自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の特徴の一つに〝こだわり″があります。
〝こだわり″とは、興味関心が限定されている、自分のやり方やペースの維持を優先するといった特徴があります。
それでは、自閉症に見られる〝こだわり″には大きくどのような特徴があるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症に見られる〝こだわり″の特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、3つの特徴から考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岡田尊司(2022)発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法.SB新書.」です。
自閉症に見られる〝こだわり″の特徴について
著書の中では、〝こだわり症(執着症)″には以下の3つの症状があると記載されています(以下、著書引用)。
1 常同行動 2 特定の行動・思考のパターンへのこだわり 3 特定の対象への強い執着
それでは、1~3について具体的に見ていきます。
1 常同行動
以下、著書を引用します。
文字通り同じパターンの運動や所作を繰り返し行うものだ。
著書の内容では、〝常同行動″とは、同じ動作を繰り返し行うものであり、例えば、コマのようにくるくる回る、ぴょんぴょん飛ぶ、手をひらひらと動かす、同じ叫び声を上げるなどの記載があります。
著者もこうした〝常同行動″は自閉症のお子さんによく見られると感じています。
中でも、ASD特性の強いお子さんに多く見られる印象があります。
以下、引き続き著書を引用します。
軽症な人にも見られやすい症状として、部屋をぐるぐる歩き回ったり、繰り返し指を鳴らしたり、鉛筆を指で回す行為を繰り返したり、椅子を揺らしたりといったものがある。
著書の内容から、軽症の場合にも上記の〝常同行動″が見られるとしています。
著者の身近にも、ASD特性が若干ある(〝こだわり″が軽度ながらある)と感じる人たちの中には、どこか動きに特徴のある、反復行動とも思われる動きをしていると感じることがあります。
こうして見ると、ASD(自閉症スペクトラム障害)とは、スペクトラムであるため動きの特徴も地続きで、同じ反復的な動作が内容は異なっていてもあるのだと感じます。
2 特定の行動・思考のパターンへのこだわり
以下、著書を引用します。
単なる行動パターンにとどまらず、柔軟性を欠いた、同じ考えや視点、融通が利かない思考にとらわれることも含む。
著書の内容では、〝特定の行動・思考のパターンへのこだわり″として、例えば、ルールを頑なに守ろうとすること、自分の考えを修正できない、生活パターンが決まっているなどがあります。
先ほど述べた、〝常同行動″が動作の繰り返しであるのに対して、さらに複雑な〝こだわり″だと言えます。
著者の周囲にも、こうした〝こだわり″を持つ人たちはおりますが、全てがマイナスに働くわけではなく、仕事や生活上、ポジティブに働くこともあると思います。
例えば、日々のルーティン化された取り組みが自分の能力を高めるものであれば仕事上、着実に力をつけていくことができます(もちろん、仕事内容にもよります)。
また、周囲に流されずに自分の考えを貫き通すなど、意志の強さに繋がることもあるかと思います。
一方で、こうした思考や行動が行き過ぎると周囲とうまくかみ合わない、周囲に迷惑をかけてしまう、周囲のサポートが必要な面が強くなると思います。
3 特定の対象への強い執着
以下、著書を引用します。
このタイプのこだわりは、同じことを繰り返そうとするのとは違い、「細部へのこだわり」とか「限定された領域への強い関心」と呼ばれる。
著書の内容から、〝特定の対象への強い執着″とは、細部や限定された領域への関心・こだわりだと言えます。
例えば、昆虫博士、車博士、歴史博士など、○○博士などと呼ばれる自閉症の人たちが該当します。
こうした人たちは、非常に興味・関心が限定的であるといった特徴があります。
著者が療育現場で関わる子どもたちの中には、こうした特徴のあるお子さんたちが多くいます。
様々なことに興味・関心を持ちにくいということは一見するとネガティブな印象を受けるかもしれませんが、ある領域について突出した能力を発揮する可能性があるのも事実です。
療育現場では、興味・関心に没頭し、その力を着実に伸ばしていきながら、活き活きと活動されているケースも多くあります。
以上、【自閉症に見られる〝こだわり″の特徴について】3つの特徴から考えるについて見てきました。
こうして見ると、〝こだわり″にも様々な内容や強度の違いがあることが少しずつ分かってきます。
そして、〝こだわり″は必ずしも人生のおいてマイナスな影響があるというわけではなく、その人が生きていくために必要不可欠なものであったり、能力を発揮できる原動力になるものでもあります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の〝こだわり″を通して、〝こだわり″から見えてくる人への理解をさらに深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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岡田尊司(2022)発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法.SB新書.