人間の認知処理スタイルには人それぞれ得意・不得意さがある場合があります。
認知処理スタイルとは、外界からの情報を取り入れ、その情報を整理し出力するまでの一連の過程の仕方のことを言います。
認知処理スタイルを大きく分けると、継次処理と同時処理の二つのスタイル(仕方)があります。
関連記事:「【継次処理と同時処理とは何か?その違いは?】認知処理スタイルについて考える」
それでは、継次処理と同時処理それぞれの得意な点を踏まえた指導方法・学習方法はあるのでしょうか?
そこで、今回は、継次処理と同時処理の指導・学習の違いについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、それぞれに合ったより良い指導方法・学習方法について考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「藤田和弘(2019)「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ.図書文化.」です。
【継次処理と同時処理の指導・学習の違いについて】より良い指導方法・学習方法とは?
それでは、継次処理と同時処理の違いを踏まえ、それぞれに合った指導方法について見ていきます(以下、著書引用)。
継次処理的指導方法
①段階的な教え方、部分から全体へという方向性を踏まえた教え方、順序性を踏まえた教え方が基本。
②聴覚的・言語的手がかりを重視したり、時間的・分析的要因を考慮するなどして、それらを適切に活用する。
同時処理的指導方法
①全体を踏まえた教え方、全体から部分へという方向性を踏まえた教え方、関連性を踏まえた教え方が基本。
②視覚的・運動的手がかりを重視したり、空間的・統合的要因を考慮するなどし、それらを適切に活用する。
以上、著書の内容から、ポイントとなる指導方法の違いが見えてきます。
継次処理→部分から全体へ、順序性の重視、聴覚的・言語的手がかりの活用などが効果的
同時処理→全体から部分へ、関連性の重視、視覚的・運動的手がかりの活用などが効果的
こうして見ると、逆の指導方法を活用しているということが見えてきます。
それでは、次に、以上の内容を踏まえ、著者の経験談から認知処理スタイルを考慮した学習方法の具体例を見ていきます。
著者の経験談
ここでは、同時処理が優位である(と考えられる)著者の学習方法について見ていきます。
著者は、学校の勉強を苦手としていました。
特に苦手なものが文章の読解です。
学校の勉強というと、例えば、教科書を使用し、ひと段落ずつ(区切りの良い所まで)みんなで読み進め、その内容を先生が説明していくということが、特に国語や社会などで多かったことを思い出します。
こうした断片(部分)を読み進め、その内容を先生が説明していきながら、全体の理解へとたどり着くという指導方法が多かったと思いますが、これこそまさに〝継次処理″的な指導方法だと思います。
著者は、こうした〝継次処理″的な学習方法ではうまくいかなかった経験から、まずは本を読むときなど、細かい所は気にせず全体をつかむということに意識を向けるようにしました(大学に入ってからですが)。
時には、全体の内容を解説したものを見るなど、ひとまずこの文章には○○のようなことが書いてある、といった全体像をつかんだ後に、部分への理解をしていったことで、理解度が非常に高まったと感じています。
また、理解の手助けは、動画や写真など視覚的なものがあった方がさらに分かりやすかったという実感もありました。
著者自身の経験談からも、人には学習しやすい方法(認知処理スタイル)があるのだと感じています。
こうした経験から、療育などで発達に躓きのある子どもたちに対しては、どのような認知処理スタイルが優位であり、どのような指導方法が適切であるのかを考えるきっかけにも繋がっています。
以上、【継次処理と同時処理の学習の違いについて】より良い指導方法・学習方法とは?について見てきました。
認知処理スタイルは、人によっては、バランスよく継次処理と同時処理をうまく活用している人も多いかと思います。
一方で、片方が優位であるが、それに合った指導を受けることができないと学習場面での困り感が生じる可能性が高まります。
学習で大切なことは、日々の積み重ねによって、自分が変化していることを実感することだと思います。
そのためには、個々に合った指導方法・学習方法を考えていく必要があるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場を通じて子どもたちの認知処理スタイルへの理解を深めていきながら、個々に応じた関わり方(指導方法)を見出していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
藤田和弘(2019)「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ.図書文化.