発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

アンビヴァレンス 両義性 療育

子どもの気持ちを理解する視点-アンビヴァレンスと両義性から考える-

投稿日:2022年7月23日 更新日:

療育現場で子どもたちと関わっていると、様々な思いを共有(共感)できたり、逆に共有(共感)が難しいことがあります。

療育現場には発達に躓きのある子どもたちが通所してきているので、障害に関する理解や知識が必要になります。

例えば、発達特性に関する理解や発達的視点の理解などを著者はとても大切にしています。

一方で、現場の中でリアルタイムに生じる子どもの様々な気持ちを理解していくこともとても大切です。

子どもたちの思いはとても複雑に感じることがあります。それは、アンビヴァレンスや両義性など様々な思いが同時に交差しているからだと思います。

 

そこで、今回は、著者の療育経験も交えながら、子どもの気持ちを理解する視点として、アンビヴァレンスと両義性をキーワードに考えていきたいと思います。

 

 

今回、参照する資料は「小林隆児(2015)あまのじゃくと精神療法:「甘え」理論と関係の病理.弘文堂.」です。

 

 

スポンサーリンク

アンビヴァレンス(両価性)とは何か?

以下、著書を引用します。

同一の対象に対して、愛と憎しみ、友好的態度と敵対的態度のような、相反する心理的傾向、感情、態度が同時に存在する精神状態を指し、「両価性」とも訳されている

著者の内容から、アンビヴァレンス(両価性)とは、愛・憎、友好・敵対など相反する態度が同時に存在している心理状態と記載されています。

例えば、ある友人に対して、好意を寄せており仲良くしていきたいという感情を持ちながらも、一方である友人の嫌な面からある種の敵対的な態度も同時にもっている状態が例としてあるかと思います。

著者も、様々な人たちとの関わりの中で、この人の○○の部分は好きだが、○○の部分は苦手といったことから好きと嫌いが一人の人間の中に共存しているという心理状態はよく理解できます。

また、こうしたアンビヴァレンスは、自分の気持ちの状態と相手の気持ちの状態によって変化していくことが考えられます。

 

 

両義性とは何か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

そもそも人間の心身機能自体には正反対の機能が備わり、それが相互に拮抗しながらバランスを取ることによって健全な状態を保っていること

前者のアンビヴァレンス(両価性)が・・・

相反する感情や概念が同居して同時的に機能している状態を指す

のに対して、両義性は、愛憎や善悪、好意と敵対など相反する心理機能がそもそも人間には備わっていると著書では記載されています。

そのため、著書の中では、アンビヴァレンス(両価性)と両義性を・・

両者は一見類似の概念に思われるかもしれないが、厳密にはまったく異なったもの

とされています。

 

 

著者のコメント

それでは、アンビヴァレンス(両価性)と両義性の視点は具体的には療育現場にどのように活かされるのでしょうか?

著者はこれこそタイトルにもある通り、子ども気持ちを理解する視点においてとても大切だと実感しています。

子どもの気持ちは白黒つけることができないような様々な状態や今回お伝えしてきた相反する気持ちをもっています。

両義性とは、そもそも人間には相反する心理機構を持っているものであり、アンビヴァレンス(両価性)とは、こうした相反する気持ちが同時に共存している心理状態のことを言いました。

例えば、保育者に甘えたいといった気持ちがある一方で、うまく甘えることができない(甘えたくない)といったアンビヴァレンスな気持ちを感じる場面が療育現場ではよくあります。

また、自分の気持ちを伝えたい・わかってもらいたいが、その一方で、話したくない・教えたくないなどのアンビヴァレンスな気持ちを感じる場面に出会うこともよくあります。

こうした心理状態は療育者や保育者との関係性によっても変化してきます。

つまり、子どもの気持ちの受け手との関係性や受け手の感性なども大きく影響してきます。

受け手がこうした子どもたちのアンビヴァレンスな心理状態を理解していくことは、子どもたちの気持ちを丁寧に受け止めていくことでもあり、こうした関わりは子どもたちのその後の心の成長においてとても大切なことだと思います。

実際に、著者の経験を振り返って見ても、こうしたアンビヴァレンス(両価性)を理解し(しようとする姿勢を持ちながら)、丁寧に子どもたちの気持ちの寄り添っていくことで、行動や認知面での成長だけではなく、心の成長を感じた経験も多くあったように思います。

 

私自身、まだまだ未熟であり、今回お伝えしてきた、アンビヴァレンス(両価性)や両義性の概念がまだはっきりと理解しているわけではありませんが、今後も現場での実践を中心に多くの学びをしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

小林隆児(2015)あまのじゃくと精神療法:「甘え」理論と関係の病理.弘文堂.

スポンサーリンク

-アンビヴァレンス, 両義性, 療育

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【療育の力を育むために大切な視点について】過去を掘り起こすこと、未来を作ること

著者は発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を行ってきています。 療育を行っていく中で、様々な能力が鍛えられていくという実感があります。 例えば、子どもたちの状態像を理解する力、子 …

療育(発達支援)の専門性で大切な心理学的視点と発達的視点

著者は長年にわたり療育現場で発達に躓きのある子どもたちの支援に携わる仕事をしています。 子どもたちの中には、知的障害、自閉症、ADHDなど様々な特性のある子どもたちがおります。 こうした子どもたちとの …

子どもの思いや気持ちがわかるということ-相互主体性の視点から考える-

著者は長年、療育現場で発達に躓きのあるお子さんたちと多く関わってきています。 その中で、子どもの思いや気持ちを理解することをとても大切にしています。   しかし、思いや気持ちを理解するとは一 …

【発達障害児への療育で大切な療育的視点②】支援仮説を例に考える

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)をしてきています。 療育の中で大切なキーワードとして、〝療育的視点″があります。 〝療育的視点″とは、簡単に言えば、子どもたちそれ …

【発達アセスメントとは何か?】療育経験を通してその重要性について考える

著者は療育現場で発達に躓きのある子どもたちと関わっているため、〝アセスメント″という用語をよく活用しています。 アセスメントは、評価・査定といった意味があります。 アセスメントには、様々な種類のものが …