著者は発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を行ってきています。
これまでの実践経験をまとめることは、①経験から意味を見つける、②実践の質を高める、などの意味があると考えています。
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それでは、実践を具体的にまとめ上げていくためには、その前提としてどのようなことが必要となるのでしょうか?
そこで、今回は、実践をまとめていくために必要なことについて、臨床発達心理士である著者の発達障害児支援での経験をもとに考えを深めていきたいと思います。
実践をまとめていくために必要なことについて
著者は実践をまとめていくために必要なことについて、以下の4つがあると考えています。
①経験を積み重ねる
②知識を身につける
③自分の頭で考える(思考する)
④他者と協力する
それでは、それぞれについて具体的に見ていきます。
①経験を積み重ねる
人は自分が経験したものをベースとして物事を考えることができるようになります。
例えば、サッカー経験のない人がサッカーの解説訳をすることは非常に難しい、海外旅行経験の無い人が海外の旅行についてのガイドをすることは難しなどがあります。
療育でも、発達障害児支援に携わったことのない人が、発達障害への支援とは?実践とは?を考えることは難しいように思います。
もちろん、家族など身近に当事者がいれば家族という立場から多くを語ることは可能です。
このように、あらゆる学習のベースとなるのが自らの身体を通した体験学習になります。
②知識を身につける
自分が関わる領域の知識を身につけていくことは、経験と同様にとても重要です。
多くの経験を重ねていっても、実践をまとめていくためには、現象を説明する用語、言葉といったある程度まとまった知識体系が必要になります。
例えば、療育を仕事にする際に、自閉症やADHDなどの発達障害への知識、愛着障害や二次障害などの知識に加え、発達的視点、教育的な視点、福祉の知識など学ぶべきことが多くあります。
やるべきことが多い中で、知識を身につけていくことは楽しいことでもあります。
それは、人への理解の深まり、支援の可能性の追求でもあるからです。
このよう、自身の経験を説明したり、思考するためには、知識の力が必要になります。
③自分の頭で考える(思考する)
経験と知識とがある程度積み重なってくると、自分の頭で考えることができるようになっていきます。
自分の頭で考えるためには、まずは〝問いを持つこと″が大切です。
例えば、何となくA君は人と話すことが苦手であると感じるがそれはなぜだろうか?何か発達特性が影響しているのだろうか?発達特性が影響していたとしてどのような発達特性が関連しているのだろうか?他の環境要因などはないだろう?などの問いを持つことです。
〝問い″を持つためには〝経験″が必要です。
そして、〝問い″を考えるためには、〝経験″に加えて〝知識″も必要になります。
例えば、A君の人と話すことの苦手さは、〝自閉症の発達特性が影響している″その中で〝心の理解の弱さが影響している″といった仮説を立てることが経験と知識をもとに可能となります。
そして、こうした仮説を立てることで、A君の行動の背景の説明に加えて支援方法へと繋げていくことができます。
このように、自分が経験したものをさらに深堀するためには、〝経験″と〝知識″とを紐づけていきながら、様々な問いを持ち自分の頭で〝考え″続けることが重要です。
④他者と協力する
療育は一人で行うことはできません。
支援を必要としている子どもに対してチームで取り組むことが必要です。
そのため、日々の取り組みをチーム内で協議することが大切です。
実践をまとめていくためにも、チーム内の他者からのフィードバックを受けることで、実践内容を一人の観点だけではなく、様々な人たちの納得感が得られたものへとブラッシュアップさせていく必要があります。
このように、実践をまとめていくためには、個人の力に加えて、他者と共創していくという意識が重要です。
以上、【実践をまとめていくために必要なこと】発達障害児支援の経験を通して考えるについて見てきました。
今回は、実践をまとめていくために必要なことについて4つの視点からお伝えしてきました。
振り返って見ると、著者自身もまだまだ経験不足、知識不足、思考力不足、共創不足なところは大いにあると感じています。
一方で、年単位で見ると実践をまとめる力が進歩していることも確かです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も実践をまとめていく力を高めていけるような学びを継続していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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