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【自閉症の人たちがパニックに陥りやすい理由とは?】療育経験を通して考える

投稿日:2024年7月13日 更新日:

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。

著者は長年、療育現場で自閉症児をはじめとした様々な子どもたちと関わってきています。

その中でも、時折見られる対応が難しい行動として〝パニック″があります。

特に、自閉症の人たちは、〝パニック″に陥りやすいと言われています。

 

それでは、何故、自閉症の人たちはパニックに陥りやすいのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の人たちがパニックに陥りやすい理由について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。

 

 

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自閉症の人たちが〝パニック″に陥りやすい理由について

著書には自閉症の人たちが〝パニック″に陥りやすい理由について〝6つの内容″が記載されています。

どれも、自閉症の人が持つ〝障害特性″が影響していると考えられています。

 

 


それでは、次に、著書を引用しながら具体的に見ていきます。

 

(1)社会性の障害とパニック

決められたルールに沿えない、困った時に助けを求められない、人のアドバイスを受け入れられないので、周囲との間に軋轢や問題が生じる

1つ目が〝社会性の障害とパニック″です。

人は様々なルールがある中で社会生活を送ってます。

その中には、自閉症の人たちが苦手とする目には見えづらい〝暗黙のルール″などもあります。

自閉症の人たちは、〝社会性の障害″があるため、社会のルールにうまく順応・理解することに難しさがあります。

わかりづらいルールや過度なルールの強制により〝パニック″に陥ってしまったケースは著者の経験の中でも見られます。

そのため、個々に応じてわかりやすいルール(事前の合意形成も含め)を設けていく視点がとても大切だと感じています。

 

 

(2)コミュニケーションの障害とパニック

言いたくても言えない、「いやだ!」と言ったつもりでも相手に伝わっていない、相手の言う意味がよく分からないなどの〝行き違い″

2つ目が〝コミュニケーションの障害とパニック″です。

コミュニケーションによる困り感と先に見た社会性の問題はリンクすることがよくあります。

中でも、コミュニケーションの障害は、人と人との間で生じる問題にフォーカスされているため、自らの発信の問題、相手の意図や心情の理解にミスマッチが生じてパニックになるパターンです。

著者が見てきた自閉症の人にも、相手の真意をうまくくみ取れずに、誤った形で受け取ったことからパニックに陥ってしまったケースもあります。

ソーシャルスキルやソーシャルシンキング、心の理論の獲得が支援においては大切だと感じています。

 

 

(3)こだわり行動とパニック

彼らのこだわりを無理矢理に止めたり、変更させたりすると、先掲したような強いパニック状態に陥る

3つ目が〝こだわり行動とパニック″です。

自閉症の特徴には〝こだわり行動″といったある特定の対象への固執が見られます。

周囲から見ると、大したことのない・重要ではない行動として仮に見えたとしても、本人にとっては〝安心感″を得る・保持するための必要な行動である場合があります。

そのため、過度な制止や変更を促すと、パニックに陥ることは著者の療育現場でも見られる光景です。

そのため、〝こだわり行動″への理解と対応をしっかりと心掛けていく必要があると実感しています。

 

 

(4)感覚過敏とパニック

その刺激源を除去してあげるのではなく、彼らに我慢を強いると、ストレスフルになって、パニックに陥りやすくなります。

4つ目が〝感覚過敏とパニック″です。

感覚過敏″は自閉症児・者に非常に多く見られます。

例えば、子どもの泣き声、工事の音、香水の匂い、など特定の音や匂いなどに過敏さを持っているなどです。

こうした過敏さに対して、過度に我慢を強いるとパニックに陥ることがあります。

著者も子どもの泣き声でパニックに陥ってしまった子どもがいたため、その後は、その子にとってネガティブな刺激となっている不快な感覚刺激を除去するなどの環境調整の視点の大切さを身に沁みて実感することができました。

 

 

(5)強圧的な関わりとフラッシュバック

フラッシュバックによって、パニックも頻発するという「悪循環」が形成

5つ目が〝強圧的な関わりとフラッシュバック″です。

自閉症の人たちは、過去の不快な体験を明確に記憶していることがよくあります。

こうしたネガティブな体験が突如、フラッシュバックしてパニックに陥ることもあります。

著者もこうした事例は少なからず目にしてきています。

非常に対応に苦慮するケースですが、大切なことは、強圧的な関わりをせず、本人が日々を安全・安心して過ごすことのできる環境調整が大切だと感じています。

 

 

(6)かん違いとパニック

強圧的な関わりと抑圧的な環境に長く身を置くことで、ASDの人たちは、懐疑心や被害意識を強くします。

6つ目が〝かん違いとパニック″です。

著書のあるように、強圧的・抑圧的な関わり・環境に居続けることは、人への懐疑心や被害者意識を高めてしまいます。

そのため、仮に自分に向けられた発言ではなくても、自分に向けられた否定的な言動だと受け止めてしまい(勘違いして)パニックに陥ることもあります。

著者がこれまで見てきた子どもにも同様に、他者の言動を過度に否定的に受け止めて(勘違いして)、パニックに陥ったケースも見られます。

大切なことは、勘違いを修正してあげること、事前にトラブルに発展する場を回避する環境調整が必要だと感じています。

 

 


以上、【自閉症の人たちがパニックに陥りやすい理由とは?】療育経験を通して考えるについて見てきました。

今回見てきた通り、自閉症の人たちは、パニックに陥りやすい要因が複数あるのだと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の人への理解を深めていきながら、パニックが生じないような環境調整を心がけていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉症児のパニックの理解と対応について】療育経験を通して考える

 

 

白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.

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