子どもにとって親以外のとの関わりはとても大切です。
特に、幼稚園や保育園などに通い始める頃から、親以外との関わりが増えていきます。
子どもは幼稚園や保育園で、保育者を愛着(アタッチメント)対象として関係性を深めていきます。
関連記事:「保育者との愛着関係について【保育者は愛着対象となりうるのか?】」
それでは、保育者と親子では愛着関係に違いはあるのでしょうか?
そこで、今回は保育者との愛着関係について、親子との違いについて、臨床発達心理である著者の意見も交えてお伝えしていきます。
今回参照する資料は「遠藤和彦(編)(2021)入門アタッチメント理論:臨床・実践への架け橋.日本評論社.」です。
保育者との愛着関係について【親子との違いはあるのか?】
以下、著書を引用しながら見ていきます。
誕生後から密に接している親との間で形成された内的作業モデル(IWM)が、子どもが保育者との間に築く関係にどの程度、あるいはどのように影響するのかは十分明らかになっていません。
著書の内容から、現在の研究結果からは、子どもが特定の養育者(親など)との間に結んだ情緒的な絆(愛着スタイル)が、保育者との愛着関係にどのように影響しているのかは、今のところ、わかっていないということになります。
つまり、親子の愛着関係の質は、保育者との愛着関係の質に影響している部分もあれば、そうでない部分もあるということが予測できます。
それに、関連して引き著書を引用して見ていきます。
しかし、親との関係が乳幼児期の親以外との人間関係を強く規定するというわけではなく、子どもは個別の相手とのやりとりを経て、それぞれの関係の質を作っているのだと考えられます。
著書の内容には、子どもは親などの特定の養育者との愛着関係以外の関係を個別に自らの経験で作っていくことが考えられると記載されています。
つまり、親とは異なる愛着関係を、保育者との関わりの中で作っている可能性があるということです。
さらに、著書では幼稚園における園児の振る舞いは、親子関係によるものではなく、幼稚園にいる保育者との関係がより強く影響しているとも記載されています。
つまり、子どもは自分が置かれている場面や文脈によって、関係の質、行動のあり方などを変えていることも考えられるというわけです。
それでは、次に以上の内容を踏まえて著者の意見をお伝えします。
著者のコメント
幼稚園や保育園の中では、保育者が愛着対象となります。
愛着対象となる保育者が、子どもたちの行動に対して、どのような共感的態度を示すのか、そして、どのような反応(子どもたちの発信に敏感に察知するかなど)を見せるのかでも、子どもたちの行動は変化してくるのだと思います。
著者も昔、未就学児(3歳頃~6歳まで)を対象に療育をしていました。
その経験から言えることは、家庭では見られない関わりを保育者に見せることもあるということです。
少なくとも、家庭とは異なる関係の深まりがあるようです。
例えば、母子家庭で家ではダイナミックな遊びができない(そのような関わりをする人がいない)場合の子どもがおり、この子が著者をダイナミックな遊びをしてくれる対象として著者のことを見ており、そうした関わりの中で関係性(愛着関係)が深まっていったというケースもあります。
この子は、スキンシップで母との間で行っていた抱っこや膝の上に座るといったものは著者との間では少なく、むしろ、こちょこちょ遊びや高い高いなどダイナミックなスキンシップによって安心する様子が多く見られました。
こうしたやり取りが、愛着関係の基盤となったと言えるかと思います。
これはある意味、園の中での遊びをベースとして(園での環境や人という環境の違い)、その中で、著者が子どもの発信を察知→応答するの繰り返しの結果、徐々に深まっていった関係性だったように思います。
もちろん、著者から子どもに働きかけ→子どもが応答という場合もあります。
こうした園という環境の中で、特定の保育者との関わり(共有体験)を通して、その保育者に見せる愛着行動には親との違い、そして、他の保育者との違いがあるように思います。
以上、保育者との愛着関係について【親子との違いはあるのか?】について見てきました。
これまで見てきた参考資料や著者の経験談などをまとめると、親とは異なる愛着行動を子どもは保育者との間に形成していることが考えられます。
つまり、子どもは大人になるに従い、対人関係を発展させていきながら、人によって異なる愛着行動を示していくようになるのだと考えられます。
こうした領域の研究は、まだまだ発展途上であるかと思いますが、人は親以外の様々な人たちとの対人ネットワークの中で生きていく必要があるため、今後、さらに研究が必要になる領域かと思います。
そして、保育者も子どもの愛着対象になり、そして、子どもは親とは違う愛着行動を特定の環境の中で保育者に示すことを考えると、著者も、療育現場で子どもたちと、より良い関係づくりをしていくことの重要性を再認識させられました。
今後もより良い支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
遠藤和彦(編)(2021)入門アタッチメント理論:臨床・実践への架け橋.日本評論社.