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【言葉の発達で大切な内面化のプロセスについて】療育経験を通して考える

投稿日:2023年3月29日 更新日:

言葉には様々な機能や役割があります。

そして、言葉が発達するためには様々な要素が関連しています。

著者は発達障害など発達に躓きのある子どもたちに対して療育をしています。

保護者の方からの相談内容には、言葉の発達やコミュニケーション能力などの話題が比較的多いという実感があります。

その中で、療育現場で関わる子どもたちの言葉の発達は非常に個人差があると実感しています。

 

それでは、言語の発達過程でどのような視点が大切となるのでしょうか?

 

そこで、今回は、言葉の発達で大切な内面化のプロセスについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「小椋たみ子・小山正・水野久美(2015)乳幼児期のことばの発達とその遅れ-保育・発達を学ぶ人のための基礎知識-.ミネルヴァ書房.」です。

 

 

言葉の発達で大切な内面化のプロセスについて

以下、著書を引用しながら見ていきます。

人間の発達というのは、非常に複雑なプロセスを経て達成されていくものと思います。やはり、子どもの内面世界を通って、子どもの中でさまざまな経験がまとめられて、子どもの言語表現が出てくるわけです。学習の結果はすぐには現れません。内面世界、「内面化する時間」が必要です。だから発達には時間を要すると言えるでしょう。

 

著書の内容から、言葉の発達には時間がかかり、その前提として、子どもが自らの経験をまとめ上げていくという〝内面化のプロセス″〝内面化に要する時間″が大切だと言えます。

人間の発達は、言葉にせよ、歩行にせよ、相手の気持ちを理解するにせよ、様々な複雑な要素が相互作用しながら発達していきます。

例えば、〝歩くことができる″、という運動機能を一つとって見ても、首が座る→ハイハイができる→座位がとれる→つかまり立ちができる→歩ける、など様々なプロセスがあります。

つまり、ある学習が可能となるためには、それまでの様々な学習が積み重なっていること(レディネスが整っていること)が重要だということです。

そのため、実際に行為として認識できる部分は、様々な発達過程の中の氷山の一角だと言えます。

そして、学習の過程、内面化のプロセスには、非常に個人差があるという理解も忘れてはいけない点になります。

 

 

著者の経験談

著者の療育現場にも言葉の遅れが見られる子どもたちが多くいます。

例えば、自分の思いや気持ちをなかなか言葉にできない、自分の気持ちや考えを相手にどのように伝えていいかわからない、相手の言っている話の内容が理解できない、複数人など集団になるとうまく会話ができない、など様々あります。

著者はこうした子どもたちへの言葉の発達支援で大切にしていることがあります。

それは、子どもたちと様々な体験を共有していくこと、その共有体験の中で様々な言葉を交わしていくというものです。

そのため、ある場面を取り上げて、会話のスキルを伝える、というよりも様々な経験を共に行うことを大切にしています。

共有体験を通して、子どもたちの中には様々な言葉の発達が見られます。

例えば、自分からの発信が乏しかった子が自分の思いや気持ちを伝えることが増えたり、相手の心情の理解の仕方が多様化したり、相手と言葉でのやり取りが増えたりなど、様々な言葉の発達が見られます。

こうした例は、会話のスキルを教えたものが般化されたというものよりも、共に同じ体験を積み重ねてきたものの中から獲得された言葉の発達であるように思います。

現に、子どもたちの話の内容は、これまでの体験をベースとしたものが多く、体験を通して紡ぎ出された言葉であるように思います。

そして、こうした変化は、著書にもあったようにゆっくりと時間をかけて育っていきます。

上記の子どもたちの変化は、少なくとも年単位で感じる変化です。

著者自身、年単位で子どもたちと関わる中で、〝内面化のプロセス″を実感できようになりました。

つまり、子どもたちは、表面上大きな変化はなかったとしても、内面では大きな変化を遂げる準備をしているということです。

もちろん、こうした変化には、子どもたちが充実した活動を積み重ねているという経験が前提として大切だと思います。

 

 


以上、【言葉の発達で大切な内面化のプロセスについて】療育経験を通して考えるについて見てきました。

物事の学習には時間を要します。

学習の成果が形となり表面化するためには、今回取り上げた〝内面化する時間″がとても大切だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちの内面の成長に少しでも貢献していけるように、日々の取り組み内容を充実させたものにしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【共有世界から見たコミュニケーション支援の重要性】発達障害児支援の経験を通して考える

 

 

小椋たみ子・小山正・水野久美(2015)乳幼児期のことばの発達とその遅れ-保育・発達を学ぶ人のための基礎知識-.ミネルヴァ書房.

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