発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

支援 発達障害 社会性

【社会性への支援⑤】発達障害児支援の現場を通して考える

投稿日:2023年11月20日 更新日:

社会性″とは、様々な定義や表現があるかと思いますが、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと言えます。

著者は、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしています。

療育経験を通して、子どもたちの〝社会性″の育ちを実感する機会が多くあります。

 

それでは、発達障害児への支援を対象とした際に、どのような社会性への支援方法があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育現場(発達障害児支援の現場)における社会性への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談をもとに理解を深めていきたいと思います。

 

 

スポンサーリンク

社会性への支援⑤:発達障害児支援の現場を通して考える

著者が〝社会性への支援″として、大切にしていることの一つが〝学校や家庭以外の人との繋がりや活動を通して発展させる″です。

 

著者は放課後等デイサービスで療育をしています。

放課後等デイサービスでは、学校や家庭以外の人たちとの関わりがあり、地域の中で新しい活動拠点を提供していけるという利点があります。

様々な人との交流の中で、新しい自分を発見できたり、信頼できる大人や友人ができたり、余暇の過ごしの幅が広がるなど、子どもたちの発達においてプラスになる点が多くあります。

 

 


それでは、次に、学校や家庭以外の人との繋がりや活動を通して社会性を発展させることができた事例について見ていきます。

 

事例1:学校で友人がいなかったAくん

小学校低学年のAくんは、学校では友人がいなく、一人で遊ぶことの多い子どもでした。

以前は、本人からの発信が弱かったため、何を欲しており、何に困っているのかなど理解が難しい所がありました(経験が不足しているという見方もできます)。

著者の事業所を利用しはじめた当初は、活動の大半は大人と過ごすことが多ったかと思います。

著者は、Aくんが好きな遊びを通して、他児と接点を持てるように関わり方や活動内容を工夫していきました。

こうした取り組みが功を奏したのか、少しずつAくんは他児と関わる頻度が増していきました。

最初は同じ活動空間にいるという感じでしたが、次第に、自分から他児集団に入っていったり、何をして過ごしたいのか自分から発信できるようになりました。

学年が上がると、仲の良い友達もでき、自分から友達に話しかけることも増えていきました。そして、学校でも友人ができるなど、対人交流が非常に多く見られるようになりました。

この事例は、もともと友人がいなかった子どもが、放課後等デイサービスといった居場所を利用することで、対人交流を発展させることができたケースです。

この事例から、対人交流場面を作り他児との接点を設け、関わり方を工夫していくことで、中長期的な時間の中で、友人関係を発展させることが可能になるのだと実感させられました。

 

 

事例2:サードプレイスとして安心できる居場所を確立できたBくん

家庭や学校以外の第三の活動拠点としての〝サードプレイス″に注目が集まっています。

小学校高学年のBくんは、もともと著者が勤める放課後等デイサービスに一年生の頃から通所していた子どもです。

一方で、中学年の頃までは、体調が悪い(気分が悪い)と放課後等デイサービスを休むことも多くありました。

著者は、Bくんの興味関心を把握していきながら、信頼できる大人との関係性の構築、そして、他児と興味関心を通して接点を作ることに重きを置くように支援を工夫していきました。

こうした取り組みが功を奏したのか、Bくんは放課後等デイサービスで非常に楽しく過ごす様子が増え、ほとんど休むこともなりなり、他児と関わる様子も増えていきました。

学校で疲れても、放課後等デイサービスではゆっくりくつろいだり、また、活動で発散することでエネルギーを蓄える様子も見られるようになりました。

Bくんの様子を見ていると、まさに、〝サードプレイス″が確立していると感じます。

この事例は、過ごしの幅や場所が少なかった子どもが、放課後等デイサービスでの過ごしが充実してきた中で、人と過ごすことに居心地の良さや楽しさを見出すことができたケースです。

この事例から、家庭や学校以外にも大切となるサードプレイスを確立させていくためには、子どもが安心でき、そして、他者との交流場所を作り出す工夫が非常に必要になるのだと実感させられました。

 

関連記事:「発達障害児にとって大切な〝サードプレイス″の価値について考える

 

 


以上、【社会性への支援⑤】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。

社会性の発達には、子どもが安心できる環境、信頼できる大人、楽しく活動できる活動内容、他児との交流など様々な要素があると思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で、子どもの社会性の発達に少しでも貢献していけるように、日々の取り組みを見直していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


参考となる書籍の紹介は以下です。

関連記事:「発達障害の〝社会性″に関するおすすめ本5選【中級編】

スポンサーリンク

-支援, 発達障害, 社会性

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害児に見られる過度なマイペースへの対応】療育経験を通して考える

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。 療育現場には、自分のペースで物事を進める子どもも少なからずおり、中には、過度な〝マイペース″な子もいます。 例えば、遊びを …

発達障害児にとって大切な〝サードプレイス″の価値について考える

発達障害のある子どもたちにとって過ごしの場がとても大切です。 過ごしの場には、家庭や学校が主にあるかと思いますが、それ以外の第三の場所としての〝サードプレイス″も大切だと考えられています。 &nbsp …

【心の理論から見た自閉症への支援②】療育経験を通して考える

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。 自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の人たちは、心の理論の獲得に困難さがあると言われていま …

発達障害の治療について-理解と共感から考える-

発達障害の治療には様々なものがあります。 治療する上で重要なのが問題を見極めることです。 そして、その問題が生物学的要因か?心理学的要因か?社会的要因か?を見分けることがその後の治療(支援)においてと …

【発達障害児のタブレットの有効な活用方法とルール設定について】療育経験を通して考える

教育現場では、子どもが一人一台、パソコンやタブレットなどが普及される時代になってきています。 また、家庭でもパソコンやタブレットなどを通して、子どもが様々な情報にアクセスしたり、ゲームやSNS等の活用 …