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ワーキングメモリ 同時処理

ワーキングメモリと同時処理の関係について【発達支援の現場から考える】

投稿日:2022年12月27日 更新日:

ワーキングメモリとは、作動記憶とも呼ばれ、聞いた情報を一時的に記憶に保持し、その情報を操作する力なります。

 

関連記事:「ワーキングメモリについて

 

ワーキングメモリには、同時処理といって日常の様々な情報を同時に処理する力と関連があると言われています。

 

それでは、ワーキングメモリに困難さがあると、具体的に生活上どのような支障がでるのでしょうか?

 

そこで、今回は、ワーキングメモリと同時処理の関係を踏まえた生活上の困難さについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩波明(監修)小野和哉・林寧哲・柏涼ほか(2020)おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線.光文社新書.」です。

 

 

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ワーキングメモリと同時処理の関係について

以下、著書を引用します。

複数の情報を統合してどう行動するかを決めたり、物事の優先順位をつけたり、注意を向ける先を絞ったりと、ワーキングメモリにはさまざまな働きがあります。

 

発達障害のある人は、同時並行的に情報を処理することが苦手で、一つのことに集中してしまいがちですが、それにはワーキングメモリの偏りが関わっていると考えられます。

 

著者の内容から、ワーキングメモリは、複数の情報を統合して計画を立てて実行する力、優先順位を決める力、注意の配分と維持などに影響してくると考えられています。

そして、複数の情報に目を向け処理する同時処理にもワーキングメモリは関わってくると記載されています。

 

 


それでは、同時処理とワーキングメモリの関係について簡単な例を上げて見ていきます。

例えば、学校の授業などで、先生の話を聞きながら、板書をする、という行為を見ても、先生の声という聴覚情報(聴覚的記憶)、黒板に書いてある文字といった視覚情報(視覚的記憶)、を同時に処理していく必要があります。

また、職場環境では、他の職員の話を聞きながら、電話がかかってきて電話対応をしたという状況において、直前の職員の話の内容を記憶に保持し、電話の内容の情報も保持し、次への行動に対して優先順位を踏まえて計画を立てて実行する必要があります。

どちらの例も様々な情報を並行で処理し、その際に、一時的な記憶の保持・操作といったワーキングメモリが必要になります。

こように、我々の環境には同時に様々な情報を処理する力を求められることが多くあります。

この際に、ワーキングメモリが非常に重要となってくるというわけです。

 

 


それでは次に、著者の発達支援の現場からのエピソードを取り上げて、ワーキングメモリと同時処理の関係を踏まえた生活上の困難さについて見ていきます。

 

著者の体験談

著者が勤める発達支援(療育)現場には、ワーキングメモリに苦手さを持つ子どもたちがいます。

小学校5年生のA君を例に見ていきます。

A君は、事業所に着くとやりたことが複数思い浮かぶことがあります(逆になかなか決めれないこともあります)。

そのため、事前にA君と時間を確認してその日にできること・やりたいことの計画を立てます。

そして、やりたい活動が決まったら、簡単なルールを立てます。

A君が安心して楽しく過ごせるためのルールです。

同時に複数のことを行うことが難しいA君ですので、計画は時系列でシンプルに立てたり、ルールの項目は必要最小限に紙に書き・口頭で伝えるなどの対応をしています。

しかし、A君は、自分のやりたい思いが衝動的に高まると、事前に立てたルールから逸脱する行動をとることがよく起こります。

また、A君はいざ遊びが始っても周囲の刺激(他児が遊ぶ様子など)に振られたり、自分が唐突にやりたいという思いからか、他の遊びをしたいと帰り際など残り時間が少ないときに急に要望し始めようとすることもあります。

このように、事前に立てた予定やルールを忘れる行為や急な活動変更、そして、時間管理の難しさなどは、A君のワーキングメモリや同時処理の苦手さから生じているものも多くあるように思います(もちろん、他の要因も想定されます)。

我々スタッフは、A君に、これまで通りに丁寧に本人のやりたい気持ちをベースとした、活動の組み立てやルール設定などをするように今も継続して取り組んでいます。

また、記憶力を補助するために、細かく時間の提示などもしています。

注意の転導性は高いA君ですが、一度、定着した活動やルールなどは決まったルーティンとして覚え、一つのことを継続して取り組める強さもあります。

こうした取り組みにより、年々、A君はできる所が増えているという実感もあります。

 

 


以上、ワーキングメモリと同時処理の関係について【発達支援の現場から考える】について見てきました。

ワーキングメモリと同時処理は互いに関連性を持ちながら、生活の様々な場面で複数の情報を処理する際に活用していることを考えさせられます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場でワーキングメモリや同時処理に苦手さを持つ子どもたちに対してできる支援を考えていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

岩波明(監修)小野和哉・林寧哲・柏涼ほか(2020)おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線.光文社新書.

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