〝認知処理スタイル″とは、外界からの情報を取り入れ、その情報を整理し出力するまでの一連の過程の仕方のことを言います。
認知処理スタイルといった〝情報処理過程″を大きく分けると、継次処理と同時処理の二つのスタイル(仕方)があります。
継次処理と同時処理の測定には、認知検査のK-ABCやDN-CASなどがあります。
それでは、継次処理と同時処理といった情報処理過程には、どのような理論が背景となっているのでしょうか?
そこで、今回は、継次処理と同時処理の情報処理過程の背景となっているPASS理論についての理解と、PASS理論を通して理論の持つ重要性について考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「J.R.カービィ・N.H.ウィリアムス(著)田中道治・前川久男・前田豊(編訳)(2011)学習の問題への認知的アプローチ PASS理論による学習のメカニズムの理解.北大路書房.」です。
継次処理と同時処理について
冒頭で述べて通り、認知処理スタイルといった人間の情報処理過程には、継次処理と同時処理があります。
継次処理と同時処理の特徴や違いについては、以下の関連記事を参照頂ければと思います。
関連記事:「【継次処理と同時処理とは何か?その違いは?】認知処理スタイルについて考える」
それでは、次に、認知処理スタイルといった情報処理過程の背景となっているPASS理論について説明していきます。
PASS理論について
PASS理論は、〝ルリア″という人物が脳損傷患者の臨床研究から構築された理論です。
以下、著書を引用しながら見ていきます。
PASS理論では、認知とは、3つの異なってはいるが機能的に相互依存する神経学的システムの結果であるとされる(中略)。そのシステムとは、①脳幹と下皮層に位置し、注意力や皮質の調子を維持することを司る<注意/覚醒システム>、②後部(後頭、頭頂葉、側頭)皮質に位置し、情報の入力と保存、変換を司る<処理システム>(システムが扱う2つの処理は<同時処理>および<継次処理>とよばれる)、そして③前頭皮質に位置し、処理の組織化やモニタリングを司る<プランニングシステム>である
著書の内容から、PASS理論は、人間の情報処理過程を3つの要素(①注意/覚醒、②継次処理と同時処理、③プランニング)から説明したものとなっています。
そして、これらの3つの関係は独立したものではなく、互いに相互依存しているとされています。
このように、認知処理スタイルである、継次処理と同時処理は、PASS理論である情報処理過程の中の一部に位置付けられていることがわかります。
PASS理論を通して理論の持つ重要性について考える
ここで著者が大切だと考えていることは、継次処理と同時処理にしても、実行機能やプランニング、ワーキングメモリ、メタ認知、対人的知能にしても、どういった理論的背景が基盤となっているのかを理解していくことです。
例えば、様々な心理アセスメントがありますが、アセスメントの結果から何がわかるのか?この検査はそもそも何を測っているのか?この検査の限界は?という理解にも関わってきます。
根底となる理論を抑えていくことで、例えば、検査結果を拡大解釈することなく、適切な理解に繋げていくことができます。
理論は一見すると、我々が人を理解する文脈とかけ離れていると感じることもありますが、根底を支える基盤となっているため理解していくことも必要です。
関連記事:「発達障害のアセスメントで大切なこと【ウェクスラー式知能検査で測れないものとは?】」
以上、【PASS理論とは?】継次処理と同時処理の認知処理スタイルについて考えるついて見てきました。
今回は、PASS理論を通して、継次処理と同時処理の背景となっている理論を理解していきながら、理論の持つ重要性をお伝えしてきました。
現場にいると理論に触れる機会が少なくなるため、理論を学ぶ機会を意識的に作る必要があると感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も理論も踏まえながら、様々な情報を整理し、現場での実践に役立てていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
J.R.カービィ・N.H.ウィリアムス(著)田中道治・前川久男・前田豊(編訳)(2011)学習の問題への認知的アプローチ PASS理論による学習のメカニズムの理解.北大路書房.