発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

太田ステージ 療育

子どもが概念を理解する時期について太田ステージから考える

投稿日:2020年8月6日 更新日:

私たちは普段の生活で概念という言葉を聞いたり使ったりすることがあるかと思いますが、そもそも概念をどのように獲得してきたのかを思い出すことは難しいかと思います。

心理学では概念の獲得(理解)を「概念形成」といいます。子どもは概念を獲得(理解)していくことで外の世界の理解をさらに広げていきます。

 

今回は、子どもが概念を理解する時期について太田ステージを参考に説明していきながら、著者が療育現場で概念形成の意味を感じた体験なども併せてお伝えしていきます。

 

 

今回参照する資料は「立松英子(2009)発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.」「立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ 子どもに学ぶ行動の理由.ジアース教育新社.」です。

 

 

スポンサーリンク

概念形成とは

そもそも「概念形成」とは?

という所からですが、私たちは外の世界を理解するときに様々な基準をもって理解しています。

例えば、色、形、大きさなどその物の特徴を表す要素が複数ある場合、ある要素や基準に応じて分類分けを自然と行っています。

つまり、「概念形成」とは基準に合わせて仲間分けをすること、さらに、それに言葉をつけて仲間を作ることです。

例えば、「赤い傘」という仲間を作ることは概念形成がされた人にとっては仲間分けが可能ということです。

 

 

概念形成について太田ステージから考える

こうした「概念形成」の入り口でもある時期は、太田ステージでいう所のStageⅢ‐2(概念形成の芽生え)になります(太田ステージについて詳しくは「太田ステージから障害児の発達を考える」に記載しています)。

ちなみに、StageⅢ‐2は、定型児の発達でいう3~4歳のはじめに相当します。

StageⅢ‐2(概念形成の芽生え)は、言葉とイメージの世界といわれており、言葉とイメージ(想像力)によって、環境に合わせて考えることが可能になってくる時期になります。

StageⅢ‐1は「見てわかる世界」でしたが、StageⅢ‐2以降では目の前になくてもわかる「言葉とイメージの世界」に移行します。

言葉とイメージを操作することで、基準を変えて思考や行動ができるようになります。ただ、この時期に入ったばかりだと、まだまだ以前の習慣による行動が多いため、柔軟に状況に応じて考えや行動を変えることはまだ難しいとされています。

 

 

著者のコメント

私の療育現場で概念形成について、その理解が進んだと感じるケースもあります。その気づきは思考が柔軟になったという印象からきました。

以前そのお子さんは、自分が想定していたことが起きると、ぐずり始め、場合によってはパニックになることもありました。ですが、徐々に、変更にも慣れ、想定外ことが起こっても大人が声をかけると理解できる様子が増えてきました。また、自分から“○○する”と状況に応じて考えや行動を自発的に変える様子も出てきました。

遊びにも変化がありました。イメージを形にする制作遊びのバリエーションが増え、以前と比べて大人が手伝う場面が減ったこと、自分で考えて作れるようになったなど、遊びの中でも認知の発達が進んだ様子をはっきりと感じることができました。

また、遊びの中で印象的だった事が、その子の言葉にも見られます。それは、“これは大きいやつ”、“これは赤いやつ”などカテゴリー分けする言葉が行為に伴って見られたことです。私はその時とっさいに「概念」のことを想起しました!

このように、言葉やイメージの世界が広がると、思考や行動が柔軟になり様々な環境や状況に合わせる力がついてくるのだと実感します。

 

 


私自身、今後も子どもたちの成長をじっくりと支えながら、その成長の意味を捉えられる目を養っていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

立松英子(2009)発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.

立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ 子どもに学ぶ行動の理由.ジアース教育新社.

 

スポンサーリンク

-太田ステージ, 療育

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

関係を通した理解には「感性」が重要-療育経験を通して考える-

療育現場で様々な子どもたちと関わっていると、子どもたちの様々な思いや、悩み、困り感などを強く感じる場面があります。   それでは、こうした子どもとの関係を通して、様々な思いや状態を理解するに …

【療育の成果を感じにくい時の改善方法】〝抜け感″をもった関わり方

著者は長年、療育(発達支援)現場で、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの支援をしています。 現場での支援の継続により、成果が出ていると実感することがある一方で、成果を感じにくいなど行き詰まりを感 …

療育で大切なこと【放課後等デイサービスでの実践から考える】

臨床発達心理士である著者は、長年にわたり、療育現場に関わってきています。 療育現場には、発達に躓きのある子どもたちが通所してきており、特別な支援や配慮を必要としています。 子どもたち一人ひとりの状態像 …

発達支援(遊び編):「ダンス遊び」

私がいた療育施設では多くの遊びを行っていました。日々遊びをしていくなかで徐々に遊びのレパートリーが増えていきます。 その中には、体を使った遊び、感触遊び、製作遊び、ルールのある遊びなど、ジャンルを分け …

療育の重要性について-二次障害の予防から考える-

療育(発達支援)には、主に治療と教育といった側面があります。 そして、障害など発達に躓きのある子どもたちへの理解と支援を行うことで自立や社会参加を目指すものとされています。   関連記事:「 …