〝社会性″には、様々な定義や内容があるかと思います。
その中で、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと言えます。
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共同行為は、大人と子どもとの関係、子ども同士の関係など様々な所で見られます。
著者は発達に躓きのある子どもたちへの療育を通して、〝社会性″を育てることは可能か?といった問いについて考える機会が多くあります。
それでは、そもそも〝社会性″は学習可能なのでしょうか?
そこで、今回は、〝社会性″は学習できるといったテーマについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、支援の可能性について考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「長崎勤・中村晋・吉井勘人・若井広太郎(2009)自閉症児のための社会性発達支援プログラム‐意図と情動の共有による共同行為‐.日本文化科学社.」です。
〝社会性″は学習できる
以下、著書を引用しながら見ていきます。
社会性は「自然と身につく」のではなく、ある順序によって発達し、その発達のためには大人のかかわり方や支援が不可欠である。このような意味で、社会性には学習の可能性があるといえる。
著書の内容から、〝社会性″は学習可能だと考えられています。
発達には、ある一定の順序性・方向性があります。
例えば、〝社会性″の基盤となる、大人とある対象に注意を向ける〝共同注意“行動は、その後の相手の意図や信念、考えなどを読み取るといった〝心の理論″の獲得に繋がっていきます。
そして、相手の意図などを汲みとる力は、お互い同じ目標・目的に向けて〝共同活動″を行う際に必要な能力となります。
このように、〝社会性″の発達には一定の段階があります。
つまり、〝社会性″はそもそも、大人との関係を基盤として学習していくと言えます。
そのため、〝社会性″は、学習可能であり、学習可能ということは、支援の必要性もまたあるということです。
それでは、次に、著者の経験から、〝社会性″を学習していく上での支援の可能性について見ていきます。
著者の経験談:支援の可能性について
発達に躓きのある子どもたちの中には、〝社会性″に困難さを抱えているケースも多く見られます。
一方で、関わる大人が、子どもたちが困難としている〝社会性″の発達について理解していくことで、その子なりの〝社会性″の育ちが見られると感じています。
例えば、相手の意図を汲みとることが苦手な子どもがいたとしましょう。
著者は、できるだけ、その子にわかりやすい表現で相手が何を思って行動しているのかを伝えるように心がけています。
こうした関わりの繰り返しにより、子どもの中で、〝○○くんはきっと今○○しようとしているんだ″など、相手の意図を想像している(理解しようとしている)言動が増えているという印象があります。
他の例を見てみましょう。
集団遊びがうまくできない子がいたとしましょう。
著者は、その子にとってわかりやすいルールを設けるようにしています。また、他児にその子はルールがまだよくわからないことがあるという周囲への働きかけもするようにしています。
つまり、本人への支援と周囲への支援の両方を行うということです。
こうした対応をしていく中で、集団遊びがうまくできなかった子が徐々に集団に入ることができるようになり、ルールの中で他児と協力して遊びを進める様子から、他児に合わせる力が増えてきているという印象があります。
このように、個々の発達段階に応じた関わり(支援)をしていくことで、〝社会性″が身に付いてきた(学習してきた)と実感できるケースは多くあります。
〝社会性″は、一人で勝手に成長していくものではなく、あくまでも、人との関わりの中で育まれていくのだと思います。
以上、【〝社会性″は学習できる】支援の可能性について考えるについて見てきました。
こうして振り返って見ると、〝社会性″は学習可能であり、そして、発達に躓きのある子どもたちには特に、支援の必要性があるのだと考えさせられます。
支援とは、その子の発達段階や発達特性を理解しながら、目標を持って(意図を持って)関わることができることだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育での実践を通して、子どもたちの〝社会性″の育ちに少しでも貢献していけるような取り組みをしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
長崎勤・中村晋・吉井勘人・若井広太郎(2009)自閉症児のための社会性発達支援プログラム‐意図と情動の共有による共同行為‐.日本文化科学社.