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感覚過敏 自閉症

自閉症の感覚過敏について:感覚過敏への対処方法について療育経験を通して考える

投稿日:2020年4月25日 更新日:

 

自閉症の人たちには、様々な感覚の問題があると言われています。

感覚の問題への理解を深めていくことで、目には見えにくい当事者の困り感を深く知ることに通じていきます。

 

それでは、自閉症の人にはどのような感覚の問題の特徴があり、それに対する対応方法などはあるのでしょうか?

 

そこで、今回は自閉症児・者に多く見られる感覚過敏について、臨床発達心理士である著者の経験談を踏まえて、感覚過敏への対処方法について理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

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感覚過敏とは

〝感覚過敏”とは特定の感覚に強い抵抗を示すことを言います。

例えば、子供の泣き声や騒ぎ声を聞くとパニックになる、特定の匂いに敏感である、ベトベトやつるつる、ざらざらした触感が苦手などがあります。

逆に、非常に反応が弱いといった鈍感さを持つ場合もあります。

 

 

自閉症児・者の感覚過敏について

自閉症の人たちの中には、〝感覚過敏”の特徴を持つ人が多く存在すると言われています。

著者がこれまで経験してきた療育現場にも、様々な感覚過敏を持つ子どもたちがいます。

例えば、なぜか急にある場所から走り出して逃げてしまう、急にパニックになる、遊びの集団の輪から離れていくなど、深くその行動について状況なども踏まえて考えると共通の背景要因が見えてくることがあります。

 

 

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それでは以下に著者の療育現場での体験談についてお伝えします。

 

著者の体験談

小学生Aさんの例

Aさんは感覚の中でも聴覚が非常に敏感であり、中でも子供の騒ぎ声や怒った声などへの反応が強く見られていました。

例えば、子供同士のけんかを見てもあまり気にすることはありませんが、そこでのやり取りが大声や奇声などになると、Aさんはその場から全速力で走り去ります。

また、よく怒鳴り声などを上げる他児を見ると、その日を境にその他児から常に離れた所にいようとします。

Aさんへの感覚過敏への対処方法として、環境調整が重要になります。

感覚過敏は一種のアレルギーと同じで、経験で克服することが難しいからです。

そのため、Aさんが安心できる静かな環境にいられるように、苦手な音と距離をとれるように、大人側ができるだけ事前に環境を調整していくことが必要だと言えます。

こうした対処方法をとった後、Aさんは安心できる様子が増え、また、他児が怒鳴り声を上げる以外の場面は同じ空間にいられるようになりました。

Aさん自身が困ったら安心できる場所があるということを大人側が伝えていくことが重要だと言えます。

小学性Bさんの例

Bさんは、Aさんと比べると、音への敏感さがさらに強いといった特徴がありました。

例えば、子供の泣き声やにぎやかな声などに強く反応しパニックになることが多くありました。

そのため、環境調整(できるだけ静かな空間)は当然のこととして、それだけでは過敏さに対する対処が難しく、常にイヤーマフ(防音具)を携帯していました。

Bさんへの対処方法は環境調整とイヤーマフをつけることだと言えます。

さらに、イヤーマフをどういったタイミングで付けたほうがいいのかを教えていくことも重要になります。

本人だけでは、イヤーマフをつけるタイミングなどのコントロールが難しい局面が多くありましたが、大人が介入を続けることで、少しずつ自分の判断で付けたり外したりできるようになりました。

未就学児Cさんの例

Cさんとは療育施設で著者が担任になった時に出会いました。

Cさんは触覚過敏、中でも、ベトベトした感覚が苦手でした。

療育現場ではよく粘土遊びなど感触遊びをすることがありましたが、Cさんはいつも粘土を見ると部屋の隅に行き、そこから他児が粘土で遊ぶ様子を見たり、違う遊びをはじめていました。

Cさんへの過敏さへの対処方法は、まずは無理に触らせないことを前提に、直接手で触らなくても遊べる状態を作るところから始めました。

例えば、ゴム手袋の使用や、粘土を切ったりこねたりする道具を見せ、これなら直接粘土に触らなくても大丈夫だということをモデリングして伝えていきました。

実際に、そのように伝えていくことで、Cさんは道具を使って粘土遊びを楽しく行うことができるようになっていきました。

そして、粘土遊びの中で、時々指で触ってみるなど直接手で触れるという行動もとれるようになっていきました。

 

 


以上の3人の事例はあくまでも一部ですが、自閉症の人たちの中には感覚の過敏さが見られることがよくあり、それは人によって種類や強度が違います。

この3人には嗅覚過敏や触覚過敏、聴覚過敏など他にも過敏さがありました。

今回はそのうち個々の中で特に強いと思われる感覚の過敏さを取り上げました。

重要なのはその過敏さゆえに生活に困り感を抱えていることをよく知ることだと思います。それは本人のせいではなく生まれ持っての特性だという理解です。

感覚の過敏さに配慮した環境を作ること、そして、対処法などを考えていくことで少しずつ自分の感覚への認識や理解が深まっていくと思います。

また、成人の当事者の方々と話す機会が多くありますが、その中で、感覚過敏さの話も多く上がります。彼らは自分の感覚への理解や様々な対処法を考え実践しています。

私自身も子供たちが将来的に自分で過敏さをコントロールできるように、一緒に対処法を考えサポートしていきたいと考えています。そして、人それぞれ多様な感じ方があるということを深く感じ学んでいこうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 


感覚統合に関するお勧め書籍紹介

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