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【発達障害とは何か?】「発達」の意味を踏まえて「発達障害」について考える

投稿日:2022年7月2日 更新日:

「発達障害」への理解が、ここ近年急速に進んできています。

発達障害と言えば、自閉症スペクトラム障害(ASD)やADHD、学習障害など様々なものがあります。

 

一方で、「発達」が「障害」されるといった本質的な意味は、どのように説明できるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害とは何かについて、「発達」の意味を踏まえて「発達障害」についての理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回、参照する資料は「田中康雄(2011)こころの科学叢書:発達支援のむこうとこちら.日本評論社.」です。

 

 

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「発達」とは何か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

発達という事象を、僕は「人が生きていく過程」であると位置づけた。さらに①生物学的な規則性と準備性に一定程度支持されながら変化し、②社会的・文化的の状況に組み込まれていく過程を、③ある程度のバリエーションを容認したなかで評価される、と発達を定義した。

 

このように、「発達」とは、非常に広義な意味であることがわかります。

著者は、これまで学生時代に大学の講義などから、「発達」とは、〝個人因子と環境因子が時間軸に沿って相互に影響を及ぼしながら成長していく過程”といった理解をしていました。

この理解に、今回の内容を付け加えると、さらにその内容が具体性を帯びてくるかと言えます。

 

まず①生物学的な規則性や準備性があるという内容から、生物として人間の発達にはある程度、規則性があるということです。

それは、歩行や発語までの過程を見ても概ね同じような発達過程を辿ることから説明できます。

また、準備性とは、ある発達を遂げるには、その前段階のレディネス(準備性)が整っている必要があるといった考え方です。

例えば、歩行できるには、座位が取れる、ハイハイをする、つかまり立ちができるなど、ある運動ができるには、その前段階がある、つまり、レディネス(準備性)が整っている必要があるということです。

 

次に、②社会的・文化的の状況に組み込まれていく過程といった内容から、発達とは環境の影響を受け、その人が生きている社会的・文化的な内容を自身の身体に取り入れながら成長していくということです。

簡単な例を挙げれば、言語学習があります。

日本語を習得するのは、その文化圏で日本語を親や周囲の人が話していることが個人内に取り込まれることで、習得可能な状態になってきます。

 

最後の③ある程度のバリエーションを容認したなかで評価されるという内容から、発達の多様性は①の生物学的な規則性と②の社会的・文化的な影響の相互性から、ある程度予測できるバリエーションを持つということです。

つまり、個人因子と環境因子の相互性によって、発達していく中で、ある程度の範囲のバリエーションが生じていくものだと言えます。

 

 


それでは、次に、「発達」の意味を踏まえて「発達障害」とは何かについて見ていきます。

 

「発達障害」とは何か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

発達障害というあり方は、①生物学的な規則性と準備性において、時間的な早さ遅さ、質的な高さ低さといった差違をもち、②社会的・文化的な状況から逸脱し、③その程度が容認されない様相、と表現できる。

 

上記の内容は、前述した「発達」の説明を踏まえて考えると、理解しやすくなります。

 

つまり、①の生物学的な規則性と準備性において、定型発達と比較すると、「速度」と「質」などに違いがあるとうことです。

知的障害を例に考えると、知的障害は、発達の「速度」を問題としています。つまり、全般的な発達がゆっくりということです。

一方で、ASDやADHDなどは「質」の問題です。よく発達の凸凹などとも言われますが、最近急激に社会で認知され始めたASDやADHDなどの発達障害は、発達の「質」を問題としています。

 

次に、②社会的・文化的な状況の逸脱といった内容ですが、「発達障害」とは生活や人生の中で生じる「生きづらさ」でもありますので、自身が置かれた環境に適応が難しい状態ということになります。

その意味で逸脱といった表現をここでは使っているのだと言えます。

 

最後の、③その程度が容認されない様相については、個人因子と環境因子の相互性の結果、その人の状態像に問題が生じている状態だと言えます。

最近では、障害が個人のハンディキャップが社会への不適応を生むといった医学モデルから、社会が障害を生んでいるといった社会モデルへと考え方がシフトしてきています。

そのため、障害とは、社会が作り出しているといった見方もまたとても大切だと言えます。

 

 


以上、【発達障害とは何か?】「発達」の意味を踏まえて「発達障害」について考えるについて見てきました。

「発達障害」を理解するためには、そもそも「発達」と何か?を理解することがとても大切だと言えます。

そして、こうした用語は、個人因子と環境因子それぞれについての深い理解が重要で、それが障害となるのは、それらの相互性から理解していくことが大切です。

「発達」「発達障害」といった概念を深く理解するためには、最終的には、現場での実践を通しての具体性的な実感を多く経験することが重要だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も「発達」ならびに「発達障害」といった概念をしっかりと理解できるように、現場での実践とそこからの学びを大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

田中康雄(2011)こころの科学叢書:発達支援のむこうとこちら.日本評論社.

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