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【なぜ自閉症の人は人と目が合わないのか?】自閉症児・者の視線の特徴について考える

投稿日:2023年4月29日 更新日:

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とした発達障害です。

自閉症児・者は人と目が合わない、あるいは合いにくいと以前から言われています。

つまり、〝視線″の共有や他者の〝視線″を追うことが定型発達児・者よりも少ないということです。

 

それでは、自閉症の人たちはなぜ視線の共有や他者の視線をモニターすることが少ないのでしょうか?

 

そこで、今回は、なぜ自閉症の人は人と目が合わないのかについて、自閉症児・者の視線の特徴について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「千住淳(2014)自閉症スペクトラムとは何か-ひとの「関わり」の謎に挑む.ちくま新書.」です。

 

 

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自閉症の人は他者の視線を脅威と感じるのか?

自閉症の特徴として、〝視線の合いにくさ″や〝他者の視線を追うことが少ない″ということは以前から様々な書籍で書かれていたり著者の経験からも実感しています。

書籍の中で自閉症の人は〝他者の視線を脅威に感じる″ために視線が合いにくいと書かれたものもあります。

この点について、著書では以下の考察をしています(著書引用)。

「自閉症であれば必ず視線を怖がる」とはいえません。自閉症児のうち、特に小さな子どもの場合、自分から積極的に視線を避ける方は少数派です。

 

著書の内容では、自閉症児は必ずしも他者の視線を脅威に感じているわけでなく、むしろ、視線を自分から避ける方は少ないとされています。

著者の療育現場にも、自閉症児は多くおりますが、確かに、著者が向ける眼差しに対して、脅威と感じているというよりも、その意味がよくわからないと感じているようにも見えます(正直なところよくわかりませんが・・・)。

そのため、子どもによっては、著者が話している際に著者の目をじっと見続けている子もいます。

その子の視線からは、著者が何を伝えたいのかを真剣に読み取ろうとしているようにも見えます。

一方で、視線を逸らす子もいますが、こうした子の場合にも著者が話している話の内容にはしっかりと注意を向けていることも多く、また、著者と安心感のある関係性が築けていると感じることからも、何か他の要因があって視線を逸らす、あるいは視線が合いにくいといったことも考えられます。

著書の中では、不安障害などをも合わせ持っている自閉症には他者の視線を脅威だと感じることもあると記載されています。

そのため、自閉症の人が必ずしも他者の視線を脅威と感じるわけではなく、不安障害など様々な対人関係の中で生じる二次的な要因が引き金となって他者の視線を脅威と感じているのかもしれません。

 

 

自閉症児・者の視線の特徴について

それでは、自閉症児・者は定型発達児・者と比べてどのような〝視線″の特徴があるのでしょうか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

定型発達者は、相手の目に注意が捉えられ、他の動きに注意がそらされにくいのに対し、自閉症者では相手の目に対し「注意が捉えられず、すぐにそらされてしまう」傾向が強いことも、いくつかの研究から報告されています。

 

自閉症を抱えた方は、定型発達者と比べて、「相手が自分を見ていること」に気づく傾向が弱い可能性についても、いくつかの研究から報告されています。

 

著書の内容から、定型発達者が相手の目に注意が向きその注意が持続する傾向にあるのに対して、自閉症の人は相手の目にそもそも注意が向きにくいといった違いがあります。

さらに、他者が送る視線に対しても、定型発達者が他者の視線にすぐに気がつくのに対して、自閉症の人は他者が送る視線に気がつきにくいといった違いがあります。

このように、自閉症の人は自ら他者に視線を向けることが少なく、かつ、他者からの視線に気がつきにくいといった特徴があるということです。

著者の療育経験でも、自閉症児から視線を感じることは少ない印象があります。それも自閉症スペクトラムの中でも、自閉症の強弱が強い人の方がより特徴が顕著に見られるように思います。

また、著者が自閉症児に視線を送っていてもその視線になかなか気がつきにくいといった特徴も確かにあると感じています。

むしろ、名前を呼ぶなど話しかけた方が注意が向きやすいように思えます。

このように、著者の療育現場での経験に中でも、自閉症児の視線にはこれまで見てきた特徴的なものがあると感じています。

 

 


以上、【なぜ自閉症の人は人と目が合わないのか?】自閉症児・者の視線の特徴について考えるについて見てきました。

定型発達者にとっては、人と視線を交わすこと、そして、他者の視線から何を伝えたいのかを読み取ろうとすることは自然と行っているかと思います。

一方で、今回見てきた自閉症児・者の視線の特徴を見ると、定型発達者とは異なる特徴があります。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症への理解を深めていけるように、様々な特徴について学び続けていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉症から見た心の理論の困難さの要因について】療育経験を通して考える

 

千住淳(2014)自閉症スペクトラムとは何か-ひとの「関わり」の謎に挑む.ちくま新書.

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