけとなり、突然ネガティブな感情が蘇ってくるフラッシュバックから始まります。感情が原因ですので、表情の変化が多く見られます。次に、執拗さが見られます。執拗さとは、特定の対象(人やモノ)ばかり攻撃したり、暴言や暴力等の特定の行動が繰り返し生じ、なかなか止まらないのが特徴です。行動を制止しようとすると、パニック的な大暴れが生じます。攻撃行動を正面から制止・制圧しようとしないで、逸らすような対応をすれば比較的早く収まります。
③‐2:「固まる(一時的シャットアウト)」パターン
このパターンでは、一時的にコンタクトを一切拒否してシャットアウトします。②の「抑制タイプ」が人間関係を遮断、シャットアウトを長くするのに比べて、このパターンのシャットアウトは一時的(30分~数時間)なのが特徴です。一時的に居場所感の危機回避をしていますので、そのままそってしておくことが大切です。
愛着障害をスペクトラム障害と捉えると、③のタイプの攻撃性やシャットアウトの問題の現れ方は、それぞれの特性の程度の強さのかけ算の答え(「自閉の程度」×「愛着の問題の程度」)と等しいという法則を見つけることができます。
2つを併せ持つタイプを意識し、まずは愛着の問題からアプローチすれば、必ず劇的に愛着修復でき、行動の問題が激減すると考えられています。
以上、愛着障害の3つのタイプについて説明してきました。
愛着障害にも様々なタイプがありますので、それぞれの特徴をおさえながら、支援内容を考えていくことが重要であると言えます。
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