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【愛着障害の子どもの感情発達の未熟さについて】療育経験を通して考える

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愛着障害の子どもは、〝感情発達が未熟″だと考えられています。

子どもは養育者との関係性、つまり、様々な情動交流を経験していく中で、感情認知を学習していきます。

一方で、養育者との情動交流がうまくいかないと、子どもの感情はうまく育っていかないことがあります。

 

それでは、愛着障害の子どもの感情発達にはどのような特徴があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、愛着障害の子どもの感情発達の未熟さについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「米澤好史(2018)やさしくわかる!愛着障害 理解を深め、支援の基本を押さえる.ほんの森出版.」です。

 

 

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〝感情発達の未熟さ″について:愛着に問題のある子どものケースより

以下、著書を引用しながら見ていきます。

特に、嫌悪や悲しみ・不安を感じるとそれをうまく処理できずに怒りや恐れという感情に直結してしまう状態が「感情発達の未熟さ」という問題です。

 

つまり、罪悪感を抱いたり恥を感じることで行動を修正することや、喜びや驚きを誇りや意欲につなげることが難しい状態なのです。

 

著書の内容から、愛着障害の子どもの〝感情発達の未熟さ″とは、ネガティブな感情(嫌悪・悲しみ・不安など)の処理・修正の困難さ、そして、同時に、ポジティブな感情(喜び・驚きなど)を次の行動のエネルギーに繋げていく困難さがあると言えます。

一般的に、大人は子どもの様々なネガティブな感情を緩和・軽減する関わりを通して、子どもはネガティブな感情への認知や処理の仕方を学んできます。

一方で、ポジティブな感情についても、子どもは大人との関わりを通して、楽しかった!良い気持ちになった!という気持ちを、次の行動のエネルギーに変換していくことを学んでいきます。

愛着障害の子どもは、こうした感情学習の困難さから、〝感情発達の未熟さ″が残り続けてしまうと言えます。

年齢的には、1~2歳程度の感情発達で止まっていると考えられています。

そのため、子どもが何かよくない行動をして、大人が注意しても、子どもは自分の感情がうまくわからないため、混乱したり、さらに状態が悪化してしまう場合があります。

つまり、注意や叱責による行動の変容は、感情発達がしっかりと育っている子どもにおいて効果があると言えます。

〝感情発達の未熟さ″のある愛着障害の子どもにおいて効果はないと言えます。

 

 

著者の経験談

著者はこれまでの療育経験を通して、愛着に問題のある様々な子どもたちと関わってきています。

著書にもある通り、こうした子どもたちの感情発達は未熟だと感じます。

例えば、不快なことがあるとすぐに暴れるなどの攻撃行動を見せたり、他者への暴言・物投げなどもよく見られます。

そして、不快な感情状態からの回復に時間がかかるのも特徴だと思います。

また、なぜ不快な気持ちになったのかを言語化できないことが多いため、気持ちの確認・振り返りなどが難しいと感じます(逆に、こうした対応で状態が悪化することもあります)。

一方で、楽し気持ちも感じにくく、楽しいと実感できる活動のモードに入るのにも時間がかかります。

仮に、楽しく活動できても、直ぐに、そこで充足された快のエネルギーが枯渇してしまうように思います。

また、楽しかった活動のエピソードについても、振り返って話す様子は少ないことがあります。

子どもが行ったよくない行動に対して注意をしても、反応が乏しかったり、逆に荒れてしまうことがあります。とにかく、心に響いていないと感じることがよくあります。

こうした状態像の背景として、今回見てきた〝感情発達の未熟さ″があると思います。

 

一方で、〝感情発達の未熟さ″は対応の在り方しだいでは改善・回復していくものだと思います。

それは、〝この人といると心地がよい!″〝この人は自分のことをよくわかってくれている!″〝この人は自分のことを守ってくれる!″など、〝安心基地″と〝安全基地″が満たされる対応の継続にあると思います

実際に、著者が愛着に問題のある子どもへの関わりでうまくいったと感じるケースには、著者自身が子どものことをよくわかるようになってきたこと、心で通じ合う関係性が築けるようになってきたこと、困ったら子どもが著者を真っ先に頼るようになってきたなどの実感が持てる場合だと思います。

そして、こうした実感が持てるようになってきたと同時に、子どもの感情は以前よりもだいぶ成長していることも事実としてあると思います。

そのため、愛着の問題の改善・回復において、〝感情発達の未熟さ″への対応ができているどうかが非常に重要な視点だと言えます。

 

 


以上、【愛着障害の子どもの感情発達の未熟さについて】療育経験を通して考えるについて見てきました。

愛着障害の子どもへの対応は非常に困難な場合が多いと思います。

実際に、著者もなかなか支援がうまく進まないと感じることが非常に多くあります。

その場合、今回見てきたように、愛着障害への深い理解がとても参考になると思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育経験を踏まえて、愛着に問題のある子どもへの理解と支援方法について学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「愛着に問題のある子の支援-「叱る」対応の問題点について-

関連記事:「【愛着障害の支援で大切な感情のラベリングについて】4つのポイントを通して考える

 

 


愛着・愛着障害に関するお勧め関連書籍の紹介

関連記事:「愛着障害に関するおすすめ本【初級~中級編】

関連記事:「愛着(アタッチメント)に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

 

米澤好史(2018)やさしくわかる!愛着障害 理解を深め、支援の基本を押さえる.ほんの森出版.

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