著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。
子どもたちの中には、活動の中で集中力が続かないなど、すぐに〝飽きる″子どももいます。
また、学校の先生や保護者から勉強への集中が続かないといった相談を受けることもあります。
それでは、すぐに飽きてしまう子どもに対しては、どのような理解と対応が必要なのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児支援で必要なすぐに飽きる子への理解と対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2020)親も教師も悩み解決! こんなときどうする?発達が気になる子への指導・支援Q&A100.明治図書.」です。
なぜ、すぐに飽きるのか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
集中力のなさの要因として、次の2つが考えられます。
①本人のレベルに合っていない
②他の刺激に反応してしまう
①に関しては、そもそもの課題内容が〝本人のレベルに合っていない″といったものです。
本人が飽きずに活動・課題に取り組むためにも、少しの頑張りで〝できた!″というフィードバックが得られることが必要です。
そこから、活動・課題の時間・レベルを徐々に引き上げていくなどの調整が重要です。
②に関しては、本人が気になる刺激(音・視覚など)があることで、〝他の刺激に反応してしまう″といったものです。
子どもたちの中には、少しの刺激に対して、直ぐに反応するなど、注意の転導性が高い子どももいます。
そのため、活動・課題に集中させたい場合には、まずは周囲の刺激を減らす環境調整(物を減らす、掲示物を減らす、静かな環境を整えるなど)が重要になってきます。
集中力を高める方法について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
- 一度に取り組む活動の量を調整する(程よい量を設定する)
- さりげなくかかわって(声かけ、肩に触れるなどの身体援助)気持ちの切り替えをさせる
- 本人が興味のあるものを取り入れる(遊びや学習場面で、自分で選択できる場面を設ける)
- 終わりをこちらで設定し、「できた」「やった」という満足感を味わわせる
- 少ない量から始めて達成感を味わわせ、1つできたごとに褒める
著書には、すぐに〝飽きる″子どもに対して、集中力を高める方法が複数記載されています。
その中で、著者がよく活用するものは、〝本人が興味のあるものを取り入れる″です。
著者の療育現場では、〝遊び″が中心的な活動になるため、子どもたち一人ひとりの興味関心を取り入れながら活動を組み立てる必要があります。
子どもたちは、当然、自分の興味関心が高いものには高い集中力を発揮する様子がよく見られます。
仮に、工作が苦手な子どもでも、自分が作りたい興味のある作品があることで、徐々に長い時間をかけて取り組むことができるようになった子どももいます。
一方で、片付けなどあまり気が進まないものもあります。
本人が気乗りしないが少しでも取り組むことが求められることに対しては、〝一度に取り組む活動の量を調整する″〝終わりをこちらで設定し、「できた」「やった」という満足感を味わわせる″などの対応が非常に効果的だと実感しています。
まずは、全部完璧にこなす、高いハードルを設けて促すことを止め、少しでも取り組むことができたら良しとする、ここまでできたら良しとするなど終わりを設けるなど、無理のない範囲で少しずつでも成功体験を積み重ねていく継続性が大切だと思います。
集中力は簡単には身に付かないため、長期的な視野での対応・支援が必要になってきます。
以上、【発達障害児支援で必要なすぐに飽きる子への理解と対応】療育経験を通して考えるについて見てきました。
すぐに飽きる子の中には、様々なことに興味を持つことができるといった長所を持っている子もいます。
また、飽きずに取り組む経験が増えたことで、非常に高い集中力を持てるようになった子もいます。
そのため、物事の見方や関わり方の工夫をしていくことで、すぐに飽きること自体は決して悪いことではないといったことや、関わり方次第で集中力を高めることができるといったことも実感できるようになるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちが様々な活動に集中して取り組み、その中で達成感を抱くことができるように自身の関わり方・対応の仕方を振り返りながら実践していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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