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【心の理論の発達について】3つの発達段階から考える

投稿日:2023年4月20日 更新日:

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。

心の理論を獲得することは、他者の心を理解することであり、他者が心を持った存在だという認識から、他者の心理状態を踏まえて自分の行動を調整するなど様々な発達が見られます。

 

それでは、心の理論には大きくどのような発達段階があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、心の理論の発達について、臨床発達心理士である著者の療育経験も交えながら、3つの発達段階から考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「林創(2016)子どもの社会的な心の発達 コミュニケーションのめばえと深まり.金子書房.」です。

 

 

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心の理論の発達について:3つの発達段階から考える

著書の中では、心の理論の発達について、3つの段階が記載されています(以下、著書引用)。

  • 心の理論の萌芽:9か月頃~
  • 一次の心の理論の発達:4~5歳頃
  • 二次の心の理論の発達:6~9歳頃

 


それでは、次にそれぞれについて具体的に見ていきます。

 

心の理論の萌芽:9か月頃~

以下、著書を引用しながら見ていきます。

一歳半頃から誤信念に相当する状況を理解できていることもわかりつつあり、乳児期には潜在的(implicit)なレベルで心の理論の萌芽があると考えられます。

 

定型発達児は、一般的に4~5歳頃に心の理論を獲得すると言われています(一次の心の理論)。

一次の心の理論は急に何かの拍子で獲得するわけではなく、その前段階で様々な社会的な能力を積み重ねていく上で獲得するものです。

そのため、著書にあるように、乳児期には、心の理論の萌芽となる時期であることから、潜在的なレベルで人の心に注意を向け理解する様子が見られます。

その行動は、例えば、共同注意行動(特定の対象を大人と子供が視線を向け共有する)による、視線を他者に向ける行動や他者の視線をモニターするといった様子が見られます。

著者の療育現場でも、発語が見られない、あるいは見られるようになった子どもたちの行動特徴に、共同注意行動が見られます。

共同注意行動を積み重ねていくことで、言葉の獲得も含め、他者の意図や心情への理解も少しずつ分かるようになっていくという実感があります。

 

一次の心の理論の発達:4~5歳頃

以下、著書を引用しながら見ていきます。

幼児期の4~5歳頃には、「Aさんは・・・・・・と思っている」といったように、他者の心の状態を明確に表象できるようになり、標準的な誤信念課題に正当できるようになります。

 

一般的に、心の理論を獲得する時期となります。

つまり、誤信念課題(有名な課題としてサリーとアンの課題がある)に正当する時期であり、この時期には、他者の行動の背後にある意図や心情などに注意を向け、他者の行為の意味を理解することができるようになります。

そして、目の前の特定の人だけではなく、すべての人の行為に共通する意味があることが理解できるようになります。

例えば、Aさんが、外の様子を見て雨が降っているため傘を取りに行ったという行為の意図の理解が、Aさんだけではなく、Bさん、Cさんにも共通して見られるなど応用・般化ができるようになります(心の理論が〝理論″とも言われる理由です)。

著者の療育現場では、学童期頃に一次の心の理論の成長が多く見られます。

療育現場には、発達に躓きのある子どもたちが通所していきており、幼児期にはあまり見られなかった心の理論がこの時期になり顕在化してくることが多いといった印象があります。

 

二次の心の理論の発達:6~9歳頃

以下、著書を引用しながら見ていきます。

児童期の6~9歳頃にかけて、「Aさんは『Bさんが・・・を知っている』と思っている」といったように、入れ子になった複雑な二次の心の状態を柔軟に読み取ることができるようになります。

 

著書にあるように、児童期の6~9歳頃にかけて、複雑な人物間での心の状態が理解できるようになる二次の心の理論の発達が見られます。

二次の心の理論を獲得することで、私たちは、小説やドラマ、映画に出てくる様々な人間関係のストーリーを理解し楽しむことができるようになります。

そして、この時期には、うそや冗談、思いやりなどの向社会的な行動がより顕在化してくるようになります。

著者の療育現場では、発達に躓きのある子どもたちと関わっているため、二次の心の理論の発達はとてもハードルが高いことを実感しています。

一方で、様々な人との関わりを通して、その子なりの心の理論の成長が見られることも実感しています。

 

 


以上、【心の理論の発達について】3つの発達段階から考えるについて見てきました。

もちろん、心の理論の発達は今回見てきた3つの発達段階に明瞭に分けることができないほど、個々によって少しずつ成長していくものだと思います。

そのため、一人ひとりの心の成長を感じ取っていくことが療育現場では大切であり、今回見てきた3つの段階は一つの目安として子どもたちの発達を理解するために活用していけるといいかと思います。

例えば、二次の心の理論の発達に到達していない子どもに、人の複雑な心の状態を想像することを求めることは理論上難しいという理解です。

大切なことは、一人ひとりの発達段階を理解し、それに応じた関わり方を工夫していくことだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も心の理論の発達から子どもたちを理解する視点をさらに深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「【一次の心の理論、二次の心の理論とは何か】療育経験を通して考える

関連記事:「【心の理論とは何か?】療育経験を通して考える

 

 


心の理論に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「心の理論に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

 

林創(2016)子どもの社会的な心の発達 コミュニケーションのめばえと深まり.金子書房.

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