愛着とは、養育者と子どもとの間で交わされる情緒的な絆のことを指します。
安定した愛着を築くためには、乳幼児期からの養育との情緒的交流が非常に大切になります。
その中でも、関わった時間よりも関わりの質が大切になります。
関連記事:「愛着(愛着形成)で大切なこと【関わる時間よりも質が重要】」
それでは、愛着障害などをはじめ、安定した愛着を築くことができないと、その後、安定した愛着関係を築くことはもうできなのでしょうか?
そこで、今回は、愛着形成で大切なこととして、愛着障害の支援に手遅れはないといったことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながらお伝えしていきます。
今回参照する資料は「米澤好史(2015)発達障害・愛着障害:現場で正しくこどもを理解し、こどもに合った支援をする:「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム.福村出版.」です。
愛着形成で大切なこと【愛着障害の支援に手遅れはない】
それでは、以下、著書の内容を引用しながら見ていきます。
愛着は「いつでも誰でも心理的支援で取り戻せる」のである。さらに、付言しておけば、愛着障害の症状である興奮状態を緩和するための医療支援、投薬治療は可能であるが、医療により愛着障害を治療することは不可能である。愛着障害が関係性の障害である以上、心理的支援以外の方法で治療できるはずがないのである。
以上、著書の内容から、愛着関係は「いつでも」取り戻せることは可能だと考えられています。
そして、大切なことは、医療などによる治療ではなく、心理的支援にのみ根本的な改善効果があるということです。
一方で、「いつでも」愛着関係は取り戻せるとはいえ、年齢による改善効果の違いなどはあるのでしょうか?
例えば、子どもの愛着障害と大人の愛着障害では、その人が対人関係で築き上げたてきた量・質ともに内容が異なることが考えられます。
こうした点について、著書の中で以下のように述べています(以下、著書引用)。
むしろ、多くの愛着に問題を抱える事例と支援を体験した実感から言うと、確かに、より早期に支援に入ることができた事例の愛着形成・愛着修復の成功確率は極めて高い。(中略)では、何故、発達段階が後になるほど、愛着形成・修復が困難になるのか(中略)年齢が高いほど、それまでに愛着の問題から不適切なかかわりや対応を経験した数も多くなる。つまり二次障害等の負の経験が多くなる。
以上、著書では、愛着の問題は「いつでも」修復可能であるが、早期に支援・介入を受けた方が、改善効果が期待できるとしています。
その理由として、年齢が高いとこれまで積み上げてきた対人様式の蓄積や二次障害などの影響が強くでるからだとしています。
それでは、次に著者の経験談も交えながら、愛着障害支援について見ていきます。
著者の経験談
著者は長年療育現場に携わってきています。
その中で感じるのは、支援上大変なケースが愛着に問題を抱えている子どもたちという実感です。
年齢が上がると二次障害なども見られるため、そもそも何が要因で今のような乱暴な行動を取るのかといった理解が難しくなります。
一方で、適切な心理的支援を行っていけば、長期の関わりを通して、情緒が安定してくるケースもまた多いと感じています。
著者が見ている子どもの中には、過去の乱暴な言動や行動、いつも情緒が不安定、トラブルメーカーだった子が、大人を信頼することができるようになったことで情緒が安定してきたケースもあります。
こうしたケースを振り返って見て感じることは、愛着に問題を抱える子の支援は非常に関わり手が心理的な負担がかかるということです。
また、年齢が上がると関わりの労力は高まることもまた実感としてあります。
大切なことは、「いつでも」修復可能といった前提に基づき、早期の心理的支援をチームで実施していくことだと思います。
愛着修復には時間がかかりますので、一人の人との絆から始まる重要性を意識しながらも、チームで支えていくといった意識がとても大切だと思います。
関連記事:「愛着障害の克服について:良い安全基地の存在から考える」
以上、愛着形成で大切なこととして、愛着障害の支援に手遅れはないといったことについて、著者の体験談も交えながらお伝えしてきました。
愛着形成は「いつでも」可能です。手遅れとうことはありません。
しかし、できるだけ早い方が良いといったこともまた事実としてあります。
私自身、まだまだ未熟ですが、愛着に問題を抱える子の理解と支援についても、今後もチームでの取り組みを大切にしながら実践していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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米澤好史(2015)発達障害・愛着障害:現場で正しくこどもを理解し、こどもに合った支援をする:「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム.福村出版.