発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

発達障害 診断

発達障害の診断名はなぜ変わることがあるのか

投稿日:2022年12月2日 更新日:

著者は現在に至るまで発達障害関連の仕事を多くしてきました。

その中で、発達障害の診断名が変わる人がいるということを時々耳にします。

しかし、発達障害とは、先天性の脳の機能障害であるため、生育歴を含め、現在の状態を的確にアセスメントしていくことで、概ね診断名はどの医師が行っても変わらないものだという認識があったため、診断名が変わるということに違和感がありました。

仮に、診断名が変わることがあるとして、それは、診断名を適切にくだすために必要な情報が取れなかったことが考えられます。

また、発達障害の診断基準などは時代に応じて変わり続ける所もあるため、時代の流れが影響している面も考えられます。

 

このように、診断名が変わる理由には様々な要因があるのかもしれませんが、何か納得のいく理由はあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害の診断名がなぜ変わることがあるのかについて考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「米澤好史・松久眞実・竹田契一(2022)特別支援教育 通常の学級で行う「愛着障害」サポート 発達や愛着の問題を抱えたこどもたちへの理解と支援.明治図書.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

発達障害の診断名はなぜ変わることがあるのか

著書の中では成長に伴い変化する診断についての例の記載があります(以下、著書引用)。

幼児期

多動、不注意

ADHD?

 

小学校低学年

読み書き苦手 LD?

 

小学校高学年・思春期

対人関係

ASD?

 

上記の引用が示すことは、ある一人の人物を例に、発達時期によってこれまでと違う診断名が浮上してきた例です。

 

幼児期に多動、不注意などが目立つとADHDの診断がつきやすいということです。

実際にこの時期に、ADHDの診断がつきやすいことが多いと言われています。

そして、小学校に上がると、学習面での躓きが顕著になりLDの診断がつきやすくなるということです。

学校の勉強の中心は、読み書き計算ですので、学習障害がある子どもはここで特定されやすいということです。

そして、小学校高学年以降になると、対人関係の問題が浮上し、ASDの診断がつきやすいということです。

小学校高学年頃になると、会話のレベルも高度になってくるため、自閉症の特性である相手の意図理解の苦手さなどが影響して会話がうまく成立しないということが出てくるということです。

 

さて、上記の人はどの診断名が妥当になるのでしょうか?

著書の中では、この人物はADHDもLDもASDも全て併存していた、ということになっています。

 

それでは、何故、このように時期によって診断名が変わるのでしょうか?

著書の中では、以下の回答をしてます(以下、著書引用)。

実はこどもの診断名が変わるのではないのです。成長の時期によって目立つものが違うのです。

 

つまり、本来3つの特性(ADHD、LD、ASD)を持っていても、それらの特性が問題として顕著になるのは、時期や環境からの影響を強く受けるからだということです。

それによって、障害の出方、つまり、診断名も変わってくるということになります。

逆に、もともと様々な発達特性を持っていても、その子がうまく環境に適応できていれば障害とはならないということです。

著者は今回参照した資料を見て、改めて、環境の大切さを実感しました。

つまり、障害は環境や社会が生み出している所も多くあるということです。

 

 


以上、発達障害の診断名はなぜ変わることがあるのかについて見てきました。

診断を受けることは、診断を受けた人が周囲から理解が得られ、必要な支援を受けることができるために行うものです。

そのために、大切なことは、問題となっていることをできるだけ正確に把握することと、その問題への予防と対応だと感じています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も一人ひとりの発達理解と発達支援に少しでも貢献していきたい思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「発達障害の強弱・重複(併存)について考える

関連記事:「発達障害の重複(併存)について-療育経験から理解と支援について考える-

 

米澤好史・松久眞実・竹田契一(2022)特別支援教育 通常の学級で行う「愛着障害」サポート 発達や愛着の問題を抱えたこどもたちへの理解と支援.明治図書.

スポンサーリンク

-発達障害, 診断

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

発達障害という概念を知ることの大切さ:自閉症を例に考える

自閉症、ADHD、学習障害、発達性協調運動障害などのことを発達障害と言います。 自閉症は対人関係やコミュニケーションに困難さを有するもので、ADHDは不注意・多動性・衝動性などを主な特徴としています。 …

【発達障害児と信頼関係をつくるために大切な2つのこと】自閉症を例に考える

発達障害のある子どもと信頼関係をつくることはとても大切なことです。 著者は療育現場で様々な子どもたちとの関わりの中で、信頼関係を作ることの大切さを感じる一方で信頼関係をつくる難しさを感じることもありま …

【発達障害児の癇癪・パニックへの対応】応用行動分析学の視点を通して考える

発達障害児は、発達特性や未学習・誤学習などが影響して正しい行動を学んでいない・学ぶ機会がない場合あります。 正しい行動を学習していくためには、困り感や問題行動などの背景要因を分析し、どのような対応をし …

【〝ソーシャルスキルトレーニング″で最も身につけたいスキルとは?】発達障害児支援の現場から考える

発達障害児・者へのコミュニケーションや社会性を向上させるための練習方法として〝ソーシャルスキルトレーニング(SST)″があります。 著者は以前、発達障害児への〝ソーシャルスキルトレーニング(SST)″ …

【レジリエンスを高めるために大切なこと】発達障害児支援で大切なポジティブ経験の重要性

著者は療育現場(発達障害児支援の現場)で様々な子たちを見てきています。 子どもたちを見ていると〝ストレスに強い″子ども、〝ストレスに弱い″子どもがいます。 こうした特徴の背景には、生まれ持っての性格な …