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自閉症の二次障害について:過剰なノルマ化と意欲低下から考える

投稿日:2020年5月15日 更新日:

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の人たちは、すべての精神障害(うつ、強迫性、解離、摂食障害など)が併存する可能性があると言われています。

二次障害とはもともとの障害に加えて、環境への不適応状態が長期化することによって生じる症状のことを言います。

そのため、発達障害に携わる支援の重要性として、二次障害の予防という観点があります。

つまり、発達の特性に応じた対応や配慮をしていくことで、二次障害を未然に防ぐといった考え方です。

 

それでは、自閉症の人の二次障害の例として、どのようなものがあると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の二次障害について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、過剰なノルマ化と意欲低下をキーワードに理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参考にする資料は「本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.」を参照していきたいと思います。

 

 

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自閉症の二次障害について:過剰なノルマ化・意欲低下を例に

自閉症の人たちは、社会・コミュニケーションの障害とこだわり行動といった2つの特性があります。

自閉症のこだわり行動とは、手順や物の配置、道順など自分なりのルールがあり、その状態を常に維持しようというものです。ある意味、変化を嫌う行動でもあります。

 

こうした‟こだわり行動”が過剰に働くことで精神的に変調をきたすことがあります(以下、著書引用)。

自閉スペクトラムの人たちはこだわりやすいという特性があります。これは言い方を変えると、自分でノルマを勝手につくって、それを過剰に頑張りやすいということです。これを「過剰なノルマ化」と言うことにします。

 

不適切な環境に長くさらされていると、この「過剰なノルマ化」が増幅します。同時に、つらいことが積さなるとことによって、「意欲低下」が起きます。もともと「過剰なノルマ化」の強い人に「意欲低下」が起こることで、そこに葛藤が生じます。この葛藤がどのような方向に向くかによって、さまざまな精神的な変調が生じます。

 

 

著者の体験談

次に今回取り上げる事例として、自閉症の成人男性Aさんについて「過剰なノルマ化」と「意欲低下」をキーワードとして両者の葛藤が精神疾患に至ったケースについてお伝えしていきます。

Aさんには、こだわりと思われる考えや行動がいくつかありました。

その中には、「とにかく考えずに行動する」、「とにかくやってみる」、「自分の力でやってみる」といった内容のものです。

一見すると、非常に前向きな姿勢に感じられ、これはこだわりなのか?悪いものなのか?と感じた方も少なからずいるのではないかと思います。当時の著者は良い思考だと考えていました。

しかし、こうした思考・行動が、こだわりの一種であり、長期的なスパンでみるとうまくいくことが非常に難しいことが後々わかってきました。

当時のAさんは、とにかく実行主義で新しいアルバイトなど、様々な業務に挑戦していました。

例え、うまくいかなくとも、次の場所を探し新たな挑戦を始めました。

良い側面を見ると、その都度、Aさんにとっては新しい気づきや新しい人たちとの出会いがあったと言えます。

著者は勢いのあるこの姿により良い展望を期待せずにはいられませんでした(かなりあまく見ていた気がします)。

少し気になったこととして、Aさんが何かにつまずき、また新たな環境を求める際に、なぜ前の所がうまくいかなかったのか?といった内容をあまり聞いたことがなく、とにかくバッサリとその環境を捨てて、次に移っていくといった印象でした。

そして、さらに気になったのは「自分の力でやってみる」という背景には、他人に頼ることをしないといったことが多く含まれていました。

そのため、誰かに悩みや相談などをしていた様子はほとんどなく、著者がAさんに語り掛けても(何度もありました)、「とにかくやってみる」で終始することが多くありました。

あまり自分の本心を話そうとしない様子をみると(後にうまく言語化できないことを知った)、一見すると、しっかりした考えがあるようにも思えていました。

このような思考・行動を継続していく中で、Aさん本人の中で、どうしてもうまくいかない状態が続き、「意欲低下」が見られるようになっていきました。

このような状態になるだいぶ前から、Aさんと相談する機会を意識的に作りましたが、「過剰なノルマ化」の影響もあってか、いつもの思考回路(とにかく自分の力でやってみるなど)に基づいて発言と行動をすることがほとんであり、著者の助言は入りにくい状態でした。

その後、Aさんはうつ病と診断されることになります。

当時働いていたアルバイトもすべてがうまくいかなくなり破綻した状態になりました。

ちなみに今のAさんは、うつ症状も改善し、自分がやりたいことも見つかり、日々を前向きに生きています!

こうした精神的不調からの回復を果たせたのも、周囲に理解者が増え、Aさん自身が人に頼ること、相談すること、そして、自分の特性理解と、その中でやれることをしっかりと考えるようになったからだと思います。

 

 


以上、自閉症の二次障害について:過剰なノルマ化と意欲低下から考えるについて見てきました。

「過剰なノルマ化」は油断をすると、環境との不適合で「意欲低下」に繋がり、どんどん悪循環に陥る可能性があります。

著者が自閉症の方にできることは限られていると思いますが、自閉症という発達の特性をしっかりと理解していきながら、その人にあった環境を調整していくことが大切だと思っています。

今後も二次障害への予防という視点を大切に、現場でできることを考え実行していきたいと思います。

 

 


二次障害に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「発達障害の二次障害に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

 

本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.

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