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【人はどのようにして相手の心に気づくのか?】定型発達者と自閉症者の違いから考える

投稿日:2023年4月30日 更新日:

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とした発達障害です。

自閉症の人は心の理論に困難さがあるということが様々な研究でわかっています。

心の理論とは、相手の心を理解する力のことであり、自閉症の人たちは心の状態も含めて人に注意が向きにくい(気づきにくい)と言われています。

 

それでは、人はそもそもどのようにして相手の心に気がつくことができるのでしょうか?

 

そこで、今回は、人はどのようにして相手の心に気づくのかについて、定型発達者と自閉症の違いから考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「千住淳(2014)自閉症スペクトラムとは何か-ひとの「関わり」の謎に挑む.ちくま新書.」です。

 

 

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自閉症者の心の理解について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

自閉症を抱えた方は、相手の考えていることを推しはかったり、相手の動きをまねしたり、相手の目を見たりすることがまったくできないわけではない、ということです。

 

ただ、こういった理解が「できる」ことと、その理解に基づいた行動を「自発的に行う」こととの間に違いが生まれることが、自閉症者を対象とした研究からは繰り返し報告されています。

 

著書の内容から、自閉症の人は、相手の心の状態を理解すること(推測すること)、相手の行動を模倣すること、相手と視線を合わせることができないというわけではないと考えられています。

人の心を理解するためには、相手の意図や心情などを推測することに加えて、相手の動きを真似る力、そして、相手と視線を共有したり相手の視線を追う力なども必要になります(これらの関連性や因果関係などを説明したものもあります)。

例えば、他者の行動を真似ることは、他者の行動の意図を理解する能力も必要となり、また、相手の視線を追う力も相手が何に意識を向けているのかその心の状態に注意を向けることでもあります。

もちろん、こうした特徴には、個人差があります。

例えば、視線がある程度は合うことが多いという人から、ほとんど合わない人まで多様だと感じます。

一方で、著書にあるように、自閉症の人は、心の理解の推論や模倣、視線の共有について、〝自発的に行うことが難しい″と考えられています。

 

 


それでは次に、この点について定型発達者を参考に自閉症の人との違いを見ていきます。

 

定型発達者の心の理解について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

「定型発達」の範囲に入る人たちのほとんどは、なぜか相手に注意を向け、相手の気持ちや考えに思いを巡らせてしまいます。

 

著書の内容では、定型発達者の心の理解の仕方は、〝自然と″相手に注意や意識が向きやすいことが特徴としてあると考えられています。

これまで見てきた自閉症の人が相手の心の理解はできるが〝自発的に″が難しいのに対して、定型発達者の心の理解は〝自然に″できるといった違いあります。

つまり、定型発達者は人の心の状態に〝自然に″注意が向きやすいのに対して、自閉症の人は、〝自然に″注意が向きにくいといった違いあります。

定型発達者は、なぜか理由はよくわかっていませんが、人に(人の心に)〝自然と″注意が向く傾向があり、そのため、人の心の理解が深まるようなのです。

 

それでは、以上の違いや特徴を踏まえて、自閉症の人の心の理解を支援するためには何が必要となるのかについて見ていきます。

 

 

心の理解を支援することについて

以下、著書を引用しながら見ていきます。

社会で生きていくために必要な知識の多くは、親や他の大人から学ぶものです。自閉症を構成する「他者との関わりやコミュニケーションの困難さ」が、こういった「他者の学び」の障害につながるのであれば、本人の学ぶ力をできる範囲で訓練する、教え方を工夫するなどして、自閉症が社会参加のハードルとならないよう、適切な支援を行う必要があります。

 

一般的に私たちは他者から生きていくために必要な知識を伝承されることで生きていくための知恵を学習していきます。

一方で、著書にあるように、自閉症の人は、他者に注意や意識が向きにくい生来的な傾向があるため、他者のからの伝承によって様々な事柄を学習することが困難となる場合があります。

そのため、自閉症の人が、社会にうまく参加していくためには、他者に注意や意識が向きやすい状態を作っていき、その上で、他者が伝承したい内容について伝え方を各々に応じて工夫していくことが必要となります。

つまり、定型発達者が〝自然と″他者の行動を見て学習するのに対して、自閉症の人には、まず他者の行動へと注意を促すこと、その後に、伝えたい内容を教えていくというプロセスが重要になると考えます。

例えば、メモして欲しい内容を説明する場合には、話している人に注意を向けるように声掛けし(○○さんが大切な話をしているので聞いて下さいなど)、その後、その人に応じてメモの取り方などをレクチャーしていく(重要な個所を伝える、視覚情報で伝えるなど)などのプロセスが考えられます。

人に注意を向けることが自然とできる人からするとその重要性はあまり感じることがないかもしれませんが、著者は自閉症の人との多くの関わりを通じて、人に注意を向けることを促す必要性に迫られた場面が多くあります(促さないとなかなか気づけないという実感です)。

そのため著者は、当たり前に人に意識を向けることが自閉症の人には難しいことを経験していますので、今回見てきた内容の必要性は実感しています。

 

 


以上、【人はどのようにして相手の心に気づくのか?】定型発達者と自閉症者の違いから考えるについて見てきました。

人への注意や意識を〝自然に″向けることができる・できないことの違いは、対人コミュニケーションにおいて、様々な困難さが生じる可能性があるのだと考えさせられます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の人の認知特性だけではなく、定型発達の人の特徴にも目を向け、人への理解を深めていきながら、私が関わる療育現場にその知見を還元していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉症者の心の理論の特徴について】自閉症者はどのように心を理解しているのか?

関連記事:「【なぜ自閉症の人はまねることをしないのか?】自閉症児・者の模倣の特徴について考える

関連記事:「【なぜ自閉症の人は人と目が合わないのか?】自閉症児・者の視線の特徴について考える

 

千住淳(2014)自閉症スペクトラムとは何か-ひとの「関わり」の謎に挑む.ちくま新書.

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