発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

こだわり 自閉症

【自閉症の〝こだわり″の特徴について】精神安定のバロメーターの視点から考える

投稿日:2023年3月20日 更新日:

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の特徴の一つに〝こだわり″があります。

〝こだわり″とは、仕事にこだわりがある、趣味にこだわりがあるなど、ポジティブな面がある一方で、融通の利かなさなど、ネガティブな面もあります。

 

それでは、自閉症の〝こだわり″について、心理面との関連性などはあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の〝こだわり″の特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、精神安定のバロメーターの視点から理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「本田秀夫(2013)自閉症スペクトラム:10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体.SB新書.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

自閉症の〝こだわり″とは?

著書の中では、〝こだわり″について以下のように定義しています(以下、著書引用)。

筆者は自閉スペクトラムのこだわりを「自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという強い本能的志向」と定義している。

 

〝こだわり″の例として、非常に限定された興味関心があります。

よく○○博士など、電車や虫、道路標識、歴史など特定の領域において、大人顔負けの知識を有している場合があります。

また、決まった道順にこだわる、物の配置や片付け方が固定されている、時間に厳しく時刻通りに予定を立て行動する、などその人なりのやり方やペースの維持の方法がこだわりとして見られる場合もあります。

 

 


それでは、こうした〝こだわり″の特徴が強くなる・あるいは弱くなることはあるのでしょうか?

その一つの指標として、次に、精神安定のバロメーターの視点から見ていきます。

 

精神安定のバロメーターの視点から見た〝こだわり″について

以下、書著を引用します。

強い心理的ストレスに晒されていると、こだわりの対象が社会的に異常なものへと移ることや、こだわりの対象は異常でなくても、きわめて狭く、かつ程度が異常に強くなることがあります。

 

私は、いまのところ、こだわりをその人の精神的な安定度のバロメーターと見なすのが実用的だと考えています。

 

著書の内容から、社会的なストレスの影響を強く受けることにより、〝こだわり″は、その強度を増すことがあります。

そのため、〝こだわり″は精神安定のバロメーターと見なす視点が実用的であると記載されています。

 

 

著者の経験談

著者も〝こだわり″の特徴は関わる子どもたちの精神状態により、狭まったり、強くなったりするということが経験側から納得できることがあります。

ここでは、自閉スペクトラム症の特性のある小学生男子のA君を例に見ていきます。

A君は、時間への〝こだわり″が強いお子さんです。

A君の中で、当初予定していた時間に○○する、という〝こだわり″が様々な場面で見られます。

例えば、決まった時間に帰りの送迎が出発しないとイライラ感が強くなるなどがあります。

特にA君の情緒が不安定な場合には、イライラ感を翌日以降にも持ち越すことが多くなります。

一方で、時間への〝こだわり″が緩いと感じることもあります。

その背景として、学校や家庭、そして事業所で安心して活動ができている時が上げられます。

A君の精神状態が安定している場合だと、時間への〝こだわり″はそれほど目立たない印象があります。

 

このように、〝こだわり″は、精神安定のバロメーターとしての特徴からも説明できる部分があるように思います。

 

 


以上、【自閉症の〝こだわり″の特徴について】精神安定のバロメーターの視点から考えるについて見てきました。

自閉症の〝こだわり″は生涯にわたりその対象を変えながら残り続けるものだと考えられています。

一方で、〝こだわり″をうまく活用することで、〝こだわり″の力を仕事に活かせるようになった、あるいは趣味の世界が広がったなど、様々な利点もあると思います。

大切なことは、もともと持っている特性といった視点から理解を深め、個々に応じた配慮をしていくことだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場を通して、子どもたちの〝こだわり″への理解を深め、より良い実践に向けて日々取り組んでいきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「自閉症のこだわり-こだわりの強さとその対象について考える-

 

本田秀夫(2013)自閉症スペクトラム:10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体.SB新書.

スポンサーリンク

-こだわり, 自閉症

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【自閉症の特徴を説明する5つの仮説とは何か?】自閉症理解のために必要な知識について考える

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。 自閉症には様々な行動面や心理面の特徴があると考えられています。   …

【自閉症児の人間関係の育て方における注意点】療育経験を通して考える

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。 著者は長年、療育現場で未就学児から小学生を対象に療育をしてきています。 …

自閉症児との愛着形成は可能か【定型児との違いはあるのか?】

愛着とは特定の養育者との情緒的な絆のことをいいます。 愛着形成で重要な時期は生後から3歳から5歳にかけてだと言われています。 また、視覚・聴覚障害、肢体不自由、ダウン症などの障害児においても愛着形成は …

【自閉症の進路で大切なこと】〝自己選択″と〝自己決定″を通して考える

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。 自閉症児への支援で大切なことの一つに、〝将来を見据えた支援″があります …

自閉症の実行機能について:実行機能の3つの要素と療育での困難事例を通して考える

自閉症を理解する上で、様々な視点があります。 その中には、相手の意図や信念を理解する能力の「心の理論」の困難さや、全体よりも細部にこだわる「弱い中枢性統合」や、感覚の過敏さ・鈍感さなどがあります。 さ …