「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。
心の理論には〝実行機能″といった認知機能が関連していると言われています。
関連記事:「【心の理論と実行機能の関係について】誤信念課題を通して考える」
認知機能といった視点以外にも、心の理論と実行機能には共通する特徴があると言われています。
それでは、心の理論と実行機能の両者の共通点とは一体どのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、心の理論と実行機能の関連について、2つの共通点から考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.」です。
心の理論と実行機能の2つの共通点とは何か?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
実行機能と心の理論(誤信念課題)の関連への注目には、大きく2つの理由がある。発達の時期が同じであることと、両者が脳の同じ領域で処理されている可能性があることである。
心の理論と実行機能が前頭葉の同じ領域で処理されているという指摘とともに、心の理論と実行機能のさまざまな側面が(重なって)発達する3つのピークはそれぞれ脳領域の成熟が加速する時期とも重なっている。
著書の内容から、心の理論と実行機能の2つの共通点として、まず一つ目として、発達時期が同じであること、二つ目として、同じ脳領域で処理されている可能性があると記載されています。
1.発達時期が同じ
一つ目の発達時期の共通性についてさらに見ていくと、心の理論にはある節目となる発達段階があると言われています。
例えば、一次の心の理論の獲得時期は4~5歳頃、二次の心の理論の獲得時期は6~9歳頃、青年期には他者の様々な心的状態を読みすぎてしまうなどの段階が一般的な発達では見られます。
こうした心の理論の発達と重なって実行機能も成長していくと考えられています。
人の心は様々な場面や状況に応じて変化します。また、様々な人間関係の中で心の状態の理解は複雑になっていきます。
例えば、Aさん一人の行動意図や心情の理解は単純であっても、AさんとBさんCさんといった三者関係を含めた心の状態の理解となると、理解に関する情報量が増えます。
情報量が増えるということは、記憶しておく内容の多さ、必要な情報とそうでない情報を選択するなど高い認知機能が必要になります。
以上の観点から見ても、心の状態を深く理解していくためには、実行機能といった認知機能の発達が重要だと言えます。
2.処理される脳の領域が同じ
二つ目の脳の領域の共通性については、脳の前頭葉を中心とした処理が行われている可能性が高いと言われています。
もちろん、脳の様々な領域が連動して機能している面があるため、一概に特定の領域のみの処理が行われていると結論づけることは難しいかもしれませんが、中核を担っているという意味では共通している可能性があるのかもしれません。
以上、【心の理論と実行機能の関連について】2つの共通点から考えるについて見てきました。
これまで見たきた内容を踏まえて言えることは、心の理論の発達には様々な他の要因・機能も影響しているということです。
実行機能の高まりが心の理論の発達を促す、心の理論の発達が認知機能の高まりを促すといった関係にあり両者は並行して発達していくのかもしれません。
人の発達には様々な要因が関連しているとの知見は発達心理学を中心とした様々な研究領域で明らかになってきています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も人間の発達といった複雑性について様々な要因の関連性から考察を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.