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生活障害への支援-半歩先を想定することの難しさと大切さ-

投稿日:2022年5月19日 更新日:

発達障害を生活障害と捉える考え方が発達支援の現場でよく耳にするようになりました。

生活障害とは、生活上で何らかの困難さがある状態のことです。

 

関連記事:「療育で大切な視点-生活障害という視点を持つことの大切さ-

 

それでは、生活障害への支援を考えた場合にどのような視点が大切になるのでしょうか?

 

今回は、著者の療育経験を交え、生活障害への支援として、半歩先を想定することの難しさと大切さについてお伝えします。

 

 

今回、参照する資料は「下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.」です。

 

 

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生活障害への支援について

以下に著書を引用しながら、生活障害の支援について考えていきたいと思います。

生活障害に対する心理職の役割としては、まず今の状況をアセスメントすることがあげられます。どうして生活がうまくいかないのかについて探り続け、どうしたらよいかの対応策を考えていくことです。そして同時に、これからどうなっていくのかという半歩先を想定する、道標のような役割ももつべきだと思います。そのうえで、具体的な対応を提案していきます。

著書の内容から、生活障害の支援において大切なことは、生活の困り感をアセスメントしていきながら、対応策を練ることで、その際に、半歩先を想定しながら、具体策を考えるということです。

「半歩先」も捉え方によっては、その期間もだいぶ変わるかと思いますが、ここでは、数か月から1年程度という想定で考えていきたいと思います。

著者も療育現場を通して、生活の中の困り感について、様々な情報を収集しながら仮説を立てることを行っています。

仮説を立て、次に具体的な実行策をいくつか考えていく作業になるのですが、ここで、難しくなおかつ大切になるのが、著書の内容にある半歩先を想定するということです。

つまり、支援において、現状のアセスメントをしていきながら、少し先のことも含めて支援内容を検討するということが重要になります。

こうした内容は、個別の支援計画などにもあるため、支援者側はよく目にするものだと思いますが、実際に立てるとなるとこれがなかなか難しいと感じます。

 

 


それでは次に、こうした半歩先を想定することの難しさと大切さを実感した著者の体験談についてお伝えします。

 

著者の体験談

著者は長年療育現場(放課後等デイサービスや障害児保育など)で、発達に躓きのある人たちへの支援を行ってきました。

その中で重要な業務の一つに、個別支援計画があります。

個別支援計画は、現状と現状を踏まえた課題、それに対する具体的な支援内容が必要となります。

さらに、中長期的支援目標も現状の課題と紐づける形で立案します。

この中長期的支援目標が、ある意味で、その人の半歩先を想定することだともいえます。

著者も現場に赴任した当初は、この中長期的な支援目標がなかなかイメージできずにいました。

様々な情報を元に目の前の課題は比較的見えるのに対して(もちろん迷走することもありますが)、現状の課題を踏まえて将来像をイメージすることが難しいといった感じです。

それもそのはずで、半歩先を想定するためには、半歩先を歩いている事例、歩いていく過程を多く経験し学ぶ必要があり、その中で、発達への理解を深めたり、どのような支援が良いのかを学んでいくことが必要になってくるからです。

当時の自分にはその経験と学びがまだまだ不足していました。

そのため、半歩先を想定することができなくて当然だったのです。

その後、ある程度の現場経験と知識が蓄積されてくると、現状と現状の課題を踏まえると、少し先の支援目標として○○なら到達できそうであるとか、支援目標(本人や家族が望む姿など)の○○を到達するためには現状の○○の課題がクリアされている必要があるなど、現在と未来を結びつけるような思考が少しずつできるようになってきました。

これまでは、目の前の課題をとにかく考え抜くといったことを繰り返していたのに対して、少し先の将来像をイメージすることで、現状の見え方や課題意識にも変化が出てきました。

これも、様々な人たちを療育の現場で長年見てきたことによる経験値と、その中で、日々の現場からの問いを、知識も含め考え続けてきたことが大きかったと思います。

 

関連記事:「療育的視点について-現場の「なぜ」に応えるために-

 

様々な事例を長期にわたって見ることで、初めて関わる人に対しても、少し先を予測して関わろうとする意識が働きます。

こうした意識が、半歩先を想定する力に繋がるのだと思います。

繰り返しになりますが、こうした意識や力はある程度の経験とその中で質の高い学びをしていることが前提になると思います。

そして、関わる相手の今後の発達が豊かになるためには、半歩先を想定することがとても大切なのだと思います。

それは、例えば、現時点での生活が困難な状態であっても、半歩先を想定することで、現状の課題点や関わり方、支援内容が変化するからです。

つまり、困難な状態も、未来という時間軸を加えることで見え方が変わるということです。

そこに希望を作り出すことが療育(発達支援)では大切だと実感しています。

私自身、半歩先を想定する力に関しては、昔の自分と比べると成長したと思いますが、それでもまだまだ力不足であるのも事実です。

私自身も、自分の半歩先を想定した目標を持ち、目標に対して多くの体験を重ね、その中で学びの質を高めていきたいと思っています。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.

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