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発達障害児の感覚の問題への支援【感覚探求について】

投稿日:2022年11月21日 更新日:

発達障害児は、様々な感覚の過敏さや鈍感さといった感覚の問題を持つことが多いと言われています。

 

関連記事:「発達障害の感覚調整障害について【4つのタイプから考える】

 

それでは、発達障害児の感覚の問題に対して、どのような支援の視点があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児の感覚の問題への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、感覚探求への支援について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩永竜一郎(編著)(2022)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ 発達障害のある子の感覚・運動への支援.金子書房.」です。

 

 

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発達障害児の感覚の問題への支援【感覚探求について】

著書の中では、感覚探求に対する支援として、①感覚探求②感覚渇望の二つの支援の視点について記載されています。

それでは以下、それぞれについて説明していきます。

 

①感覚探求(sensory seeking)

感覚探求とは、例えば、手をひらひらさせる、自分の体をコマのようにクルクル回すなど、自らの身体を通じて、不足した感覚を取り込む行為です。

感覚探求は、自分で感覚を取り込み調整する行為であるため、感覚過敏(過剰反応)と感覚の鈍感さ(過小反応)のある子どものどちらにも見られると言われています。

 

それでは、こうした感覚探求への支援には何が必要なのでしょうか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

感覚探求に対する支援は、対象児にとって自己調整にはたらきやすい感覚を目的的な活動として生活(習い事、趣味活動、お手伝い等)に取り入れることや不安などの情動反応を引き起こしている要因への対処が重要となる。

 

著者は、関わる子どもたちの好きな感覚を活用してそれを遊びに取り入れるように心がけています。

例えば、触覚で水の感覚が好きであれば、水遊びを中心とした活動、水を使用した感触遊び(片栗粉に水を入れるなど)など、好きな感触を通して遊びを広げていくことを考えるようにしています。

また、前庭感覚や固有覚などに対しては、体を使った遊び、アスレチック遊びやスポーツ、水泳、格闘技などもその子の興味に合っていれば良いと思います。

実際に、こうした身体を通した目的的な活動を行うことで行動が統制されてきたと感じる子どもたちも多くいます。

 

 

②感覚渇望(sensory craving)

感覚渇望とは、少し聞きなれない言葉かもしれませんが、感覚探求の行動そのものが報酬となることで、感覚探求の行動を繰り返すことを言います。

研究者の中には、感覚探求と感覚渇望を区別している方もいます(今回もこの観点より両者を分けて説明しています)。

感覚渇望は、重度の障害のある人たちに多くみられます。

 

その理由について以下、著書を引用して見ていきます。

その理由として、主体的に取り組める活動が限定されるため、感覚刺激を求める行動を他の行動に置き換えにくいことが考えられる。

 

著書の内容から、重度の障害のある人たちは、自ら外の世界に働きかけることに制限があるため(知的機能、社会的能力などが影響し)、一度、自分が好む感覚刺激を得る方法を学習すると、その感覚を得る行動を繰り返すといった特徴があると言えます。

著者は重度の知的障害児・者や重度の自閉症児・者と関わる機会がこれまで多くありましたが、その中で、感覚渇望の行動だと思われる行動が多く見られていたように思います。

もちろん、当時の著者は感覚渇望といった用語を知らなかったので、その行動の意味を深く追求できていなかったように思います。

当時、感覚渇望の例として、水や砂遊びを永遠と繰り返す、好きな特定のおもちゃを絶えず手放すことなく感覚遊びに没頭している子どもたちもいました。

 

それでは、こうした感覚渇望への支援には何が必要なのでしょうか?

以下、著著を引用しながら見ていきます。

感覚渇望への支援は、自己の身体ではなく外部の環境に働きかけて探索、操作したいという内発的動機づけの一つである「操作動機づけ」を高める支援が大切になる。

 

感覚渇望の支援で大切なことは、自分の体に注意を向けている状態から、外界の対象物などを通じて世界を広げていけるような働きかけをしていくことです。

そのため、感覚渇望の生じやすい重度の障害のある子どもたちへの支援として、子どもたちにとってわかりやすい教材教具を考案・作成・実施することがとても大切です。

著者も、障害児保育の現場で、様々な教材教具を失敗作が多くを占めながらも創意工夫して作成したことを思い出します。

時々出る成功作は、子どもの興味関心を引き、対象物を操作したいといった行動意欲をかき立て、自分の体より物の操作への学習意欲が高まったといった実感があります。

その子に合った教材教具を活用していくことで、感覚渇望を遠ざけることができるのだと当時の現場を思い出すと実感できます。

 


以上、発達障害児の感覚の問題への支援【感覚探求について】について見てきました。

著者は、感覚探求といった用語は知っていましたが、感覚渇望という用語があることは最近になって初めて知りました。

感覚に関する様々な用語を知っていく中で改めて感覚の世界は非常に深く、子どもたちの行動を知る手掛かりが豊富にあるのだと実感しています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害児の感覚の問題への理解を深めていきながら、実践で役立つ知見を積み上げていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

岩永竜一郎(編著)(2022)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ 発達障害のある子の感覚・運動への支援.金子書房.

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