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【マルトリートメントへの対応について】療育経験を通して考える

投稿日:2024年3月2日 更新日:

マルトリートメント″とは、〝不適切な養育″のことを言います。

〝不適切な養育″が続くことで、子どもの脳はダメージを受け、脳の形すらも変えてしまう可能性があると言われています。

 

関連記事:「【マルトリートメントとは何か?】発達障害児支援の現場を通して考える

 

それでは、マルトリートメントの状況を改善する上で大切な視点にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、マルトリートメントへの対応について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「友田明美(2017)子どもの脳を傷つける親たち.NHK出版新書.」です。

 

 

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マルトリートメントへの対応

以下、著書を引用しながら見ていきます。

マルトリートメント被害にあってきた子どもをケアするための第一原則は、まずその子の安心・安全を確保することです。

この環境が整っていなければ、たとえどのような治療やケアを施しても、子どものこころと脳には十分届きません。

 

場合によっては、養護施設などで、子どもが安全に安心して生活できる環境を整える必要があります。

 

著書には、〝マルトリートメント″への対応として非常に重要な視点として、〝子どもの安心・安全の確保″を上げています。

そして、〝安心感・安全感″が保障されていなければ、いくら治療やケアをしても、心身の改善には繋がらないとしています。

治療やケアには、薬物療法や認知行動療法など様々な方法がありますが、治療やケアの効果を出す前提として、安全・安心のベースを整える必要があります。

それだけ、子どもの脳の成長にとって、安心感・安全感は大切だと言えます。

基本的には養育者との関係性を改善できれば良いのですが、それが難しい場合には(安全・安心が脅かされる場合)、著書にあるように、養護施設での対応も視野に入れる必要があるとしています。

 

 

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著者のコメント

著者がこれまでの療育経験を通して関わってきた子どもたちの中には、〝マルトリートメント″の例として〝愛着障害″あるいは〝愛着障害の傾向のある″子どもたちがいました。

こうした子どもたちには、対応・関わりの難しさが特徴としてあります。

もちろん、愛着障害もある種、〝スペクトラム″だと言われており、子どもによって状態像が非常に違います。

しかし、人への安心感が欠如していることで、支援がうまく進まないことが多くあります。

例えば、些細な出来事でもイライラしやすい、他者にちょっかいを出すことがよくある、癇癪やパニックなどもよくある、大人にうまく頼ることができない、どこか親切心が不足している、大人の提案やルールを拒否する、などです。

もちろん、上記の内容は、著者の経験則も含まれているため、こうした内容が見られる=愛着に問題がある、とは言えません。

 

逆に、安定した愛着を形成している子どもたちは、支援が想像以上にうまくいくこともよくあります。

大人との関係構築がスムーズに行くことで、困った時は大人に相談したり頼ることがうまくできます(自閉症児などはもともと苦手ですが)。

また、他者に思いやりを持って行動する姿が多いこと、他者の思いを汲んだり、他者に合わせた行動をよくとること、大人からの提案やルールなどが飲み込みやすいことも感覚的に多いと思います。

他者に合わせること、他者に褒められること、他者に認められることに〝心地よさ″を感じることができるということです。

そして、こうした〝心地よさ″を感じる力とは、〝感情の発達の問題″とも言い換えることができます。

〝感情が発達する″ためには、大人からの無条件の肯定的な関わりが大切であり、その根底を成すのが〝安全感・安心感″の感覚を持続的に得られていることです。

著者は、安定した愛着形成をしている子どもたちとそうでない子どもたちの両方を見てきたことで、〝安全感・安心感″はその後の子どもの発達において非常に重要なものだと実感しています。

 

 


以上、【マルトリートメントへの対応について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

マルトリートメントへの対応には、様々な方法があります。

それは、マルトリートメント(不適切な養育)といった用語自体が広義の意味を持っているからだと思います。

一方で、今回見てきた内容は、全てマルトリートメントの子どもたちへの対応において必要不可欠なものです。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちに、安全感と安心感を持ってもらえるように自分自身が安全基地となれる存在であり続けたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「愛着形成で大切なこと【愛着障害の支援に手遅れはない】

関連記事:「愛着障害の克服について:良い安全基地の存在から考える

 

 


愛着・愛着障害に関するお勧め関連書籍の紹介

関連記事:「愛着障害に関するおすすめ本【初級~中級編】

関連記事:「愛着(アタッチメント)に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

 

友田明美(2017)子どもの脳を傷つける親たち.NHK出版新書.

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