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【教えることで人は成長する】異年齢における遊びを例に考える

投稿日:2023年6月25日 更新日:

子どもは異年齢間の関わりの中で成長・発達していきます。

異年齢間の関わりの中でも、年上の子どもが年下の子どもに様々なことを教える姿はよく見にする光景かと思います。

 

それでは、年上の子どもが年下の子どもに教えることで、年上の子どもにとってどのような成長が見られるのでしょうか?

 

そこで、今回は、教えることで人は成長するについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、異年齢における遊びを例に理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.」です。

 

 

教えることで人は成長する:異年齢における遊びを例に考える

以下、著書を引用しながら見ていきます。

従来型の学校での異年齢間の個人指導プログラムについていくつかの調査は、指導された概念について、指導する側と指導された側の双方の理解が高まったことを明らかにしています。

 

年長の子が年少者にある概念を説明するとき、それは、自分の理解の曖昧な部分(や、あまり考えないでしていたこと)を明らかにすることに役立ちます。

 

著書の内容から、学校を対象とした調査結果から、異年齢間での個別指導プログラムにおいて、指導をされた側だけでなく、指導をした側の理解も向上したとの結果が出ています。

上記の研究結果を踏まえると、同様のことが異年齢間の〝遊び″でも生じることが想定できます。

つまり、遊びをリードする(教える)年上の子どもにとっても、遊びを教えることで教える対象への理解が深まっていくということです。

著書の中では、年上の子どもが年下の子どもに概念を説明する際に、それは、自分が曖昧になっている理解をよりクリアに整理することを助けると記載されています。

自分が持っている知識や経験を人に教える・説明することで、その知識や経験についての理解が深まったと感じる人は多いと思います。

教えることが最大の学びである、わかるとは説明できること、アウトプットを通して人は情報を整理する、などこうした内容を著者は何かの本で読んだことがありますが、実際の体験からも納得がいきます。

 

 


それでは次に、教えることを通して人が成長することに関して、著者の療育経験から見ていきます。

 

著者の経験談

著者の療育現場には様々な子どもたちがいます。

年齢層も多様なため、上級生が下級生に遊びを通して様々なことを教える・説明する様子もよく見られます。

例えば、工作の作り方、ごっこ遊びのルール、ボードゲームやカードゲームのルール、ゲームやアニメの情報、など様々な場面で見られます。

年下の子どもにとっては以上の遊びのレクチャーを受けることで遊び方を理解した、うまく遊べるようになった、楽しく遊べるようになったなどの変化があります。

一方で、教える・説明する年上の子どもにも同様に成長・発達があると感じます。

 

いくつか例を見ていきます。

小学校高学年のA君は、河原での石を投げることが好きであり、水切り(石が水の上をはねて飛ぶ)もできます。

A君は水切りを知らない自分よりも年下の子どもたちに親切に教える様子があります。

そして、短い時間の中ではありますが教えていくにつれて、石の性質(平べったい方がうまくいく)、投げ方(水平に投げる)など、教えながら自分が日頃行っている石の投げ方に関する情報をうまく動作と言葉を結びつけながら整理していく様子が見られました。

 

小学校高学年のB君は、格闘技好きな元気な男子です。

B君はパンチやキックなど多彩な技を持っており、その様子に憧れを持つ年下の子どもたちに優しく教える様子があります。

最初はB君もどのように教えればいいのか戸惑いながらも、実際にやってみせる→相手にやってもらう→改善点を動作と言葉で伝える、を繰り返していきながら、徐々に伝える内容の質が高まっていくのを目にすることができました。

 

こうした例は著者の療育経験の中の一部ですが、改めて異年齢間の関わりの中で人は育っていくことを感じさせてくれた大切な事例だと思います。

 

 


以上、【教えることで人は成長する】異年齢における遊びを例に考えるについて見てきました。

教えることで人は成長することは、大人においても同様にあると思います。

著者も自分が知らないこと(知識や経験)を後輩などに伝える際に、伝えていくうちに自分自身もそれに関する情報がうまく整理されていくことがよくあります。

教えることで人が成長するのは子どもから大人まで多くの人に通するものだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も異年齢間で教える・教えられるといった双方の関係性を大切にしていきながら、教える人にも成長があるという視点も踏まえて、さらに質の高い療育を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【年下と遊ぶことの価値とは何か?】異年齢における遊びの大切さについて

 

ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.


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