ADHD(注意欠如多動性障害)とは、不注意、多動性、衝動性を主な特徴とした神経発達障害の一つです。
ADHDの理解というと以上の3つの特性についての説明が多く、中でも行動特徴との関連性の指摘が多く見受けられます。
例えば、忘れ物をよくする、整理整頓ができない、じっと席に座っていられない、ルールや順番が守れない、などです。
こうした行動特徴からの説明が多く見られる一方で、〝脳″からの理解もまた可能です。
ADHDの〝脳″を理解するためには、まずは、〝脳″にはどのような役割や成長の法則があるのか?という理解が必要です。
それでは、〝脳″にはどのようなタイプ(役割・働き)や成長の法則があるのでしょうか?
そこで、今回は、ADHDの〝脳″を理解するために、〝脳番地″のタイプと〝脳番地″の成長の法則から考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤俊徳(2020)ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”.大和出版.」です。
1.〝脳番地″にはどのようなタイプがあるのか?
著書の中では、「①感情系脳番地、②記憶系脳番地、③思考系脳番地、④理解系脳番地、⑤運動系脳番地、⑥聴覚系脳番地、⑦視覚系脳番地、⑧伝達系脳番地」の8つの〝脳番地″に分類しています。
2.〝脳番地″の成長の法則とは?
そして、ADHDの不注意、多動性、衝動性もまた、〝脳番地“と深く関連していると指摘しており、次の3つの〝脳番地の成長の法則″があると記載されています(以下、著書引用)。
①脳は、全体で変化するのではなく、脳番地ごとに成長・老化する
②よく使われて発達した脳番地は、強みになる=得意・好き・楽しいこと
③あまり使われず未熟な脳番地は、弱みになる=苦手・嫌い・面倒なこと
3.ADHDの〝脳″について考える
以上の、1.2、を踏まえて以下にADHDの〝脳″について考えていきたいと思います。
著書には〝脳番地″には8つのタイプがあるとしています。
つまり、大きく8つの機能があるということです。
8つの〝脳番地″とADHDとの関連性については、例えば、イライラ感や怒りのコントロールが難しい人は〝感情系脳番地″との関連、忘れ物が多い人は、〝記憶系脳番地″との関連、などがあります。
こられは、ADHDの〝弱み″という視点からの理解になります。
先ほど述べた、〝脳番地″の成長の法則に当てはめると、③のあまり使われていない脳番地は、弱みになる、という〝脳″からの解釈ができるかと思います。
この〝あまり使われていない″という内容は、脳の成熟の問題、環境要因(教育・養育など)や個人要因(得意な〝脳番地″に偏った情報処理をしている、鍛え方がわからない)などがあるかと思います。
一見すると、〝脳″は使えば使うほど、様々な脳の部分がネットワークとして全体が活性化する(機能する)という考えを持っている方もいるかもしれませんが、先の法則からすると、使ってない〝脳番地″は弱くなる、ということです。
逆に、よく使っている〝脳番地″は強化される、ということです。
ADHDの〝脳″は、定型発達の人の〝脳″と比べると、〝脳番地″の強み・弱みに偏りがあるということです。
著書では、〝脳番地別トレーニング″といった脳の〝弱み“を強化していく方法が40項目記載されています。
著者は〝脳番地″といった視点からの理解と改善方法は、他にあまり見たことがないため、参考になる点が多くあると感じています。
以上、【ADHDの〝脳″について】〝脳番地″のタイプと成長の法則から考えるについて見てきました。
著者は、改めて、発達障害など発達に躓きのある人たちは〝脳″という視点から見ても、〝偏り″〝凸凹“があるのだと考えさせられました。
そして、その〝偏り″〝凸凹″は決して悪いものではなく、発達特性などが影響している先天性の脳機能の特徴、そして、〝強み″と〝弱み″があること、さらに、〝弱み″も適切な方法で強化・改善する方法があるということを学ぶことができたように思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も〝脳″という視点からも発達理解と発達支援に役立つ知見を学び続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【ADHDの発見が遅れる理由】3つの要因から考える」
加藤俊徳(2020)ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”.大和出版.