発達障害(神経発達障害)には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)、SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動障害)、ID(知的障害)など様々なものがあります。
著者は長年、療育現場を中心に様々な発達障害児と関わってきています。
その中で、発達障害児には、〝興味関心が広がりにくい″といった印象を受けることがよくあります。
それでは、なぜ、発達障害児は興味関心が広がりにくいのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児はなぜ興味関心が広がりにくいのかについて、定型発達児との違いを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。
発達障害児の興味関心の広がりにくさについて
以下、著書を引用しながら見ていきます。
知的に遅れがある十五歳の子ども(小学校三年生レベル)と定型発達の小学校三年生の子どもの違いは年齢だけではなく、外界に対する「興味の持ち方」にあるといわれています。つまり、双方の知的レベルは同じでも、興味の差が大きいのです。
定型発達の子どもの多くは、何かに興味をもつと、人に言われなくても主体的に学ぶようになります。
著書の内容から、仮に知的水準が同じ発達障害児と定型発達児とを比較した際に、その違いとして、〝外界への興味関心の持ち方″にあると言われています。
つまり、定型発達児が様々な事柄に興味関心を持ちやすいのに対して、発達障害児は興味関心の持ちにくさ・広がりにくさがあるということです。
さらに、定型発達児は、自ら興味関心があることが見つかると、そのことに対して主体的に学ぼうとします。
一方で、発達障害児は、興味関心がそもそも見つかりづらいため、主体的に学ぼうとするところまで発展しにくいと言えます。
中でも、〝ASD(自閉スペクトラム症)″の人たちは、興味関心の幅が狭く、その内容も非常に独特であることがあります。
一方で、一度、興味関心にハマる体験をすると、その後はその対象に没頭するといった〝強み″もあります。
〝知的障害″の人たちが、興味関心の幅と深さをゆっくり学習していくのに対して、ASDは興味関心の入り口の発見の仕方、入り口を見つけた後の学習の仕方が特徴的だと言った違いもあります。
著者の経験談
著者はこれまで療育現場をはじめ様々な発達障害児・者との関わりがあります。
その中で、定型発達児・者との違いは今回見てきたように、〝興味関心″のあることが見つかりづらい、そのため、〝興味関心″が広がりにくいといった特徴があると感じています。
その根底には、環境が本人と合っていない(人的環境・物的環境を含めて)場合があると感じています。
子どもが自分の〝興味関心″の世界を見つけるためには、様々な環境に身を置き、様々な事柄に挑戦する(試す)必要があります。
定型発達児は、自ら外の環境に合わせる力・自己を修正する力がある程度はあるため、様々な環境の中で挑戦する機会が増えていきます。
つまり、主体性が育っていくことが多いと言えます。
一方で、発達障害児は、外の環境に自らを合わせることが難しいため(配慮や支援がないと)、経験の入り口で失敗をすることがよくあります。
つまり、経験を積み重ねていく中で〝興味関心″の世界を発見していくといった前提の段階で躓いてしまう場合が出てきます。
子どもが様々な事柄に挑戦するためにも、まずは環境(コミュニティ)が本人に合っており、その中で自己を発揮できるような環境調整が成されているかが大切だと思います。
さらに、環境の中には、もちろん、人的環境、つまり、安心感を与えてくれる人・理解を示してくれる人の存在が必要不可欠です。
著者がこれまで見てきた発達障害児・者が〝興味関心″のあることを見つけ、その興味関心を追求することができた背景には、上記に見てきたような〝環境が本人に合っている″ことが非常に大切だと感じています。
以上、【発達障害児はなぜ興味関心が広がりにくいのか?】定型発達児との違いを通して考えるについて見てきました。
もちろん、定型発達児においても、環境が本人と合っていなければ失敗が増え、自信を失うこともあります。
さらに、次の環境、また次の環境・・・の中でうまくいかなければ、興味関心を広げることは難しくなります。
そのため、定型発達児にしろ、発達障害児にしろ、興味関心を広げ、その力の伸ばしていくためには、周囲の理解者や支えとなる人などといった環境がとても大切だという共通点は同じだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちが興味関心を見つけ、その興味関心の世界を広げていけるように自身の関わり方を見つめ直していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.