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自閉スペクトラム症(ASD)の支援-情報処理の効率化について-

投稿日:2022年6月12日 更新日:

 

自閉スペクトラム症(ASD)とは、対人・コミュニケーションの困難さと限定的興味と反復的(常同)行動を主な特徴としています。

ASDの人たちは、マルチタスクよりシングルタスクの方が得意な方が多くいます。

マルチタスクとは、一度に複数の情報を処理することで、例えば、複数の仕事を同時に進める、様々な家事を同時進行で進めるなどがあります。

シングルタスクとは、マルチタスクとは逆に一つの作業をすることです。

仕事や家事など慣れている作業は同時進行で行っている人も多いと言えます。

 

それでは、マルチタスクが比較的苦手とされているASDの人に対して、情報処理の効率化の視点からどのような支援が必要なのでしょうか?

 

今回は、著者の経験談も交えて、ASDの支援として情報処理の効率化の視点からお伝えします。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回、参照する資料として「岡田尊司(2020)自閉スペクトラム症:「発達障害」最新の理解と治療革命.幻冬舎新書.」です。

 

 

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ASDの情報処理への効率化について

以下、著書を引用しながら大切なポイント3点をお伝えします。

 

一度に取り込む情報量を減らす

同時に二つのことをするのが特に苦手で、能率が大幅に低下するため、一度に取り組むことはできるだけ一つにし、それに集中するようにします。

著書の内容にもあるように、まずは複数の情報をできるだけ少なくし、その情報に集中できるようにすることが大切です。

著者もASDの人との関わりは多くありますが、例えば仕事など、一度に複数の情報を提示するとどこかの情報が抜けてしまうことが多いため、できるだけ少ない情報を提示するようにしています。

また、複数の作業を行わないようにしていくことも大切なため、ある作業を終えたら、次の作業というように、作業の手順を一緒に考えていくなども行っています。

 

優先順位をつける

優先順位や時間配分をあらかじめ決めてから作業するだけで、時間のロスが減らせます。

著書の内容にもあるように、作業に取り掛かるときなど、その内容が複数ある場合には、優先順位をつけることがとても重要になります。

著者も、ASDの方に複数のことをお願いしたい場合には、優先順を考えるように心がけています。

この順位付けを行わないと、時には、著者からみて非常に優先度の低いものから作業を始めてしまう場合もあります。

悪いわけではありませんが、全体の仕事や作業の効率化からは遠いてしまいますので、順位付けが重要です。

 

課題を細かく分ける

仕事や課題は、小さな単位に分けたほうが、取りかかりやすいですし、集中力も保て、達成感を味わいやすくなります。(略)スモールステップで積み上げていくのがコツです。

著者の内容にもあるように、仕事や課題の多さは負担になるので、スモールステップで課題を細かく分けることで、集中力と達成感を味わいやすくなります。

著者も多くの課題を提示するよりも、課題を細かく区切った方が、作業がはかどるといった印象がありますし、また、人にもよりますが慣れてくると課題を区切る点が少なくなっていきます。

 

 


以上、情報処理の効率化は何もASDだから重要というわけではありません。

多くの方にも当てはまる情報の効率化だと思います。

一方で、ASDの方には特に情報処理(認知処理)の特性を踏まえると、こうした点についてより配慮が必要だということになります。

 

ASDの人は裏を返すと、シングルタスク、つまり、特定の作業を一つ一つ丁寧に実行し続けることを得意としている方が多いとも言えます。

著者の周囲にも、複数の作業は苦手でも、特定の作業を丁寧にこなすことが得意なASDの方は多いといった印象があります。

こうして見てみると、人間の情報処理は得意な点がある一方で、苦手な点もあるといった相互関係があるのだと思います。

今後もASDの支援がより良いものになるよう、情報処理の得意・不得意などを理解していきながら、作業が負担なく効率的にできるような方法を共に考えていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

岡田尊司(2020)自閉スペクトラム症:「発達障害」最新の理解と治療革命.幻冬舎新書.

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