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【自閉症児の人間関係の育て方における注意点】療育経験を通して考える

投稿日:2024年6月27日 更新日:

 

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。

著者は長年、療育現場で未就学児から小学生を対象に療育をしてきています。

その中で、自閉症児への支援において、〝人間関係″の力を育てることはとても大切なことだと実感しています。

 

それでは、自閉症児の人間関係の力を育てる上での注意点はあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症児の人間関係の育て方における注意点について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。

 

 

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自閉症児の人間関係の育て方の注意点:乳児期~幼児期を例に

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ただし、注意も必要です。それは、以上の対応、応対、関わりを一人の親だけが担い、行っていると、ASDの子どもの「こだわり行動」の対象に陥ってしまう危険性があります。すなわち「マンツーマンこだわり」や「対人的な一番こだわり」の形成です。こうなると他の人との人間関係が広がりませんし、対人的な体験が減る分、発達も促されなくなってしまうので、避けたいものです。

 

したがって、①~⑧は、養育者たる者(母親、父親、祖父母など)が全員で実施すべきです。これは、保育者にも勧めたいアドバイスです。

 

著書に引用文にある、〝以上の対応~″〝①~⑧″は、自閉症児の人間関係の育て方のポイント(8つ)になります。

詳細は以下の記事を参照して頂ければと思います。

 

関連記事:「【自閉症児の人間関係の育て方】乳児期~幼児期の発達段階を通して考える

 

著書には、乳児期~幼児期における自閉症児の人間関係の育て方の注意点として、゛子どもへの関わり手が特定の人物(片方の親など)″にならないような対応を心がける必要があるとしています。

その理由として、自閉症児に見られる〝こだわり″が影響して、〝この人でないとダメ!″といった〝マンツーマンへのこだわり″に発展してしまう可能性があるからだと考えられています。

そのため、特定の人物以外の人との関わり、養育者と言われる人たち全員での関わりが大切だと言えます。

 

 

著者の経験談

著者が以前、未就学児の療育をしていた際に、まさに〝マンツーマンへのこだわり″へと発展していたと思われるケースを思い出します。

未就学児のAさんは、当時は著者が担当となることが多く、次第にAさんは著者との関わりを楽しみに園に通うようになりました。

当時のAさんは、人への関心が弱く、物への固執行動が多く見られました。

そのため、著者はAさんが好きな物を中心にできるだけ著者と関わる機会を取れるように(相互性が生まれるような関わり)、対応方法を日々、工夫していきました。

そこからしばらくすると、Aさんは何か物を取って欲しい、一緒に遊びたい、といった゛要求行動″に対して必ず著者は選ぶようになっていきました。

著者としては、物から人へと関心が広がっていったAさんに対して、とても喜びを感じていました。

Aさんと次第に関係がとれていく中で、〝自分が中心となって関わらないといけない″〝周囲のスタッフも自分との関わりを期待している″など、Aさんの〝こだわり″を助長する関わりへと気持ちが向かっていきました。

すると次第にAさんは何かあれば、〝著者でないとダメ!″といった行動をよく見せるようになりました。

その内容は、〝遊び全般″〝要求全般″など、他のスタッフでも良いと思えるものも多くありました。

当時の著者は〝人へのこだわり″についての理解が足りず、また、そもそも〝人への関心が弱い″自閉症児がこうした行動を見せることは悪いことではないと思っていました。

その後のAさんは、他のスタッフとも関わる機会が増え、著者への固執は少なくなっていきました。

もちろん、特定の人物としっかりと関係性を築いていくことは大切なことだと思います。

一方で、今回見てきたように、゛マンツーマンへのこだわり″へと発展していかないように、他のスタッフとの関わりもしっかりと設けていく必要があったと今で感じています。

 

 


以上、【自閉症児の人間関係の育て方における注意点】療育経験を通して考えるについて見てきました。

自閉症児が人に関心を示すことは大切なことです。

一方で、特定の人物への固執行動をより良い方向(人間関係が広がるような)へと発展させていけるような関わりの視点も大切です。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症児の人間関係の力の育て方について、療育現場での実践を通して身につけていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.

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